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前回に続き、環境の保全と創造についてお話しします。環境保全とは、自然環境や生態系を保護し、持続可能な状態を維持するための取組みのことです。保全の目的は、自然資源の持続可能な利用や再生、生物多様性の保全、大気や水の浄化、エネルギーの効率的な利用などです。これらにより、地球上の生態系のバランスを保ち、将来世代に美しい環境を受け継ぐことができます。
■水の恵みを将来にわたって享受できる社会を目指して
水資源政策については、平成27年3月国土審議会答申に基づき、安全で安心できる水を確 保し、安定して利用できる仕組みをつくり、水の恵みを将来にわたって享受することができる社会を目指した取組みが進められている。このような中、気候変動の影響の顕在化、水需要の変化と新たなニーズの顕在化、大規模災害・事故による水供給リスクの更なる顕在化等、近年、水資源を巡る様々な情勢の変化がみられていることから、令和5年10月に国土審議会水資源開発分科会調査企画部会において、気候変動や災害、社会情勢の変化等を踏まえた「リスク管理型の水資源政策の深化・加速化について」提言が取りまとめられた。
また、我が国の産業と人口の約5割が集中する全国7水系6計画の水資源開発基本計画においては、平成29年5月国土審議会答申を受けて、リスク管理型の「水の安定供給」へと抜本的に見直すこととしており、令和6年3月末時点において、4計画(吉野川水系、利根川及び荒川水系、淀川水系、筑後川水系)が閣議決定・ 国土交通大臣決定し、計画の見直しが完了した。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
■水環境改善への取組み
●水質浄化の推進
全国の河川等において、水環境の悪化が著しく地方公共団体、河川管理者、下水道管理者等の関係機関が連携し、河川における水質浄化対策や下水道整備による生活排水対策等、水質改善に取組んでいます。
●水質調査と水質事故対応
水質調査は、良好な水環境を保全・回復する上で重要であり、令和4年は一級河川109水系 の1,085地点を調査しました。また、市民と協働で水質調査マップの作成や水生生物調査等を実施しました。油類や化学物質の流出等による河川の水質事故は、令和3年に一級水系で674件発生しています。水質汚濁防止に関しては、河川管理者と関係機関で構成される水質汚濁防止連絡協議会を109水系のすべてに設立しており、水質事故発生時の速やかな情報連絡や、オイルフェンス設置等の被害拡大防止に努めています。
■水をはぐくむ・水を上手に使う
●水資源の安定供給
水利用の安定性を確保するためには、需要と供給の両面から地域の実情に応じた多様な施策を行う必要がある。具体的に、需要面では水の回収・反復利用の強化、節水意識の向上等があり、供給面ではダム等の水資源開発施設の建設、維持管理、老朽化対策、危機管理対策等がある。また、地下水の適正な保全及び利用、雨水・ 再生水の利用促進のほか、「水源地域対策特別措置法」に基づいて、水源地域の生活環境、産業基盤等を整備し、併せてダム貯水池の水質汚濁の防止等に取り組んでいる。さらに、気候変動の影響により、渇水がより深刻化し、渇水による社会生活や経済への更なる影響が発生することが懸念されている。このため、渇水による被害を防止、軽減する対策を推進するべく、既存施設の水供給の安全度と渇水リスクの評価を行うとともに、渇水被害を軽減するための対策等を定める渇水対応タイムライン(時系列の行動計画)の作成を促進する。渇水による影響が大きい水系から渇水対応タイムラインの作成を進め、令和5年度末に国が管理する30水系32河川で運用を開始している。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
●水資源の有効利用
○下水処理水の再利用拡大に向けた取組み
下水処理水は、都市内において安定した水量が確保できる貴重な水資源です。下水処理水全体のうち、約1.5%が用途ごとに必要な処理が行われ、再生水としてせせらぎ用水、河川維 持用水、水洗トイレ用水等に活用されており、更なる利用拡大に向けた取組みを推進しています。
■下水道整備の推進による快適な生活の実現
●下水道による汚水処理の普及
令和4年度末において、汚水処理施設の普及率は全国で92.9%(下水道の普及率は81.0%) となっている(東日本大震災の影響により、調査対象外とした福島県の一部市町村を除いた集計データ)ものの、地域別には大きな格差があります。特に人口5万人未満の中小市町村における汚水処理施設の普及率は83.4%(下水道の普及率は54.3%)と低い水準にとどまっています。今後の下水道整備においては、人口の集中した地区等において重点的な整備を行うとともに、地域の実情を踏まえた効率的な整備を推進し、普及格差の是正を図ることが重要です。
