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前回に続き、環境の保全と創造についてお話しします。環境保全とは、自然環境や生態系を保護し、持続可能な状態を維持するための取組みのことです。保全の目的は、自然資源の持続可能な利用や再生、生物多様性の保全、大気や水の浄化、エネルギーの効率的な利用などです。これらにより、地球上の生態系のバランスを保ち、将来世代に美しい環境を受け継ぐことができます。
●木材利用の推進
木材は、加工に要するエネルギーが他の素材と比較して少なく、多段階における長期的利用 が地球温暖化防止、循環型社会の形成に資するなど環境にやさしい素材であることから、公共工事等において木材利用推進を図っている。令和3年10月1日に施行された「脱炭素社 会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(通称:都市 (まち)の木造化推進法)により、法律の対象が公共建築物から建築物一般に拡大された。また、同法等に基づき、自ら整備する公共建築物において木造化、内装等の木質化、CLTの活用等に取り組むとともに、木材利用に関する技術基準、手引き等の作成及び関係省庁や地方公共団体等への普及に努めている。 また、温室効果ガスの吸収源対策の強化を図る上でも、我が国の木材需要の約4割を占める建築物分野における取組みが求められている。 このような中、建築物分野における木材利用更なる促進に資する規制の合理化等も盛り込んだ「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」を令和4年6月17日に交付し、防火規制の合理化については、令和6年4月1日に施行したところであり、引き続き7年4月に予定する全面施行に向け準備を行っている。さらに、木造建築物の整備推進に向け、先導的な技術を導入する建築物や木造化の普及に資する建築物の整備に対する支援等に取り組んでいる。また、国産木材を多く活用する住宅で使用量を表示する仕組み(国産木材活用住宅ラベル)の運用を開始した。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
◆豊かで美しい自然環境を保全・再生する国土づくり
■生物多様性の保全のための取組み
令和4年12月にカナダ・モントリオールで 開催されたCOP15において、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、さらに令和5年3月に「生物多様性国家戦略2023 2030」が策定されたことを受け、グリーンインフラを含め、河川、都市の緑地、海岸、港湾等において生物の生息・生育地の保全・再生・創出等の取組みを引き続き推進することとしました。 特に、都市の緑地については、量・質両面での都市の緑地の確保等を進めるまちづくりGXを通じて、生息・生育空間の保全・再生・創出による生物多様性の確保を進めます。
■豊かで美しい河川環境の形成
●良好な河川環境の保全・再生・創出
○多自然川づくり、生態系ネットワークの形成
河川整備に当たっては、「多自然川づくり基本指針(平成18年10月策定)」に基づき、河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮ら しや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本 来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全・創出する「多自然川づくり」をすべての川づくりにおいて推進している。 また、自然再生事業による湿地再生、魚道整備による魚類の遡上・降下環境の改善等を図るとともに、多様な主体と連携した生態系ネット ワークの形成による流域の生態系の保全・創出を推進している。
●河川水量の回復のための取組み
良好な河川環境を保全するには、豊かな河川水量の確保が必要である。このため、河川整備基本方針等において動植物の生息・生育環境、景観、水質等を踏まえた必要流量を定め、この確保に努めているほか、水力発電所のダム等の下流の減水区間における清流回復の取組みを進めている。また、ダム下流の河川環境を保全するため、洪水調節に支障を及ぼさない範囲で洪水調節容量の一部に流水を貯留し、活用放流するダムの弾力的管理及び弾力的管理試験を行っているほか、河川の形状等に変化を生中規模フラッシュ放流の取組みを進めている。さらに、平常時の自然流量が減少した都市内河川では、下水処理場の処理水の送水等により、河川流量の回復に取り組んでいる。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
●流域の源頭部から海岸までの総合的な土砂管理の取組みの推進
