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国土交通省は、陸海空にわたる諸活動の基盤に関して、国土の総合的な利用と保全、社会資本の整合整備、交通政策の推進、観光立国の推進,、海上の安全の確保などを任務としています。これらの多岐にわたる取組みの目指すところは、安心・安全で豊かな自立し活力ある暮らしを可能にすることにより私達の暮らしを支えることといえます。今回は、国土交通行政の展開についてお話しします。
◆東日本大震災からの復旧・復興の現状と対策
東日本大震災からの復旧・復興事業については、国土交通省の最優先課題の一つであり、一日も早い復興を目標に全力で取り組んできました。 その結果、道路、鉄道、港湾等の基幹インフラの復旧・整備や住宅の再建・復興まちづくりのハード事業が、地震・津波被災地域ではおおむね完了するなど、復興は着実に進展しています。他方で、特に福島の原子力災害被災地域を中心に、未だに不自由な生活を強いられている被災者も多くいます。国土交通省としては、令和3年3月に閣議決定され6年3月に見直しが行われた「「第2期復興・創生期間」以降における東日本大震災からの復興の基本方針」等に基づき、引き続き、被災者に寄り添いながら、被災地の復興に向けて、総力を挙げて取組みを進めています。
具体的には、地震・津波被災地域においては、引き続き、海岸や下水道等、残る基幹インフラ事業の早期完了に向けて着実に事業を実施します。 原子力被災地域においては、令和5年度にすべての特定復興再生拠点区域における避難指示が解除されたところであり、引き続き、双葉町、大熊町等における市街地整備の支援を継続するとともに、新たに設定された特定帰還 居住区域等への帰還・居住も見据え、被災者の生活や生業が再建できるよう取り組みます。また、ALPS処理水の海洋放出による風評への対策としてのブルーツーリズムや福島県が推進するホープツーリズム等における滞在コンテンツの充実、プロモーションの強化等の取組みを引 き続き支援し、観光復興を促進する。加えて、「福島国際研究教育機構基本構想」(令和4年3月29日復興推進会議決定)に基づき、関係省庁と一丸となって取組みを進めます。
◆東日本大震災を教訓とした津波防災地域づくり
平成23年12月に制定された「津波防災地域づくりに関する法律」に基づき、各地で津波防災の取組みが進められており、令和6年3月末時点で、最大クラスの津波に対応した津波浸水想定の設定(40都道府県)、警戒避難体制を整備するための津波災害警戒区域の指定(26道府県)、さらに津波災害特別警戒区域の指定(静岡県伊豆市)、津波防災地域づくりの総合的な推進計画の作成 (22市町)が行われています。 また、東日本大震災被災地では、24地区の 「一団地の津波防災拠点市街地形成施設」が都市計画決定される(令和5年3月末時点)など、同法を活用した復興の取組みも進められています。国土交通省は、関係部局で構成される支援チームを設置して地方公共団体によるこれらの 取組みに係る支援を実施しており、今後も国民の命を守るための津波防災地域づくりを積極的に推進していきます。
◆国土政策の推進
国土形成計画は、総合的かつ長期的な国土づくりの方向性を示すものである。第三次国土形成計画(令和5年7月閣議決定)では、我が国が直面するリスクと構造的な変化を踏まえ、地方に軸足を置いたビジョンとして、目指す国土の姿に「新時代に地域力をつなぐ国土」を掲 げ、そのための国土構造の基本構想として、広域レベルにおいては、広域圏の自立的発展と日本海側・太平洋側二面活用等の広域圏内・広域 圏間の連結強化を図る「全国的な回廊ネットワーク」や、リニア中央新幹線等により三大都市圏を結ぶ「日本中央回廊」の形成等から、 「シームレスな拠点連結型国土」の構築を図ることにより、地域の魅力を高め、地方への人の 流れの創出・拡大を図ることとしている。また、国土の刷新に向けた4つの重点テーマとして、「デジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成」、「持続可能な産業への構造転換」、「グリーン国土の創造」、「人口減少下の国土利用・ 管理」を掲げるとともに、これを支える横断的な重点テーマとして、「国土基盤の高質化」、「地域を支える人材の確保・育成」を位置付け、相互に連携しながら相乗効果を発揮できるように、統合的に取り組むこととしている。計画の実装に当たっては、地域生活圏の形成をはじめ、計画が描く将来ビジョンを国民全体で共有していくとともに、関係省庁とも緊密に連携しながら推進していく。また、令和5年10月に国土審議会の下に推進部会を設置し、検討を行っていく。二地域居住等の促進については、推進部会の下に設置された移住・二地域居住等促進専門委員会において検討を行い、中間とりまとめを公表した。今後はそれに基づき、計画の掲げる「地方への人の流れの創出・拡大」の実現を図っていく。
