キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
少子高齢化によって、ますます労働力の減少が進んでいます。医療・介護も例外ではなく、将来的に医師や看護師、介護従事者が減っていくことは避けられません。つまり、社会と同じく需要と供給のバランスが崩れてしまう可能性があります。このバランスをどう保っていくかが、医療・介護業界の課題です。また、医療費も今後増える一方であり、税金が減ってしまえば、必然的に社会保障費の確保が難しくなってきます。今回は、持続可能な医療・介護の実現についてお話しします。
◆地域における医療・介護の総合的な確保推進
■医療及び介護の総合的な確保の意義
我が国の医療・介護の提供体制は、世界に冠たる国民皆保険を実現した医療保険制度及 び2000(平成12)年に創設され社会に定着した介護保険制度の下で、着実に整備されてきました。一方、高齢化の進展に伴い疾病構造が変化し、これに併せて必要な医療・介護ニー ズが変化するなど、医療・介護の提供体制を取り巻く環境は大きく変化しています。 いわゆる団塊の世代が全て75歳以上となる2025(令和7)年にかけて、65歳以上人口、とりわけ75歳以上人口が急速に増加した後、2040(令和22)年に向けてその増加は緩やかになる一方で、既に減少に転じている生産年齢人口は、2025年以降さらに減少が加速しています。 いわゆる団塊の世代が全て75歳以上となる2025年、その後の生産年齢人口の減少の加速等を見据え、患者・利用者など国民の視点に立った医療・介護の提供体制を構築し、国民一人一人の自立と尊厳を支えるケアを将来にわたって持続的に実現していくことが、医療及び介護の総合的な確保の意義です。
■地域医療介護総合確保基金
「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」 (平成元年法律第64 号)に基づき、消費税増収分等を活用した財政支援制度(地域医療介護総合確保基金)を 創設し、各都道府県に設置している。都道府県は、「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」(総合確保方針)に即して、かつ、地域の実情に応じて、地域における医療及び介護の総合的な確保のための事業の実施に関する計画(都道府県計 画)を作成し、地域医療介護総合確保基金を活用しながら、当該計画に基づく事業を実施することとしている。地域医療介護総合確保基金については、都道府県において毎年度事業の評価を行うとともに、医療介護総合確保促進会議においても議論されることとなっており、基金が有効に活用されるように取り組んでいくこととしている。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
◆安心で質の高い医療提供体制構築
■質が高く効率的な医療体制の構築
医療提供体制は、国民皆保険制度とフリーアクセスの下で、国民が必要な医療を受けることができるよう整備が進められ、国民の健康を確保するための重要な基盤となっています。 しかし、急速な少子高齢化に伴う疾病構造の多様化、医療技術の進歩、国民の医療に対する意識の変化等、医療を取り巻く環境が変化する中で、将来を見据え、どのような医療提供体制を構築するかという中長期的な課題にも取り組む必要があります。また、現在、都道府県間及び都道府県内の医師の地域的な偏在、及び診療科間の偏在の問題や救急患者の受入れの問題等に直面しており、これらの問題に対する緊急の対策を講じる必要があります。 さらに、今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大の経験を踏まえて、新興感染症発生・まん延時におけるる医療提供体制の構築も求められていいます。
●都道府県医療計画におけるPDCAサイクル推進
都道府県は、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るために、国の定める基本方針に即し、地域の実情を踏まえつつ、「医療計画」を策定しています。医療計画においては、五疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患)・六事業(救急医療、災害時における医療、新興感染症発生・まん延時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む。))及び在宅医療のそれぞれについて、医療資源・医療連携等に関する現状を把握し、課題の抽出、数値目標の設定、医療連携体制の構築のための具体的な施策等の策定を行い、その進捗状況等を評価し、見直しを行なうことでPDCAサイクルを推進することとしています。
●地域医療体制の整備
〇救急医療
救急医療体制については、初期救急、入院を要する救急(二次救急)、救命救急(三次救急)を体系的に整備するとともに、①重篤な救急患者を24時間体制で受け入れる救命救急センターに対する支援、②長時間搬送先が決まらない救急患者を一時的であっても受 け入れる二次救急医療機関の確保に対する支援、③急性期を脱した救急患者の円滑な転床・転院を促進するためのコーディネーターの配置に対する支援等を行っている。さらに、第8次医療計画においては、増加する高齢者の救急や、特に配慮を要する救急患者を受け入れるために、地域における救急医療機関の役割を明確化することとしている。 また、救急患者の搬送・受入れがより円滑に行われるよう、各都道府県において、救急患者の搬送及び医療機関による当該救急患者の受入れを迅速かつ適切に実施するための基準を策定している。さらに、ドクターヘリを用いた救急医療提供体制を全国的に整備するため、補助事業を行っており、2024(令和6)年3月末現在、46都道府県で57機のドクターヘリが運用されている。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
〇小児医療
小児医療については、休日・夜間における小児の症状等に関する保護者等の不安解消等のため、小児科医等が電話で助言等を行う「子ども医療電話相談事業」を全47都道府県で実施しており、地域医療介護総合確保基金を活用して支援しています。また、同事業の相談対応者の対応技術向上を目的とした研修の実施による事業の質の維持・向上や、相談内容等の情報を収集して、分析し、結果を広報することで、病気、けが等の対処について保護者等への啓発を行っています。さらに、第8次医療計画においては、小児医療に携わる医師の勤務環境の改善を進めつつ医療機関の集約化・重点化を進めること、医療的ケア児も含めた小児医療体制体制を構築することとしています。
〇災害医療
災害時における医療対策として、災害拠点病院の整備(2023(令和5)年4月1日現在770か所)、災害派遣医療チームの養成等を進めてきました (2023年4月1日現在1,773チームが研修修了)。また、災害時に様々な救護班の派遣調整業務等を行う地域の医師等(災害医療コーディネーター)の養成については、災害時に地域単位の細やかな医療ニーズ等に対応するため、都道府県単位に加えて、地域単位で実施する研修を支援しています。さらに、災害時における医療機関の被災情 報や活動状況など災害医療に関わる情報を提供・収集・共有するため、広域災害・救急医 療情報システムを整備しています。
〇新感染症医療
新興感染症発生・まん延時における医療については、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症の発生及びま ん延に備えた医療提供体制を構築するため、第8次医療計画より、新たに六事業目として 医療計画の記載事項に追加された。新興感染症発生・まん延時における医療の体制の構築 に当たっては、新型コロナウイルス感染症における対応規模を念頭に、2022年に改正された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年法律第114 号)に基づく都道府県と医療機関との医療措置協定の締結等を通じ、平時から地域における役割分担を踏まえた、新興感染症に対応する医療及び新興感染症以外の通常医療の提供体制の確保を図ることとしている。 2023年5月に医療計画作成指針等の改正と併せて、都道府県における医療機関との協定締結等を円滑に進めるためのガイドラインを示し、同年11月には、厚生労働省と医療 関係団体で「ポストコロナ医療体制充実宣言」を発表し、新興感染症の発生に平時から備えるための取組みを集中的に進めていくことを共同で宣言した。各都道府県における協定の締結は2024年9月末までに完了することを目指している。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
(つづく)Y.H