キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
前回に続き、国土交通行政の展開についてお話しします。国土交通省は、陸海空にわたる諸活動の基盤に関して、国土の総合的な利用と保全、社会資本の整合整備、交通政策の推進、観光立国の推進,、海上の安全の確保などを任務としています。これらの多岐にわたる取組みの目指すところは、安心・安全で豊かな自立し活力ある暮らしを可能にすることにより私達の暮らしを支えることといえます。
◆交通政策の推進
■交通政策基本法に基づく政策課題
「交通政策基本法」に基づき、令和3年5月に閣議決定された「第2次交通政策基本計画」 は、3年度から7年度までを計画期間としており、「交通政策基本法」の規定に則り、基本的 な方針、施策の目標、施策等について定めています。具体的には、基本的方針として、①「誰もが、より快適で容易に移動できる、生活に必要不可欠な交通の維持・確保」、②「我が国の 経済成長を支える、高機能で生産性の高い交通ネットワーク・システムへの強化」、③「災害 や疫病、事故など異常時にこそ、安全・安心が徹底的に確保された、持続可能でグリーンな交通の実現」の3つの柱を掲げています。
■持続可能な地域旅客運送サービスの提供の確保に資する取組みの推進
人口減少等による長期的な需要の減少に加え、運転手等の人手不足による供給の減少によ り、地域公共交通を取り巻く状況は厳しいものとなっている。他方、高齢者の運転免許の返納 件数は依然高い水準にあり、受け皿としての移動手段を確保することは重要性を増している。 これまで、地方公共団体が中心となって、地域交通法に基づき、令和5年度末までに1,021件の地域公共交通計画が作成されるなど、持続可能な地域旅客運送サービス提供の確保に資する取組みが進められている。また、依然として厳しい状況を踏まえ、地域の関係者の連携と協働の促進を国の努力義務と して位置付けるとともに、ローカル鉄道の再構に関する仕組みの創設・拡充、エリア一括協 定運行事業の創設、道路運送高度化事業の拡充等を盛り込んだ改正地域交通法が施行されたほか、地域の関係者の連携・協働(共創)の取組みの支援やDX・GXによる経営改善支援、社会資本整備総合交付金等、地域公共交通の再構築を図るための所要の予算が措置された。このうちローカル鉄道の再構築については、JR芸備線について、JR西日本からの要請に基づき、 国が主催する再構築協議会の設置を決定、開催したほか、鉄道の維持・高度化により利便性・ 持続可能性の向上を図る鉄道事業再構築事業について、JR城端線・氷見線等7件の実施計画の認定を行った。
引き続き、あらゆる政策ツールを最大限活用しつつ、デジタル田園都市国家構想実現会議の下に設置された地域の公共交通リ・デザイン実現会議における議論も踏まえ、関係府省庁とも 連携して利便性・生産性・持続可能性の高い地域交通へのリ・デザインを加速化させる。
(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
◆海洋立国お推進
■海洋基本計画のj着実な推進
四方を海に囲まれている我が国では、海洋の平和的かつ積極的な開発及び利用と海洋環境保全と調和を図る新たな海洋立国の実現を目指 して制定された「海洋基本法」に基づき、令和 5年4月に閣議決定された「第4期海洋基本計画」の下、関係機関が連携し、海洋政策を推進 しているところです。 国土交通省においても、「第4期海洋基本計画」に基づき、総合的な海洋の安全保障の観点から、海上保安能力の強化、旅客船の安全・安心な運航の確保等の各種施策、また持続可能な海洋の構築の観点から、洋上風力発電の導入促進、ゼロエミッション船の開発等の各種施策に取り組んでいます。そのほか、ASV(小型無人ボート) やいわゆる海のドローンとして活用が期待されるAUV(自律型無人潜水機)、ROV(遠隔操作型無人潜水機)等の「海の次世代モビリティ」 の活用促進、昨今の情勢を踏まえた北極海航路の利活用に向けての調査等、各般の施策を推進しています。
■我が国の海洋権益の保全
●領海及び排他的経済水域における海洋調査の推進及び海洋情報の一元化
我が国の領海及び排他的経済水域には、調査データの不足している海域が存在しており、海上保安庁では、この海域において、海底地形、地殻構造、底質及び低潮線等の海洋調査を重点的に実施し、船舶交通の安全や我が国の海洋権益の確保、海洋開発等に資する基礎情報の整備 戦略的かつ継続的に実施しています。 また、海洋情報の所在を一元的に収集・管理・提供する「海洋情報クリアリングハウス」 を運用しています。さらに、政府関係機関等が保有する様々な海洋情報を地図上に重ね合わせて表示できるウェブサービス「海洋状況表示システム」を構築し、平成31年4月から運用を開始しました。
●大陸棚の限界確定に向けた取組み
国連海洋法条約に基づき我が国が平成20年11月に「大陸棚限界委員会」へ提出された200 海里を超える大陸棚に関する情報について、24年4月、同委員会から我が国の国土面積の約8割に相当する大陸棚の延長を認める勧告を受領し、26年10月、四国海盆海域と沖大東海嶺南方海域が延長大陸棚として政令で定められました。一方、隣接する関係国との調整が必要な海域と同委員会からの勧告が先送りされた海域について、海上保安庁では、内閣府総合海洋政策推進事務局の総合調整の下、関係省庁と連携し、引き続き大陸棚の限界画定に向けた対応を行っています。そのうち、小笠原海台海域においては、令和5年12月、関係国である米国との調整が進捗し、大部分を我が国の延長大陸棚とするための政令を定めることが可能となりました。
