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国民の多くは、健康で安全な生活をすることを願っています。一方で、大規模な自然災害が発生しても、機能不全に陥らないで復旧復興に取り組まねばなりません。また、日常生活に潜む危険(感染症等)などから身を守る対策にも万全を期す必要があります。今回は、健康で安全な生活の確保についてお話しします。
◆健康危機管理・災害対策の推進
■健康危機管理の取組み
厚生労働省では、医薬品、食中毒、感染症、飲料水その他何らかの原因により生じる国民の生命、健康の安全を脅かす事態に適切に対応できるよう、「厚生労働省健康危機管理基本指針」に基づき必要な体制を整備しています。 具体的には、平素から、関係部局や国立試験研究機関等を通じて、内外からの健康危機管理に係る情報を収集し、部局横断的に情報交換を行っています。有事の際には、対策本部の設置、職員や専門家の現地派遣、国民への情報提供等について、検討、調整等が行われます。 また、①健康危機情報の監視、②公衆衛生対応及び初動期医療の整備(通信環境や資材の整備、大規模イベントに備えた希少医薬品等の備蓄等)、③危機管理関連の調査研究 (被害予測や対策等)、④ガイドラインの整備、訓練・研修会の開催等を行い、平時から健康危機管理に努めています。
■災害対策の取組み
厚生労働省においては 、「厚生労働省防災業務計画」に基づき、厚生労働省の所掌事務 に係る災害予防対策、災害応急対策及び災害復旧・復興に取り組んでいる。
近年、災害による甚大な被害が全国各地で発生している。こうした災害に備えるため、厚生労働省では、医療施設、社会福祉施設、水道施設*1等の耐震化や非常用自家発電設備 などの整備のほか、国土強靱化基本計画(令和5年7月28日閣議決定)を踏まえて、被災地で活動する各種保健医療福祉活動チームの連携体制構築、迅速な災害対応のためのシ ステムの構築等を行っている。
災害の発生時には、被災自治体、関係府省庁及び関係団体と連携し、発災直後から、緊急的な医療対応や避難所等における健康管理、DMAT・DPAT・介護職員等の応援派遣、応急給水や水道施設の復旧などの応急的な対応に取り組む。また、復旧・復興期には、避難所等における生活環境の改善、応急仮設住宅における見守りや日常生活上の相談支援等、中小企業・小規模事業者における雇用の維持や事業継続への手厚い支援、医療施設・社会福祉施設等の迅速な災害復旧の推進等の、生活・生業の再建に向けた取組みを行う。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
◆ゲノム医療の推進
●ゲノム医療の推進体制
近年、個人のゲノム情報に基づき、体質や病状に適した、より効果的・効率的な疾患の診断、治療、予防が可能となる「ゲノム医療」への期待が急速に高まっており、特に、がんや難病の分野では既に実用化が始まっている。このような背景を踏まえ、「未来投資戦略2017」(2017(平成29)年6月9日閣議決定)、「健康・医療戦略」(2014(平成26)年7月22日閣議決定、2017年2月17日一部変更)及び「医療分野研究開発推進計画」 (2014年7月健康・医療戦略推進本部決定、2017年2月一部変更)では、信頼性の確保 されたゲノム医療の実現等に向けた取組みを推進することや、ゲノム情報の取扱いについて、倫理面での具体的対応や法的規制の必要性も含め、検討を進めることとされた。 2020(令和2)年3月には、2020年度から2024(令和6)年度までの5年間を対象とした「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」が閣議決定され、ゲノム・データ基盤の構築及び利活用を推進することとされている。 2015(平成27)年1月から、健康・医療戦略推進会議の下に、ゲノム医療を実現するための取組みを関係府省・関係機関が連携して推進するための、「ゲノム医療実現推進協議会」が開催され、2019(令和元)年10月には「ゲノム医療協議会」に改編され、ゲノム医療の推進のための取組みを関係府省・関係機関が連携して進めている。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
◆感染症対策、予防接種の推進
■国際的に脅威とされる感染症対策について
●新型コロナウイルス感染症への対応と次の感染症危機に向けた備え
〇新型コロナウイルス感染症への対応
