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環境の保全と創造についの最終回です。環境保全とは、自然環境や生態系を保護し、持続可能な状態を維持するための取組みのことです。保全の目的は、自然資源の持続可能な利用や再生、生物多様性の保全、大気や水の浄化、エネルギーの効率的な利用などです。これらにより、地球上の生態系のバランスを保ち、将来世代に美しい環境を受け継ぐことができます。
◆大気汚染・騒音の防止等による生活環境の改善
■道路交通環境問題への対応
●自動車単体対策
○排出ガス低減対策
新車の排出ガス対策に関しては、四輪車及び二輪車について国際調和排出ガス試験法を導入しており、世界的にトップレベルの排出ガス規制を適用しています。また、平成27年9月に発覚したフォルクスワーゲン社の排出ガス不正問題を契機としてディーゼル乗用車等の型式指定時に路上走行検査を導入し、令和4年から順次適用開始しています。一方、排気管から排出される有害物質を規制値よりも大きく低減させる自動車については、消費者が排出ガス低減性能に優れた自動車を容易に識別・選択できるよう、その低減レベルに応じ、低排出ガス車として認定する制度を実施しています。
●交通流対策等の推進
○大気汚染対策
自動車からの粒子状物質(PM)や窒素酸化 物(NOx)の排出量は、発進・停止回数の増加や走行速度の低下に伴い増加することから、 沿道環境の改善を図るため、バイパス整備によ る市街地の通過交通の転換等を推進しています。
○騒音対策
交通流対策とともに、低騒音舗装の敷設、遮音壁の設置、環境施設帯の整備等を進めています。また、「幹線道路の沿道の整備に関する法律」 に基づき、道路交通騒音により生ずる障害の防止等に加えて、沿道地区計画の区域内において、緩衝建築物の建築費又は住宅の防音工事費への助成を行っています。
■空港と周辺地域の環境対策
我が国では、これまで低騒音型機の導入等による機材改良、夜間運航規制等による発着規制、騒音軽減運航方式による運航方法の改善や 空港構造の改良、防音工事や移転補償等の周辺環境対策からなる航空機騒音対策を着実に実施してきたところです。近年、低騒音機の普及等により、航空機の発着回数が増加する中でも、空港周辺地域への航空機騒音による影響は軽減されてきています。今後も、航空需要の変動等、状況の変化に応じ、地域住民の理解と協力を引き続き得ながら 総合的な航空機騒音対策を講じることで、空港周辺地域の発展及び環境の保全との調和を図っていく必要があります。
■鉄道騒音対策
新幹線の騒音については、昭和50年環境庁告示「新幹線鉄道騒音に係る環境基準につい て」に基づき、環境基準が達成されるよう、音源対策では防音壁の設置や嵩上げ等を引き続き推進しています。また、在来線の騒音については、平成7年環境庁通達「在来鉄道の新設又は大規模改良に際 しての騒音対策の指針」に基づき、指針を満たすよう、音源対策ではロングレール化等を引き続き推進しています。
■ヒートアイランド対策
ヒートアイランド現象とは、都市の中心部の気温が郊外に比べて島状に高くなる現象である。1927年からの統計において、日本の年平均気温は、都市化の影響の比較的小さい地点で は、主に地球温暖化の影響により100年あた り約1.3度の割合で上昇している。一方、日本 の大都市では、100年当たり約2~3℃の割合で上昇しており、地球温暖化の傾向に都市化の影響が加わり、気温の上昇は顕著に現れている。総合的・効果的なヒートアイランド対策を 推進するため、関係省庁の具体的な対策を体系的に取りまとめた「ヒートアイランド対策 大綱」(平成16年策定、25年改定)に基づき、空調システムや自動車から排出される人工排熱 の低減、公共空間等の緑化や水の活用による地表面被覆の改善、「風の道」に配慮した都市づり、ヒートアイランド現象に関する観測・監視及び調査等の取組みを進めている。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
■シックハウス等への対応
●シックハウス対策
住宅に使用する内装材等から発散する化学物質が居住者等の健康に影響を及ぼすおそれがあるとされるシックハウスについて、「建築基準法」に基づく建築材料及び換気設備に関する規制や、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく性能表示制度等の対策を講じている。また、官庁施設の整備に当たっては、化学物質を含有する建築材料等の使用の制限に加え、施工終了時の室内空気中濃度測定等による対策を講じている。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
●ダイオキシン類問題等への対応