◆海洋の安全・秩序の確保
●近年の現況
尖閣諸島周辺海域においては、ほぼ毎日、中国海警局に所属する船舶による活動が確認さ れ、領海侵入する事案も発生しており、令和5 年には、尖閣諸島周辺の接続水域での中国海警局に所属する船舶の年間確認日数が過去最多を更新した。また、中国海警局に所属する船舶が 領海に侵入し、日本漁船等に近づこうとする事案も繰り返し発生しており、これに伴う領海侵入時間も過去最長を更新するなど、情勢は依然として予断を許さない状況となっている。また、昨今では、中国海警局に所属する船舶の大型化、武装化、増強が確認されており、3年2月には中国海警法が施行されるなど、中国の動向を引き続き注視していく必要がある。海上保安庁では、現場海域に巡視船を配備するなど、我が国の領土・領海を断固として守り抜くという方針の下、冷静に、かつ、毅然として対応を続けている。また、東シナ海等の我が国排他的経済水域等においては、外国海洋調査船による我が国の事前の同意を得ない調査活動等も確認されており、海上保安庁では、関係機関と連携しつつ、巡視船・航空機による監視警戒等、その時々の状況に応じて適切に対応している。 さらに、大和堆周辺海域では、外国漁船による違法操業が確認されるなど、依然として予断を許さない状況が続いており、海上保安庁では、同海域で操業する日本漁船の安全確保を以上最優先とし、関係省庁と連携しつつ、これら外国 漁船に対して退去警告を行うなど、厳正に対応 している。 このほか、日本海沿岸部への北朝鮮からのものと思料される木造船等の漂流・漂着が確認される等、我が国周辺海域を巡る状況は、一層厳 しさを増している。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
●海上保安能力強化の推進
海上保安庁では、我が国周辺海域を取り巻く情勢が一層厳しさを増していることを踏まえ、 令和4年12月に決定された「海上保安能力強化に関する方針」に基づき、巡視船・航空機等 の増強整備等のハード面の取組みに加え、無操 縦者航空機等の新技術の積極的活用、警察、自衛隊、外国海上保安機関等の国内外の関係機関との連携・協力の強化、サイバー対策の強化等のソフト面の取組みを推進することにより、海上保安業務に必要な能力を一層強化しているところです。5年12月に開催された「海上保安能力強化に関する関係閣僚会議」においも、これらの取組みを一層進めていくことが確認されました。 なお、令和5年度は、大型巡視船5隻、中型 ヘリコプター7機が就役したほか、無操縦者航空機3機による24時間365日の海洋監視体制を構築しました。
●「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて
我が国は「自由で開かれたインド太平洋」 (FOIP=Free and Open Indo-Pacific) の実現に向け、①法の支配、航行の自由、自由貿 易等の普及・定着、②経済的繁栄の追求(連結 性、EPAや投資協定を含む経済連携強化)、③平和と安定の確保(海上法執行能力の向上、人 道支援、災害救援、海賊対策等での協力)の3点を「三本柱の施策」と定め、地域全体の平和と繁栄を確保するため、各種取組みを推進して いる。
海上保安庁では、、この「自由で開かれたイ ンド太平洋」の実現に向け、多国間及び二国 間の連携・協力の取組みを強化するとともに、 シーレーン沿岸国等の海上保安機関の能力向 上を支援し、年々深化・多様化する国際業務 に適切に対応する体制を構築している。多国 間の連携・協力に関しては、グローバル化あ るいはボーダレス化する傾向にある国際犯罪 や、大規模化する事故や災害、環境汚染につい て、各国で連携して対応していくことが重要で あるという認識の下、平成12年から北太平洋 海上保安フォーラム(NPCGF)、16年からア ジア海上保安機関長官級会合(HACGAM)の ほか、29年から世界海上保安機関長官級会合 (CGGS)を日本の主導で開催し、海上保安機 令和5年度に就役した大型巡視船 関間の連携・協力を積極的に推進している。な お、令和5年度は、9月にカナダにて開催さ れた第23回NPCGFに参加し、同じく9月に トルコにて開催された第19回HACGAMに 参加した。さらに10月には東京において、4 年ぶりとなるCGGSを日本財団と共催し、過 去最大となる96の海上保安機関等の代表が参 加した。”the first responders and front-line actors”たる海上保安機関等が直面する課題を 克服し、”Peaceful, Beautiful, and Bountiful Seas”(平和で美しく豊かな海)を次世代に受 け継ぐために、海上部門における共通の行動理念への理解を深め、全世界の海上保安機関の能 力を向上させることが重要であることを再認識 した。 二国間の連携については、覚書や協定を締結 して二国間の枠組みを構築、引き続き共同訓練 等を実施していく。 また、増加する諸外国からの海上保安能力向 上支援の要望に応えるため、平成29年に発足 した能力向上支援の専従部門である「海上保安 庁Mobile Cooperation Team(MCT)」を、 令和5年度末までに、20か国へ合計105回派 遣、8か国1機関に22回のオンライン研修を 実施したほか、各国海上保安機関等の職員を日 本に招へいして各種研修を実施するなど、各国 の海上保安能力向上を支援した。
(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
(つづく)Y.H