新型コロナウイルス感染症は、2020(令和2)年1月に国内初の感染者が報告されてから、2023(令和5)年5月に5類感染症へと位置づけられるまでの間に、我が国で約3,400万人の感染者、7万4千人を超える死亡者が報告されています。この間、感染症法や検疫法等に基づく入院措置や就業制限、検疫措置等にとどまらず、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令などの社会経済活動の制限を伴う対応もとられるなど、新型コロナウイルス感染症は我が国社会に様々な影響を及ぼした感染症です。政府一丸となり、感染拡大防止と社会経済活動のバランスをとりつつ、専門家等と連携し、各般の対策を講じてきた結果人口当たりの感染者数、死亡者数は他のG7諸国の中でも低い水準に抑えることができました。 2023年5月8日に感染症法上の「5類感染症」へ位置づけを変更し、それまでの法律に基づき行政が様々な要請・関与をしていく仕組みから、個人の選択を尊重し、国民の自主的な取組みを基本とする対応に転換しています。5類感染症への移行後も、病床確保料による入院体制の確保や治療薬等の自己負担にかかる公費支援等の特例的な措置については、段階的に見直しを行いながら継続してきましたが、2024(令和6)年3月末で特例的な措置は終了し、2024年4月かからは通常の対応へと移行しています。
〇新型コロナウイルス感染症の罹患後症状、いわゆる後遺症に悩む方への取組み
新型コロナウイルス感染症の罹患後症状、いわゆる後遺症については、様々な症状が知られており、その病態は未だ十分には明らかになっていない。厚生労働省では、調査研究と、罹患後症状に悩む方が適切な医療や支援を受けることができるような環境づくりに取 り組んでいる。
具体的には、2020年度から罹患後症状の病態を明らかにするための調査研究を実施しており、2024年度も引き続き実施することとしている。 罹患後症状に悩む方が適切な医療を受けられるよう、罹患後症状に関する研究等により得られた国内外の科学的知見を盛り込んだ「診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメン ト」を作成し、幅広く医療機関等へ周知している。さらに罹患後症状に関する特設ページを開設し、罹患後症状に悩む方の診療をしている医療機関のリストやリーフレット、既存の支援制度に関する情報を含む一般向けのQ&A、都道府県別の罹患後症状に関するホー ムページの一覧等を掲載するほか、SNS等を通じて積極的な情報発信に取り組んでいる。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
〇新型コロナワクチン接種について
2024年度以降のワクチン接種については、予防接種法に基づく特例臨時接種としてのワクチン接種は2024年3月31日までで終了となり、2024年度からは、新型コロナウイ ルス感染症は予防接種法上のB類疾病とされ、定期接種として毎年秋冬に1回、65歳以上の方などを対象にワクチン接種を実施することとしています。 新型コロナワクチン接種後の副反応が疑われる症状については、副反応疑い報告制度により、医療機関等から情報を収集し、因果関係も含め、専門家による分析や評価を行っています。また、新型コロナワクチン接種により健康被害が生じた場合には、予防接種法に基づく健康被害救済制度により、被接種者等からの申請に基づき、予防接種と健康被害の因果関係が認められた方に対する救済を行っています。審査に当たっては、予防接種と健康被害の厳密な医学的因果関係までは必要とせず接種後の症状が予防接種によって起こることが否定できない場合も対象とするという考え方に基づき審査し、幅広い救済を行っています。新型コロナワクチンについて、国内で開発・生産ができる体制を確立することは危機管理上も極めて重要であり、国産ワクチンの研究開発、生産体制整備について強化を図るため、製造販売企業等の生産体制の整備を補助するとともに、大規模臨床試験等の実証研究等の支援を行っています。2023年12月からは、こうした支援を受けた国内企業が 開発し、国内で生産したワクチンの供給が開始され、2024年3月31日まで実施された特例臨時措置に用いられました。
●次の感染症危機に向けた備えについて
〇感染症危機管理体制の強化
今般の新型コロナウイルス感染症への対応の経験等を踏まえ、新型インフルエンザや、 その他幅広い感染症による危機に対して、強くてしなやかに対応できる社会を目指し、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号。以下「特措法」という。)の規定に基づき、2013(平成25)年に策定された「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」(2013年6月7日閣議決定)及びガイドラインを初めて抜本的に改定することとなりました。また、2023年11月に、同年9月に内閣官房に設置された内閣感染症危機管理統括庁を中心に、全国の都道府県と連携し、感染症危機管理対応訓練を実施しており、今後も、国や自治体等の関係機関において、実効性のある訓練を定期的に実施し、点検・改善を進めていくことにしています。
(つづく)Y.H