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障害者支援は、障害者が自己決定を実現し、社会的参加を促す事を目的とし、障害本人を支援することが重視されます。例えば、障害者向けの就労支援や生活支援がその一例であり、普通の人が持っているスキルや能力を引き出すことで、自立した生活を目指します。
今回は障害者支援の推進についてお話しします。
◆障害福祉総合支援法等に基づく支援
■障害者総合支援法等に基づく支援
●障害者総合支援法の施行について
障害保健福祉施策については、「障害者自立支援法」を「障害者総合支援法」とする内容を含む「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」が2012(平成24)年6月に成立し、2013(平成25)年4月より施行(一部、2014(平成26)年4月施行)されました。 2016(平成28)年5月には、同法の附則で規定された施行後3年(2016年4月を目途とした見直しを行う、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律」(平成28年法律第65号)が成立し、2018(平成 30)年4月より施行されました。
また、同法の施行3年後の見直し規定に基づき、2021(令和3)年3月より社会保障審議会障害者部会で見直しの議論を開始し、2022(令和4)年6月に最終的な報告書を取りまとめ、当該報告書に基づいた「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するめの法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第104号。以下「障害者総合支援法等改正法」という。)が2022年12月に成立し、2024(令和6)年4月1日より施行されました。
●難病患者等への対象拡大
障害者の定義に、2013(平成25)年4月から難病患者等を追加して障害福祉サービス等の対象としました。新たに対象となる難病患者等は、障害者手帳の所持の有無にかかわらず、必要に応じて障害支援区分の認定などの手続を経た上で、市区町村において必要と認められた障害福祉サービス等を利用できることとなりました。 難病等の対象疾病については、難病医療費助成の対象となる指定難病の検討状況等を踏まえ、順次見直しを行い、2024(令和6)年4月1日から369疾病を対象としています。
●障害福祉サービスの充実及び障害福祉サービス等報酬改定の実施
「障害者総合支援法等改正法」により、共同生活援助(グループホーム)の支援内容と して、一人暮らし等を希望する者に対する支援を法律上明確化するとともに、基幹相談支援センター及び地域生活支援拠点等の整備を努力義務化しました。また、就労アセスメントの手法を活用した「就労選択支援」を創設しました。 2024(令和6)年度の障害福祉サービス等報酬改定(以下「報酬改定」という。)では、障害福祉分野の人材確保のため、介護並びの処遇改善を行うとともに、障害者が希望する地域生活の実現に向けて、介護との収支差率の違いも勘案しつつ、新規参入が増加する中でのサービスの質の確保・向上を図る観点から、経営実態を踏まえたサービスの質等に応じたメリハリのある報酬設定を行いました。
●第7期障害福祉計画
「障害者総合支援法」では、障害のある人に必要なサービスが提供されるよう、将来に向けた計画的なサービス提供体制の整備を進める観点から、国の定めた基本的な指針(以下「基本指針」という。)に即して、市町村及び都道府県が、数値目標と必要なサービス量の見込み等を記載した障害福祉計画を策定することとしている。2023(令和5)年2月には、社会保障審議会障害者部会での議論を経て、2024(令和6)年度から2026(令 和8)年度までの3年間の計画(第7期障害福祉計画)の策定のため、基本指針の改正を行った。都道府県、市町村においては、この基本指針に即して3年間の計画を作成し、2024年4月から、計画に盛り込んだ事項について、定期的に調査、分析、評価を行いながら、障害福祉施策を総合的、計画的に行っていくことが求められる。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
■障害者の虐待防止
2012(平成24)年10月から「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」が施行され、虐待を受けた障害者に対する保護、養護者に対する支援のための措置が図られました。 厚生労働省においては、障害者虐待の防止に向けた取組みとして、地域生活支援促進事業において、地域における関係機関等の協力体制の整備・充実を図るとともに、過去に虐待があった障害のある人の家庭訪問、障害者虐待防止に関する研修、虐待事例の分析を行う都道府県や市町村を支援しています。 さらに、障害がある人の虐待防止・権利擁護や強度行動障害のある人に対する支援のあり方に関して、各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修を実施しています。
■発達障害児者の支援
