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実践編・応用編

日本の環境の保全と創造 3

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キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

前回に続き、環境の保全と創造についてお話しします。環境保全とは、自然環境や生態系を保護し、持続可能な状態を維持するための取組みのことです。保全の目的は、自然資源の持続可能な利用や再生、生物多様性の保全、大気や水の浄化、エネルギーの効率的な利用などです・これらにより、地球上の生態系のバランスを保ち、将来世代に美しい環境を受け継ぐことができます。

●未利用水力エネルギーの活用
気候変動への適応・カーボンニュートラルへの対応のため、ダムによる治水機能の強化と水 力発電の促進を両立する「ハイブリッドダム」 の取組みを推進しています。この取組みの一環と して、国が管理する治水等多目的ダム等において最新の気象予測技術を活用した洪水後期放流の活用、非出水期水位の弾力的運用等のダム運用の高度化を72ダムで試行的に行うとともにダム管理用水力発電設備の積極的な導入等による未利用エネルギーの徹底的な活用を図ることとしています。また、河川等における取組みとして、登録制による従属発電の導入、現場窓口によるプロジェクト形成支援、砂防堰堤における小水力発 電の導入事例の共有、技術的支援及び発電設備の導入支援等を実施し、小水力発電の導入促進を図っています。

●下水道バイオマス等の利用の推進
国土交通省では、下水汚泥のエネルギー利用、下水熱の利用等を推進している。平成27年5月には、「下水道法」が改正され、民間事業者による下水道暗渠への熱交換器設置が可能 になったほか、下水道管理者が下水汚泥をエネルギー又は肥料として再生利用することが努力義務化された。バイオガス利用等による下水汚泥のエネルギー利用、再生可能エネルギー熱である下水熱の利用について、PPP/PFI等により推進している。
(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書

●太陽光発電等の導入推進
公的賃貸住宅、官庁施設や、道路、空港、港 湾、鉄道・軌道施設、公園、ダム、下水道等の インフラ空間等を活用した太陽光発電等について、施設等の本来の機能を損なわないよう、また、周辺環境への負荷軽減にも配慮しつつ、可能な限りの導入拡大を推進しています。

●水素社会実現に向けた国土交通省における水素政策

○燃料電池自動車の普及促進
燃料電池自動車の世界最速普及を達成すべく、また、比較的安定した水素需要が見込まれ る燃料電池バスやトラック等を普及させることが水素供給インフラの整備においても特に重要 であるとの認識の下、民間事業者等による燃料電池自動車の導入事業について支援している。
(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書

○水素燃料電池船の実用化に向けた取組み
「水素燃料電池船の安全ガイドライン」につ いて、最新の知見や動向を踏まえて、水素燃料 電池船の安全性を確保しつつ、開発・実用化をより推進する観点から令和3年8月に改訂版を公表しました。

○水素燃料船の開発
令和3年より、グリーンイノベーション基金 を活用した「次世代船舶の開発」プロジェクトにおいて、水素燃料エンジン、燃料タンク・燃料供給システムの開発を支援しており、9年までの実証運航開始を目指しています。このような 船舶のゼロエミッション化に向けた取組みを通して、我が国の海事産業の競争力を高めていきます。

○液化水素の海上輸送システムの確立
液化水素運搬船の大型化等に向け、令和56月に日豪海事当局間で協議を行い、新たな貨 物タンク断熱システムを含む液化水素の運送要件について合意しました。 さらに、合意した運送要件を国際基準に反映 するようIMOにおいて我が国主導で基準の策 定作業を進めています。

○水素燃料電池鉄道車両の開発
水素燃料電池鉄道車両等の水素を活用した鉄道車両の実用化に当たっては、技術課題の解決及び社会実装に向けた量産化・コスト低減が必要不可欠であり、今後の水素の供給量や更なる技術開発の動向、水素供給拠点等のインフラの整備状況を見極めつつ、制度面での措置を含めた官民一体の取組みを進めることが重要です。 このため、国と鉄道事業者等から構成される 「水素燃料電池鉄道車両等の導入・普及に関する連絡会」を設置し、水素の利活用に関する検討状況等を共有するなど、必要な情報を収集・ 整理し、我が国の鉄道における水素燃料電池鉄道車両等の導入・普及の推進を図りました。

■地球温暖化対策(適応策)の推進
気候変動による様々な影響に備えるための 取組みは、「気候変動適応法」(平成30年法律 第50号)に基づき策定された、政府の「気候変動適応計画」(令和3年10月22日閣議決定) に基づいて、総合的かつ計画的に推進してい る。