土砂の流れの変化による河川環境の変化や海域への土砂供給の減少、沿岸漂砂の流れの変化等による海岸侵食等が進行している流砂系について、流域の源頭部から海岸まで一貫した総合的な土砂管理の取組みを関係機関が連携して推進しています。具体的には、砂防、ダム、河川、海岸等における土砂の流れに関する問題に対応するため、適正な土砂管理に向けた総合土砂管理計画の策定や、土砂を適切に下流へ流すことのできる透過型砂防堰堤の設置並びに既設砂防堰堤の改良、ダムにおける土砂バイパス等による土砂の適切な流下、河川の砂利採取の適正化、サンドバイパス、養浜等による砂浜の回復等の取組みを行っています。
●河川における環境教育
川は身近に存在する自然空間であり、環境学習や自然体験活動等の様々な活動が行われています。安全に川で学び、遊ぶためには、河川への理解を深めるとともに、正しい知識が不可欠であることから、教育関係者や一般利用者向けの学習支援素材の作成や、市民団体が中心となって設立された特定非営利活動法人「川に学ぶ体験活動協議会(RAC)」等と連携した川の指導者の育成等を推進しています。
■海岸・沿岸域の環境の整備と保全
津波、高潮、高波等から海岸を防護しつつ、生物の生息・生育地の確保、景観への配慮や海 岸の適正な利用の確保等が必要であり、「防護」 「環境」「利用」の調和のとれた海岸の整備と保全を推進している。また、「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境並びに海洋環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(海岸漂着物処理 推進法)」に基づき、関係機関と緊密な連携を図り、海岸漂着物等に対する実効的な対策を推進している。また、海岸に漂着した流木等が異常に堆積し、これを放置することにより海岸保全施設の機能を阻害する場合は、海岸管理者に対して 「災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業」により支援している。なお、海岸保全施設の機能の確保や海岸環境の保全と公衆の海岸の適正な利用を図ることを目的に、放置座礁船の処理や海域において異常に堆積しているヘドロ等の除去についても支援している。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
■港湾行政のグリーン化
●今後の港湾環境政策の基本的な方向
我が国の港湾が今後とも物流・産業・生活の場としての役割を担い、持続可能な発展を遂げていくためには、過去に劣化・喪失した自然環境を少しでも取り戻し、港湾のあらゆる機能に ついて環境配慮に取り込むことが重要です。そのため、港湾の開発・利用と環境の保全・再生・創出を車の両輪としてとらえた「港湾行政のグリーン化」を図ります。
●良好な海域環境の積極的な保全・再生・創出
港湾整備で発生する浚渫土砂等を有効に活用 した干潟造成、覆砂、深掘跡の埋め戻し、生物共生型港湾構造物の普及方策の検討を実施するとともに、行政機関、研究所等の多様な主体が環境データを登録・共有することができる環境 情報データベースを構築し、環境データの収集・蓄積・解析・公表を図りつつ、沿岸域の良好な自然環境の保全・再生・創出に積極的に取り組みます。また、自然環境の大切さを学ぶ機会の充実を図るため、保全・再生・創出した場を活用した 「海辺の自然学校」を全国各地で実施します。
■道路の緑化・自然環境対策等の推進
道路利用者への快適な空間の提供、周辺と一体となった良好な景観の形成、地球温暖化や ヒートアイランドへの対応、良好な都市環境の整備等の観点から、道路の緑化は重要です。 このため、道路緑化に係る技術基準に基づき、良好な道路緑化の推進及びその適切な管理を図っています。
◆健全な水循環の維持又は回復健全な水循環の維持又は回復
■水循環政策の推進
●水循環基本法に基づく政策展開
令和5年6月、水循環基本法に基づきき、「水循環白書」を閣議決定、国会報告した。「水循 環白書」は、政府が水循環に関して講じた施策 について、毎年、国会に報告するものであり、 今回は、「水循環の取組みの新たなフェーズ~ 流域マネジメントを中心に~」と題した特集を 組み、地方公共団体の水循環に係る先行事例を紹介するとともに、4年度に政府が講じた施策を報告した。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
●流域マネジメントの推進
流域の森林、河川、農地、都市、湖沼、沿岸域等において、人の営みと水量、水質、水と関 わる自然環境を適正で良好な状態に保つ、又は改善するため、流域において関係する行政等の公的機関、事業者、団体、住民等の様々な主体が連携して活動することを「流域マネジメント」とし、更なる展開と質の向上を図っています。令和5年度は、各地域の水循環に係る計画のうち9月に1計画、3月に8計画を「流域水循環計画」として公表しました(6年3月時点で合計 78計画)。流域水循環協議会の設置、流域水循環計画の策定、資金確保等に関する実務的な手順等を体系的に取りまとめた「流域マネジメントの手引き」の見直しを行い令和6年1月に公表しました。また、流域マネジメントに関する知識や経験を有するアドバイザーから、流域水循環計画の策定・実施に必要となる技術的な助言・提案等を行うことを目的とした「水循環アドバイザー制度」により、6つの地方公共団体への支援を実施しました。
(つづく)Y.H