2004(平成16)年12月に「発達障害者支援法」が成立し、発達障害の法的位置づけが確立され、発達障害の早期発見・早期支援や発達 障害児者の生活全般にわたる支援が進められました。 また、第190回国会においては、発達障害児者の支援をより一層充実させるための「発達障害者支援法の一部を改正する法律」(平成28年法律第64号)が2016(平成28)年5月に成立し、同年8月より施行されました。
●発達障害児者に対する地域支援体制の確立
厚生労働省においては、法改正を踏まえ、都道府県等が「発達障害者支援地域協議会」を設置することを支援している。また、発達障害児者及びその家族等に対して相談支援、発達支援、就労支援及び情報提供などを行う「発達障害者支援センター」の整備を図ってきたところであり、2012(平成24)年度までに全67都道府県・指定都市に設置されている。
さらに、2018(平成30)年度から、地域生活支援促進事業の「発達障害児者及び家族等支援事業」として、従来から実施しているペアレントメンターの養成やペアレントトレーニング等に加え、同じ悩みを持つ本人同士や発達障害児者の家族に対するピアサポー ト等の取組みに対して支援を行っている。2020(令和2)年度からは、青年期の発達障害者同士が交流するための居場所づくり等を行うための取組みへの支援を実施している。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
●発達障害児者への支援手法の開発・早期支援や普及啓発の着実な実施
厚生労働省は、発達障害児者を支援するための支援手法の開発、関係する分野との協働による支援や切れ目のない支援等を整備するため、「発達障害児者地域生活支援モデル事業」を実施しています。2017(平成29)年度からは、2016(平成28)年の法改正の趣旨を踏まえ、「地域で暮らす発達障害児者に困り事が生じた時に、発達障害児者の特性を理解した上で地域や関係機関において適切な対応が行われるための支援手法の開発」等のテーマを設け、2023(令和5)年度も引き続き、モデル事業を実施しました。
国立障害者リハビリテーションセンターでは、各部門が連携し、支援手法の開発や早期支援等に取り組んでいいます。センター内に発達障害情報・支援センターを設置し、全国の発達障害者支援センターや研究機関等の協力の下、発達障害に関する情報を集約しホームページ等で発信しています。また、文部科学省、厚生労働省の協力の下、発達障害教育推進センターと協働し、発達障害分野における国からの情報発信機能強化と、情報の一元化により利便性を高める目的でポータルサイト「発達障害ナビポータル」を構築し、2021(令和3)年より運用しています。2023(令和5)年4月、「発達障害のある方やその家族が、必要な情報を得て、適切な支援につながれる」をコンセプトとした、当事者・家族向けの情報検索ツール公開しました。
●発達障害児支援に関する福祉・教育分野の携の推進
発達障害をはじめ障害のあるこどもへの支援を、各自治体では教育委員会と福祉部局が所管しており、お互いの切れ目ない連携が不可欠です。このため、2019 (令和元)年度より、市町村内における家庭・教育・福祉の連携推進、地域支援対応力向上のための協議の場の設置や福祉機関と教育機関等との連携を担うコーディネーターを配置するする「家庭・教育・福祉連携推進事業」を実施しています。 また、こども大綱やこども未来戦略(2023(令和5)年12月22日閣議決定)において、福祉・教育分野の連携の促進が盛り込まれ、2024(令和6)年度障害福祉サービス等報酬改定においては、教育と連携した様々な取組みについて評価の充実を図りました。
◆障害者の社会参加支援について
障害者の社会参加を支援するため、身体機能を補完する補装具の購入等に要する費用を 支給する補装具費支給制度のほか、地域生活支援事業などを行っている。地域生活支援事 業では、意思疎通を図ることに支障がある障害者等へ手話通訳を行う者の派遣などを行い 意思疎通を支援する事業、日常生活上の便宜を図るための用具を給付する事業、屋外での 移動が困難な障害者等への移動を支援する事業、身体障害者補助犬の育成事業、障害者の 芸術文化活動への参加を促進する事業、障害者やその家族、地域住民等が自発的に行う活動に対する支援を行う事業、障害者に対する理解を深めるための研修・啓発を行う事業など様々な事業を行っている。 障害者による文化芸術活動については、「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」(平成30年法律第47号)及び「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な 計画(第2期)」(2023(令和5)年3月策定)を踏まえ、地域における障害者の文化芸術 活動を支援する体制を全国に普及することを目的とした障害者芸術文化活動普及支援事業 を実施している。また、障害者の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害者の自立と社会参加の促進に寄与することを目的として、2023年に「いしかわ百万石文化祭2023」(第38回国民文化祭、第23回全国障害者芸術・文化祭)を開催した。
(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
(つづく)Y.H