◆循環型社会の形成促進
■建設リサイクル等の推進

●建設リサイクルの推進
「建設工事に係る資材の再資源化等に関する 法律(建設リサイクル法)」に基づき、全国一 斉パトロール等による法の適正な実施の確保に努めている。 また、国土交通省における建設リサイクルの推進に向けた基本的考え方、目標、具体的施策を示した「建設リサイクル推進計画2020~ 「質」を重視するリサイクルへ~」(計画期間: 最大10年間、必要に応じて見直し)を令和2 年9月に策定し、各種施策に取り組んでいる。 具体的には、今後は、リサイクルの「質」の向上が重要な視点と考え、①建設副産物の高い再資源化率の維持等、循環型社会形成へのさらなる貢献、②社会資本の維持管理・更新時代到来への配慮、③建設リサイクル分野における生産性向上に資する対応等を主要課題とした取り組むべき施策を実施するとともに、建設発生土の更なる有効利用を促進している。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書

■循環資源物流システムの構築
●海上輸送を活用した循環資源物流ネットワークの形成
循環型社会の構築に向けて循環資源の「環」 を形成するため、循環資源の広域流動の拠点と なる港湾をリサイクルポート(総合静脈物流拠 点港)として全国で22港指定している。リサ イクルポートでは、岸壁等の港湾施設の確保、 循環資源取扱支援施設の整備への助成、官民連 携の促進、循環資源の取扱いに関する運用等の 改善を行っています。 また、大規模災害時に発生する災害廃棄物の迅速かつ円滑な処理を進めるため、災害廃棄物の仮置き場や処分場等としての港湾の活用可能性について関係機関等と連携して検討しています。

●廃棄物海面処分場の計画的な確保
港湾整備により発生する浚渫土砂や内陸部での最終処分場の確保が困難な廃棄物等を受け入れるため、海面処分場の計画的な整備を進めています。特に大阪湾では、大阪湾フェニックス計画に基づいて広域処理場を整備し、大阪湾圏域から発生する廃棄物等を受け入れています。また、首都圏で発生する建設発生土をスーパーフェニックス計画に基づき海上輸送し、全国の港湾等の埋立用材として広域利用を行っています。

■自動車・船舶のリサイクル

●自動車のリサイクル
「使用済自動車の再資源化等に関する法律 (自動車リサイクル法)」に基づき、使用済自動 車が適切にリサイクルされたことを確認する制度を導入している。また、「道路運送車両法」 の抹消登録を行う際、自動車重量税還付制度も併せて実施し、使用済自動車の適正処理の促進及び不法投棄の防止を図っている。なお、令和 4年度において、自動車リサイクル法に基づき解体が確認され、永久抹消登録及び解体届出がなされた自動車は1,049,773台である。
(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書

●船舶のリサイクル
船舶の再資源化解体(シップ・リサイクル)は、インド、バングラデシュ等の開発途上国を 中心に実施されており、労働災害と環境汚染等が問題視されてきました。この問題を国際的に解決するため、我が国は世界有数の海運・造船国として国際海事機関(IMO)における議論及び条約起草作業を主導し、「2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約」(シップ・リサイクル条約)が採択されました。 我が国は、平成31年3月に同条約を締結するとともに、同条約の早期発効に向けて各国に対して締結を働きかけてきました。令和5年4月には、最大の船舶解撤国であるバングラデシュと の首脳会談において同国の早期条約締結の必要性を確認し、国土交通省と同国工業省の間で協力覚書を締結しました。その後、令和5年6月に同国及びリベリアが同条約を締結したことにより、条約の発効要件が充足され、7年6月に同条約が発効することとなりました。これを受け、円滑な条約の発効に向けた国際協力を推進するとともに、日本国内においては、同条約の国内法である「船舶の再資源化解体の適正な実施に関 する法律」(シップ・リサイクル法)の円滑な施行に向けて、執行準備を進めています。

■グリーン調達に基づく取組み
「国等による環境物品等の調達の推進等に関 する法律(グリーン購入法)」に基づく政府の 基本方針の一部変更を受け、「環境物品等の調 達の推進を図るための方針(調達方針)」を令 和6年3月4日に策定ましした。これに基づき、公共工事における資材、建設機械、工法、目的物等のグリーン調達を積極的に推進しています。
(つづく)Y.H

-実践編・応用編

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