○汚水処理施設の早期概成に向けた取組み 汚水処理施設の整備を進めるに当たっては、 汚水処理に係る総合的な整備計画である「都道府県構想」において、経済性や水質保全上の重要性等の地域特性を踏まえ、適切な役割分担を定めることとしています。令和8年度末までの汚水処理施設整備の概成を目指して整備を促進しており、人口減少等の社会状況変化を踏まえ、汚水処理手法の徹底的な見直しを推進しています。また、早期かつ安価な整備を可能とするため、地域の実情に応じた新たな整備手法を導入するクイックプロジェクトの導入や、民間活力を活用して整備を推進するための官民連携事業の導入等、整備手法や発注方法の工夫により、未普及地域の解消を推進しています。
●下水道事業の持続性の確保
○ストックマネジメントの推進
下水道は、令和4年度末現在、管渠延長約 49万km、終末処理場約2,200か所に及ぶ膨大 なストックを有している。これらは、高度経済成長期以降に急激に整備されたことから、今後 急速に老朽化施設の増大が見込まれている。小規模なものが主ではあるが、管路施設の老朽化や硫化水素による腐食等に起因する道路陥没が年間に約2,600か所で発生している。下水道は人々の安全・安心な都市生活や社会経済活動を支える重要な社会インフラであり、代替手段の確保が困難なライフラインであることから、効率的な管路点検・調査手法や包括的民間委託の導入検討を行うとともに、予防保全管理を実践 したストックマネジメントの導入に伴う計画的かつ効率的な老朽化対策を実施し、必要な機能を持続させることが求められている。平成27 年5月には「下水道法」が改正され、下水道の維持修繕基準が創設された。これを受け、腐食のおそれが大きい排水施設については、5年に1度以上の適切な頻度で点検を行うこととされ、持続的な下水道機能の確保のための取組みが進められている。また、本改正においては、下水道事業の広域化・共同化に必要な協議を行うための協議会制度が創設されるなど、地方公共団体への支援を強化することにより、下水道事業の持続性の確保を図っている。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
○下水道の広域化の取組み
下水道の持続可能な事業運営に向け、すべての都道府県において令和4年度末までに広域 化・共同化計画が策定された。国土交通省としても、平成30年度に創設した「下水道広域化推進総合事業」やマニュアルの策定、先行して取り組む事例の水平展開等により、引き続き財政面、技術面の双方から支援を行っていきます。 また、国土交通省では、令和3年度より、下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)として、ICTを活用した下水道施設広域管理システムの実証を進めています。
○経営健全化の促進
下水道は、国民生活に不可欠なインフラであるが、その経営は汚水処理費(公費で負担すべ き部分を除く)を使用料収入で賄うことが原則とされています。人口減少等に伴う収入の減少や老朽化施設の増大等、課題を克服し、将来に渡って下水道サービスを維持するため、経営に関する的確な現状把握や中長期収支見通しを含む経営計画の策定、定期検証に基づく収支構造の適正化を促すなど、経営健全化に向けた取組みを推進しています。
●下水道分野における「ウォーターPPP」等、PPP/PFI(官民連携)の推進
水道、下水道及び工業用水道分野において、コンセッション方式と、同方式に準ずる効果が 期待できる管理・更新一体マネジメント方式を総称するものとして、令和5年6月2日に公表 された「PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)」の中で、新たに「ウォーター PPP」が位置付けられた。下水道分野においては、導入を検討する自治体に対する定額補助を 創設するとともに、自治体等向けの説明会において情報提供や意見交換を実施し、自治体に対する支援の充実や枠組みに関する周知に積極的に取り組んでいます。
●下水道分野の広報の推進
下水道の使命を果たし、社会に貢献した好事例を平成20年度より「国土交通大臣賞(循環 のみち下水道賞)」として表彰しその功績を称えるとともに、広く発信することで全国的な普 及を図っています。また、先進的な下水道広報活動の事例を各地方公共団体と共有し全国展開を図るほか、将来の下水道界を担う人材の育成や 下水道の多様な機能の理解促進を目的に、広報素材を提供するなど下水道環境教育を推進しています。
(つづく)Y.H