国土利用計画(全国計画)は、国土の利用に関する基本的な方向を示すものである。第六次国土利用計画(全国計画)(令和5年7月閣議決定)では、人口減少や高齢化等の国土利用をめぐる基本的条件の変化と課題を踏まえ、「地域全体の利益を実現する最適な国土利用・管理」、「土地本来の災害リスクを踏まえた賢い国土利用・管理」、「健全な生態系の確保によりつながる国土利用・管理」等を基本方針とし、持続可能で自然と共生した国土利用・管理を目指すこととしている。第六次国土利用計画(全国計画)では、特に、中山間地域や都市の縁辺部において、人口 減少により、従来と同様に労力や費用をかけて土地を管理し続けることは困難になることが想定されることから、地域の目指すべき将来像を見据えた上で、優先的に維持したい農地を はじめとする土地を明確化し、粗放的な管理や最小限の管理を導入するなど、地域の合意形成に基き、管理方法の転換等を図る「国土の管理構想」を全国で進めることとされた。 国土形成計画(全国計画)を基本とする国土形成計画(広域地方計画)については、新たな計画策定に向けて、令和5年7月に公表した基本的な考え方の議論を進め、6年度冬頃に中間とりまとめを公表する。(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
◆社会資本の老朽化対策等
■社会資本の老朽化対策
高度経済成長期以降に集中的に整備されたインフラの老朽化が深刻であり、今後、建設から50年以上経過する施設の割合が加速度的に増加していきます。インフラを計画的に維持管理・更新することにより、国民の安全・安心の確保や維持管理・更新に係るトータルコストの縮減・平準化等を図る必要があります。令和3年6月に策定した「第2次国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)」に基づき、損傷が軽微な段階で補修を行う「予防保全型」のインフラメンテナンスへの本格転換、新技術・官民連携手法の普及促進等によるインフラメンテナンスの生産性向上、集約・再編等によるインフラストック適正化等の取組みを推進し、インフラが持つ機能が将来にわたって適切に発揮できる、持続可能なインフラメンテナンスの実現を目指していきます。
■地域インフラ群再生戦略マネジメントの推進
平成25年を「社会資本メンテナンス元年」として位置付け、メンテナンスサイクルの確立等、様々な取組みを行ってきました。平成30年には、国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計を行い、将来、維持管理・更新費の増加は避けられないものの、「事後保全」から「予防保全」に転換することにより、今後30年間の累計で約3割縮減でき る見込みを示しました。このことから、今後、予防 保全への転換を進めることにより費用の縮減・平準化を図り、持続的・効率的なインフラメンテナンスを推進することが重要となります。 しかし、多くの地方公共団体では、適切な維持管理を進める上で体制面・予算面に課題を抱えています。このような状況を踏まえ、今後は、各地方公共団体が個々のインフラを管理するのではなく、広域・複数・多分野のインフラを群としてとらえ、戦略的にマネジメントを行う 「地域インフラ群再生戦略マネジメント」を推進していく必要があります。令和5年12 月に11件40地方公共団体を先行的に課題解決に取り組むモデル地域に選定しました。まずはモデル地域において取組みを進め、その知見を全国展開へつなげていくことで、持続可能なインフラメンテナンスの実現を図っていきます。
■社会資本整備の推進
社会資本整備重点計画は、「社会資本整備重点計画法」に基づき、社会資本整備事業を重点的、効果的かつ効率的に推進するために策定する計画である。第4次計画の策定(平成27年)以降、自然災害の激甚化・頻発化やインフ ラの老朽化の進展、人口減少による地域社会の変化や国際競争の激化、デジタル革命の加速や グリーン社会の実現に向けた動き、ライフスタイル・価値観の多様化等、社会情勢は大きく変化した。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大が、社会経済活動のあり方や人々の行動・意識・価値観に多大な影響を及ぼしている。こ うした点を踏まえ、第5次計画(令和3年5月閣議決定)では、計画期間内(5年)に達成すべき6つの重点目標を設定するとともに、インフラのストック効果を最大限発揮させるため、「3つの総力」と「インフラ経営」の視点を追加した。「3つの総力」については、様々な主体の連携による「主体の総力」、ハード・ソフ ト一体で相乗効果を生み出す「手段の総力」、整備だけでなく、将来の維持管理・利活用まで見据えた取組みを行う「時間軸の総力」によ り、社会資本整備を深化させていく。「インフ ラ経営」については、インフラを、国民が持つ「資産」としてとらえ、整備・維持管理・利活用の各段階において、工夫を凝らした新たな取組みを実施することにより、インフラの潜在力を引き出すとともに、インフラによる新たな価値を創造する。また、持続可能で質の高い社会資本整備を下支えするための取組みとして、「戦略的・計画的な社会資本整備のための安定的・持続的な公共投資」と「建設産業の担い手の確保・育成、生産性向上」が必要である。さらに、新たに設定された重点目標を達成するため、全国レベルの第5次計画に基づき、 北海道から沖縄まで全国10ブロックにおいて 「地方ブロックにおける社会資本整備重点計画」 を令和3年8月に策定し、個別事業の完成時期や今後見込まれる事業費を記載するなど、事業の見通しをできるだけ明確化した。これにより、各地方の特性、将来像や整備水準に応じた重点的、効率的、効果的な社会資本の整備を推進する。
(出典)国土交通省 令和6年版 国土交通白書
(つづく)Y.H