「ダイオキシン類対策特別措置法」で定義さ れているダイオキシン類について、全国一級水 系で水質・底質調査を実施しています。令和4年度は、水質は約98%(202地点/207地点)、 底質はすべての地点で環境基準を満たしています。 なお、河川や港湾では、「河川、湖沼等にお ける底質ダイオキシン類対策マニュアル(案)」 や「港湾における底質ダイオキシン類対策技術指針(改訂版)」に基づき、必要に応じてダイオキシン類対策を実施しています。
●アスベスト問題への対応
アスベストは、人命に係る問題であり、アスベストが大量に輸入された1970年代以降 に造られた建物が今後解体期を迎えることから、被害を未然に防止するための対応が重要です。アスベスト含有建材の使用実態を的確かつ効率的に把握するため、平成25年度に創設した「建築物石綿含有建材調査者講習」制度に基づき、調査者の育成を行ってきており、30年度には、更なる充実を図るため、当該制度を厚生労働省及び環境省との共管制度としました。 令和4年度には新たに『工作物石綿事前調査者』制度を設けました。また、「建築基準法」により、建築物の増改築時における吹付けアスベス ト等の除去等を義務付けており、既存建築物における吹付けアスベスト等の除去等を推進するため、社会資本整備総合交付金等の補助制度を行っているほか、各省各庁の所管の既存施設における吹付けアスベスト等の除去・飛散防止の対策状況についてフォローアップを実施しています。さらに、アスベスト含有建材情報のデータベース化、建築物のアスベスト対策の普及啓発に係るパンフレット等により情報提供を推進しています。
■建設施工における環境
公道を走行しない建設機械等に対し、「特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律」等 により排出ガス(NOx、PM等)対策を実施しています。また、最新の排出ガス規制等に適合 する環境対策型建設機械の購入に対して低利融 資制度等の支援を行っています。
◆地球環境の観測・監視・予測
●地球環境の観測・監視・予測
○気候変動の観測・監視
気象庁では、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの状況を把握するため、大気中のCO2 を国内3地点で、北西太平洋の洋上大気や表面海水中のCO2 を海洋気象観測船で観測しているほか、航空機を利用して北西太平洋上空の CO2 等を観測しています。また、世界気象機関 (WMO)温室効果ガス世界資料センターとして、世界中の温室効果ガス観測データの収集・提供を行っています。
●異常気象の観測・監視
気象庁は、我が国や世界各地で発生する異常気象を監視して、極端な高温・低温や多雨・少 雨等が観測された地域や気象災害について、定期及び臨時の情報を取りまとめて発表している。また、社会的に大きな影響をもたらした異常気象が発生した場合は、特徴と要因、見通しをまとめた情報を随時発表している。さらに、気象庁では、アジア太平洋地域の気候情報提供業務支援のため、世界気象機関(WMO)の地区気候センターとしてアジア各国の気象機関に対し、異常気象の監視・解析等の情報を提供するとともに、研修や専門家派遣を通じて技術支援を行っている。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
●静止気象衛星による観測・監視
気象庁は、静止気象衛星「ひまわり8号・9 号」の運用を継続して実施しています。「ひまわり8号・9号」の2機体制によって長期にわたる安定的な観測体制を確立し、東アジア・西太平洋地域の広い範囲を、24時間常時観測しています。これらの衛星では、台風や集中豪雨等に対する防災機能の向上に加え、地球温暖化をはじめとする地球環境の監視機能を世界に先駆けて強化しています。
●海洋の観測・監視
海洋は、大気と比べて非常に多くの熱を蓄えていることから地球の気候に大きな影響を及ぼ しているとともに、人類の経済活動により排出 されたCO2 を吸収することによって、地球温暖化の進行を緩和している。このことから、地球温暖化をはじめとする地球環境の監視のためには、海洋の状況を的確に把握することが重要である。気象庁では、国際的な協力体制の下、海洋気象観測船により北西太平洋において高精度な海洋観測を行うとともに、人工衛星や海洋の内部を自動的に観測する中層フロート(アル ゴフロート)によるデータを活用して、海洋の状況を監視している。 その結果については、気象庁ウェブサイト 「海洋の健康診断表」により、我が国周辺海域の海水温・海流、海面水位、海氷等に関する情報とともに、現状と今後の見通しを解説している。海上保安庁では、日本周辺海域の海況を自律型海洋観測装置(AOV)、漂流ブイ及び海洋短波レーダーにより常時監視・把握するとともに、観測結果を公表している。また、日本海洋 データセンターにおいて、我が国の海洋調査機関により得られた海洋データを収集・管理し関係機関及び一般国民へ提供している。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
(つづく)Y.H