キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

基礎編・理論編

目標管理の基本的概念

投稿日:2024年4月24日 更新日:

横山哲夫先生(1926-2019)はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。
以下はキャリアコンサルタントに読んでいただきたい「個立の時代の人材育成」からの引用です。

―目標による管理とは―
目標管理の基本的概念は単純明快である。
① マネジメントは目標を明確に設定することからはじまる、
②リソース (ヒト・モノ・カネ)と時間を配分し、目標達成に向けて遂行する、
③遂行の成果を目標に照らし評価する、
④新たな目標を明確に設定して、同様なサイクルを進行させる。こう述べるかぎりでは、戦後の管理者教育で誰もがロにした、PLAN―DO―SEEとなんら変わることはない。
また、TQCのPLAN―DO―CHECK―ACTIONとも、重点のおき方に相違はあるにせよ、目標か、展開されるサイクル管理のアイデアは変わらない(実務的なレベルでのMBOとTQCの共存、すり合わせは興味ある課題であるが、別の機会に譲る)。
この稿で強調しておきたいMBOのエッセンスは次の通りである。
① MBOはトータルなマネジメント・システムの概念と手法を提供するものであること
② 概念はきわめて単純明快であり、合理性と人間性尊重の、融合システムを提供していること
③ 基本サイクルの①~④の全プロセスに、弾力的に自主性を認めることが、すべて個別の育成、個立の援助に役立つこと
④ 人事考課との結合部分 (第四のプロセス)は日本的目標管理の決定的欠落部分であること
⑤ 目標管理導入上の問題点は、きわめて実務的な手続きや運用の明確化にあること、そしてそのために忍耐強い教育訓練(MBOのための)の継続が不可欠であること
などである。

出典 個立の時代に人材育成 横山哲夫 生産性出版 2003年

目標による管理は、以上のように簡潔な概念であるが、MBOと聞くとその実践面に多くの困難があるようです。自己申告制を導入するときのような安易さで、MBOを管理(人事)制度にとり込むと組織は立ち往生することになります。「目標のたて(させ)方がわからない」、「部下の参画を認める程度がわからない」、「考課のときの基準がわからない」など上司から幾多の質問が寄せられます。「目標設定上の自主性を認めてくれない」「遂行過程での上司のチェックがこまかすぎる(あるいは大ざっぱすぎる)」、「考課(業績評価)が納得できない」など、部下からも不満が出て来ます。苦情や不満の中には単に新しい制度に対する心理的抵抗の域を出ないものもありますが、鋭く、本質的に、推進側の準備や教育の不備、不徹底を衝くものもあります。横山先生は、MBOを導入するならば実務上最低5年間は、集中的な密度の濃い「MBOスキル教育」の実施が必要であると述べていました。集中教育後も、恒常的にあらゆる訓練会議の中に必ず MBOのための一セッションを入れ込むような、継続的な反復教育が必要であると述べていたのです。

教育用の資料の一つとして、比較的新しい解説書である『精解目標管理』(G・S・オディオーン著市川・谷本・津田訳 ダイヤモンド社)を推薦する。すぐれた理論書であるだけでなく、日米企業に共通する豊富な事例やウラ話までをも含む実務・実践の書であるところに特色がある。目標管理についてはその他にも好著がある。前述したE・A・ロックとG・P・ラザムの共著『Goal Setting(目標が人を動かす)』(松井・角山共訳 ダイヤモンド社)、E・C・シュレー著 『Management Tactician管理者の目標達成)』(梅津訳 ダイヤモンド社)など、一読に値する。試行・実験の豊富なMBO原産地米国の資料に依存することが多くなるのはやむを得ない。これらの書物の助けも借りて、実践面での多くの課題をまず広く認識することが必要であろう。その広範な実務的な展望の上に、以下の筆者の体験的提言を重ねていただければ幸いである。

出典 個立の時代に人材育成 横山哲夫 生産性出版 2003年

(つづく) 平林良人

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

キャリア開発ワークショップCDW 横山哲夫 | テクノファ

横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は3回忌になります。テクノファでは2004年に横山哲夫先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に14年もの間横山哲夫先生の思想に基づいた養成講座を開催し続けさせてきました。 横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 以下は横山哲夫先生の提唱されたCDM(キャリア開発ワークショップ)を実践してきた日立製作所の事例です。 当社では、個人のキャリア開発を「個の自立・自律」 …

傾聴とは積極的に聴くことである 

ドラッカーは近代経営学の父と呼ばれた人ですが、彼は経営者が効果的にマネジメントする8つの慣行を提案しました。その中に「最初に聴き、最後に話す」というものがあります。リーダーシップの本質は「信頼を獲得して結果を得ること」ですが、 信頼を得る行動で最大効果を生むものが聴くことであると述べています。驚くべきことに、多くの指導者は聴くことをうまくやれません。多くの調査で「指導者の聴く能力」は、評価項目で最も低いレベルに位置付けられています。最初に聴いて、最後に話しすることは大変重要なことです。 それはとても単純ですが、多くの人々はそれを理解することができません。 聞くと聴くとは違います。積極的に聞く、 …

民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン5

厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。 ●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」 URL:2r985200000277tu.pdf PowerPoint プレゼンテーション サイト内検索結果|厚生労働省 以下、厚 …

民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン2

厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。 ●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」 URL:2r985200000277tu.pdf PowerPoint プレゼンテーション サイト内検索結果|厚生労働省 3.1. …

労働に関係する労働法は大きく3つに分類できる

今回はキャリアコンサルタントが知っているべき労働関係法規、社会保障制度等に関してのお話をします。 労働に関係する労働法は、大きく3つに分類できます。それぞれ関係する分野や領域に合わせて、おもだった法律を解説していきます。 日本の労働法の体系は、大きく3つに分けられます。 (1) 雇用や労働市場に関する法律です。先に取り上げた職業能力開発促進法の他に、雇用対策法、職業安定法、雇用保険法、労働者派遣法などです。ハローワークや職業訓練施設などの職業安定行政と能力開発行政が担当しています。 (2) 労働条件に関する法律です。労働契約、労働条件、採用、退職などの領域に関連する法律で、労働基準法、労働安全 …