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実践編・応用編

今後の日本の経済社会の構築6

投稿日:2025年3月27日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
経済社会の構築についての最終回です。今後の日本経済は、より高い製品開発能力を獲得し、製品の付加価値を高めながらアジアを中心とする諸外国との経済分業の下で、互恵的な経済社会の発展を追及していくことが基本的な方向です。

■公共工事の品質確保
国土交通省では、「公共工事の品質確保の促 進に関する法律(公共工事品確法)」、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律 (入札契約適正化法)」、「建設業法」を改正する 「新・担い手3法」が令和元年6月に成立したことを踏まえて、市町村をはじめとするすべて の公共工事の発注者が具体的な取組みを進めるよう求めています。

●発注者責務を果たすための取組み
国土交通省では、「公共工事の入札及び契約 の適正化を図るための措置に関する指針」(適正化指針)や「発注関係事務の運用に関する指針」(運用指針)を踏まえた発注関係事務の適切な運用に向けて様々な取組みを行っています。 また、各発注者においてこれらの指針を踏まえた発注関係事務が適切に実施されているかにつ いて、毎年、「入札契約適正化法等に基づく実態調査」等を行うとともに、その結果を取りまとめ、公表するとともに、これらの結果を「見える化」した「適正化マップ」を公表しています。

○適正な予定価格の設定
公共工事の品質確保と担い手の育成・確保に必要な適正な利潤の確保のため、国土交通省直轄工事では、予定価格の設定に当たっては、適切に作成された仕様書及び設計図書に基づき、賃金の上昇や資機材価格の高騰などを含む市における労務・資材等の最新の実勢価格を適切に反映しており、地方公共団体に対しても適正な予定価格の設定について様々な機会を通じて働 きかけを行っている。また、公共建築工事積算基準とその運用に係る各種取組みを取りまとめ た「営繕積算方式活用マニュアル」を令和6年 3月に改訂するなど、積算に係る最新の各種基準・マニュアル類の整備・周知にも努めている。
(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書

○ダンピング対策
ダンピング受注は建設業の健全な発達を阻害することから、地方公共団体に対して低入札価格調査制度及び最低制限価格制度の適切な活用を徹底することによりダンピング受注を排除するよう、あらゆる機会を通じて求めてきました。こ の結果、令和元年11月時点で95団体あった未導入団体は、5年7月時点で72団体まで減じました。また、地方公共団体に対して調査基準価格及び最低制限価格の見直しなどダンピング対策の実効性の確保を要請するとともに各市区町村における工事・業務に関するダンピング対策の取組状況を把握・公表する「見える化」等により、取組みの適切な見直しを求めている。

○適切な設計変更
国土交通省直轄工事では、設計図書に施工条件を適切に明示するとともに、必要があると認 められたときは、適切に設計図書を変更している。また、令和4年5月に閣議決定にて一部変 更した「適正化指針」において、「設計変更ガイドライン」の策定・公表及びこれに基づいた 適正な手続の実施に努めることを明記するとともに、地方公共団体に対して適切な設計変更が 実施されるよう、様々な機会を通じて働きかけを行っている。
(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書

○施工時期の平準化
繰越明許費や国庫債務負担行為の適切な活用により、翌年度にわたる工期設定等の取組みについて国土交通省の事業において実施するとと もに、地方公共団体における平準化の進捗・取 組状況を把握・公表する「見える化」を実施するなどして、平準化の促進を図っています。

○適正な工期設定
新・担い手3法では、適正な工期設定が発注者の責務とされるとともに、著しく短い工期での契約締結の禁止が規定されています。国土交通省では、直轄工事において適正な工期を設定するための具体的かつ定量的な工期設定指針を策定している。また、令和2年7月に中央建設業審議会が作成・勧告した「工期に関する基準」 においては、週休2日の確保等、適正な工期設定にあたって考慮すべき事項が記載されている。令和6年度からの時間外労働規制適用も踏まえ、「工期に関する基準」の周知徹底等、工期の適正化に向けて発注者等に働きかけを行っています。

■持続可能な建設産業の構築

●持続可能な建設産業の構築
建設産業は、社会資本の整備を支える不可欠の存在であり、都市再生や地方創生など、我が国の活力ある未来を築く上で大きな役割を果たすとともに、震災復興、防災・減災、老朽化対策など「地域の守り手」としても極めて重要な役割を担っている。一方、建設業の現場では担 い手の高齢化が進んでおり、将来的な担い手の 確保が課題となっており、処遇改善、働き方改革の推進、生産性向上等を推進するための取組みを進めていく必要がある。また、平成28年 12月に成立した「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」及び同法に基づく基本計画に基づき、安全衛生経費が下請ま で適切に支払われるような施策の検討を進めて きた検討会の提言を踏まえ、安全衛生対策項目の確認表及び安全衛生経費を内訳として明 示するための標準見積書の作成・普及等の取組みを進める。
(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書

