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キャリア開発支援のためのメールマガジン…vol.161(2026年6月号)…

■□■━━【コラム】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

 キャリア・カウンセラー便り"馬籠さゆみさん"です。

  ◆このコーナーは、活躍している「キャリア・カウンセラー」からの

   近況や情報などを発信いたします。◆

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こんにちは。
2017年30期修了生の馬籠さゆみです。

前回4月号では、これまでのキャリアの歩みを「トランジション」の視点から振り返りまし
た。
今回6月号では、その延長線上にある現在の取り組みとして、
「トランジションの延長としての実践」についてお伝えいたします。

現在、専門学校における日本語教育に加え、留学生に対する進学対策・キャリア科目の
授業を担当することになりました。

学校からは「将来の夢」というテーマのみが提示され、具体的な設計は講師に
委ねられるという依頼に当初は戸惑いもありましたが、これまでの学びと経験をもとに、
全5回の授業として構成しました。自己理解や仕事理解、価値観の整理を通して、
「今ここにいる自分」からこれからを考えるプロセスを重視した内容です。

授業を実施する中で、「将来の夢」という言葉の曖昧さと重さを改めて実感しました。

多くの留学生にとってそれは自由に語れるものではなく、現実との距離や責任の中で
慎重に扱うテーマでした。
「夢がありません」と語る学生の背景には、「家族の期待で日本に来た」
「失敗したくないから選べない」「何が好きか分からない」といった葛藤があります。

こうした声に対して、方向づけを急ぐのではなく、その背景にある経験や感情に耳を
傾けることの重要性を再認識しました。これはまさに、これまでのトランジションの過程で
培ってきた姿勢でもあります。「揺らぎ」の中にある声に向き合うことが、次の一歩に
つながると感じています。

そのため授業では、「夢を決めること」ではなく、「今の自分を知ること」に軸を置きまし
た。
好きなこと、得意なこと、大切にしている価値観、小さな成功体験や違和感を言語化し、
「すでに持っているもの」に気づくこと。その積み重ねが、将来の選択肢を広げることにつ
ながると考えたからです。

また、実践を通して見えてきたのは、言語の壁に加えた「自己表現の壁」の存在でした。
日本語能力だけでなく、「自分をどう捉え、どう言葉にするか」という経験そのものが
不足しているケースも少なくありません。そのため、語彙や表現の習得にとどまらず、
「考えを整理するプロセス」を支援する必要性を強く感じました。

この経験は、日本語教師としての役割を超え、キャリア支援者としての視点をより
明確にするものとなりました。言語教育とキャリア支援は分断されたものではなく、
言葉を通して自己理解を深め、自ら選択できる力を育てるという点で本質的に
つながっていると感じています。

一方で、限られた時間の中でどこまで踏み込むべきか、個々の背景に寄り添いながら
授業としての枠組みをどう保つかといった課題にも直面しました。正解のない問いを
扱うからこそ、支援者としての在り方が問われていると感じています。

それでも回を重ねるごとに、確かな変化が見られました。発言の少なかった学生が
自分の経験を語り始めたり、他者の意見に耳を傾けたりする姿、ワークシートの記述が
具体化していく様子は、「考えること」「言葉にすること」への小さな一歩の積み重ねでし
た。

この実践は、私自身の現在のトランジションでもあります。「教えること」から
「引き出すこと」「伴走すること」へと軸足が移りつつあり、これまでの経験が一つ
につながっている実感があります。

「将来の夢」という問いは、答えを出すこと以上に、問い続けるプロセスそのものに
意味がある。そのことを、学生たちとの関わりを通して改めて学んでいます。