●建設産業の担い手確保・育成
建設産業は、多くの「人」で成り立つ産業である。建設業就業者数は近年、横ばいで推移しているが、今後、高齢者の大量離職が見込まれており、建設産業が地域の守り手として持続的 に役割を果たしていくためには、令和6年度からの時間外労働規制の適用も踏まえた働き方改革を含め、引き続き、将来の担い手の確保・育 成に取り組んでいくことが重要です。 このため、長時間労働の是正を図るととも に、賃金引き上げに向けた取組みや社会保険への加入徹底、建設キャリアアップシステムの活用等による処遇改善に加え、教育訓練の着実な実施による円滑な技能承継に取り組んでいます。また、来の労働力人口の減少を踏まえ、建設プロセ ス全体におけるICT活用、インフラ分野全体のDX、技術者制度の合理化、重層下請構造の改善、書類作成等の現場管理の効率化等による生産性の向上も図っていく。 また現下の建設資材の高騰等を反映した請負代金や工期の設定が図られるよう、取組みを進めていきます。

●公正な競争基盤の確立
技術力・施工力・経営力に優れた建設業者が成長していく環境を整備する上で、建設業者の法令遵守の徹底をはじめとする公正な競争基盤 の確立が重要です。 そのため、従前より下請取引等実態調査や立入検査等の実施、建設工事の請負契約を巡るトラブル等の相談窓口である「建設業取引適正化センター」の設置、「建設業取引適正化推進期 間」の取組み、また請負代金や工期などの契約 内容に関する実地調査の実施等により、発注者・元請・下請間の取引の適正化に取り組んでいます。

●建設企業の支援施策
○地域建設業経営強化融資制度
地域建設業経営強化融資制度は、元請建設企業が工事請負代金債権を担保に融資事業者(事業協同組合等)から工事の出来高に応じて融資 を受けることを可能とするものであり、これにより元請建設企業の資金繰りの円滑化を推進しています。本制度では、融資事業者が融資を行う にあたって金融機関から借り入れる転貸融資資金に対して債務保証を付すことにより、融資資金の確保と調達金利等の軽減を図っています。

○建設産業の担い手確保に向けた女性・若者の入職・定着の促進事業
他産業を上回る高齢化が進行する建設業にとって将来の担い手確保が喫緊の課題であり、 多様な人材が入職し、かつ、働き続けられる業界とする取組みが必要です。官民で策定した令和6年度までの5か年計画である「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」の最終年を迎えるに当たり、計画を総括するとともに、次期5か年に向けて新たな行動計画策定に向けた検討を実施します。

○建設関連業の振興
社会資本整備・管理を行う上で、工事の上流 に当たる測量や調査設計の品質確保が重要であることから、令和元年6月の改正で新たに、広 く公共工事品確法の対象として位置付けられ ところであり、建設業だけでなく、建設関連業 (測量業、建設コンサルタント、地質調査業) も重要な役割が求められている。 国土交通省では、建設関連業全体の登録業者 情報を毎月、その情報を基にした業種ごとの経 営状況の分析を翌年度末に公表しており、また 関連団体と協力し就職前の学生を対象に建設関 連業の説明会を開催するなど、建設関連業の健 全な発展と登録制度の有効な活用に努めている。
(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書

○建設機械の現状と建設生産技術の発展
我が国における主要建設機械の保有台数は、 令和元年度で約103万台であり、建設機械の 購入台数における業種別シェアは、建設機械器 具賃貸業が約49%、建設業が約27%となって おり、建設業とともに、建設機械器具賃貸業が 欠かせないものとなっている。i-Construction の取組みの一環として、ICT施工の普及促進 を推進しており、3次元データを活用した建設 機械の自動制御等により高精度かつ効率的な 施工を実現するマシンコントロール/マシンガ イダンス技術等の積極的な活用を図っている。ICT施工の普及促進のためには、ICT建設機 械等の普及が必要である。

○建設工事における紛争処理
建設工事の請負契約に関する紛争を迅速に処 理するため、建設工事紛争審査会において紛争 処理手続を行っている。令和4年度の申請実績 は、中央建設工事紛争審査会では30件(仲裁 5件、調停22件、あっせん3件)、都道府県建 設工事紛争審査会では71件(仲裁19件、調停 41件、あっせん11件)である。
(つづく)Y.H

-実践編・応用編

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