厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。
●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」
以下、厚労省「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン(以下ガイドライン)」を紹介していきます。
4.6.2 講師及びスタッフ等の職務遂行のための能力等の管理
【指針】
民間教育訓練機関は、提供する職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)関わる講師及びスタッフ等が職務を遂行するために必要な能力等を明確にし、講師及びスタッフの特性や能力に対する評価を行う。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
1.職務を遂行するために必要な能力等の明確化
効果の高い職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)
(講師及びスタッフが備えるべき能力等の分析項目の例)
①訓練分野に関する専門的知識、技能及び技術、資格
②上記①についての指導力
③カリキュラム等における指導項目の設定、コースごとの訓練環境等をコーディネートする能力
④就職支援、キャリア・コンサルティングに係る専門的知識や具体的な経験等
⑤コミュニケーション能力
⑥勤務態度 等
2.必要な能力等の有無の検証
実際に職業訓練を行う講師及びスタッフが職務を遂行するために必要される能力を有するか否かを、適切かつ効果的な方法を用いて検証します。活用する情報としては、上記(1)にて分析した能力や、検証時の業績等が考えられます。場合によっては、複数の検証方法を併用して、より確実な情報を収集、分析します。その分析に基づく評価は、公平かつ平等が基本原則であり、その評価のプロセスにおいて、関係法令、公平性、人権の基本原則との整合性を考慮し、定期的に検証する仕組みが必要です。
講師及びスタッフを新たに確保する場合も、必要と判断される能力を有するか否かを検証するための適切かつ効果的な方法を選択し実施します。
3.情報の共有
講師及びスタッフ個人の評価結果が適切に各個人と共有される仕組みを構築し ます。なお、講師及びスタッフと共有する評価結果については、事前に妥当性や信頼性を有する情報であることを検証し、公平かつ適切に情報を共有します。また、講師及びスタッフの意欲や仕事に対する満足度や要望等について、講師及びスタッフ自身の意見を聞く仕組みも整備します。
4.6.3 講師及びスタッフ等の能力開発等
【指針】
民間教育訓練機関は、講師及びスタッフが担当業務を適切かつ効果的に遂行し、質の高い職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の提供を可能にするため、継続的かつ計画的に講師及びスタッフの能力開発に取り組み、その効果を評価し記録する手順を確立する。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
スタッフ(必要に応じて協力者を含む。)の能力を維持向上させるため、「6.2 講師及びスタッフ等の職務遂行のための能力等の管理」で得られた評価結果に基づき、養成する必要のある能力を明確にするとともに、講師及びスタッフ(必要に応じて協力者を含む。)に対して継続的な能力開発に取り組む機会を公平かつ平等に与えるための育成計画を用意します。育成計画は、OJT と自己啓発を中心とし、講師及びスタッフの職務内容に応じてOff-JT(研修)により補完します。また、その効果について評価及び記録する手順を確立します。
4.7 見直し及び改善
4.7.1 受講者等からの意見及び要望等への対応
【指針】
民間教育訓練機関は、①提供した職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)による目標の達成状況、②職業訓練サービスに対する受講者等からの満足度や意見及び要望等の把握と分析、③意見及び要望等に対する対応、等へ対応するための手順を確立する。
また、職業訓練サービスが目標を達成していない等、期待する成果を上げていない場合には、必要な改善処置を講ずるための手順を確立する。
(注記)受講者等からの苦情、意見や要望、提案等への具体的な対応方法は「3.4 職業訓練サービスのモニタリング」を参照。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
1.受講者及び職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)を利用する関係者等から提供された職業訓練サービスに対する満足度等の評価、意見及び要望等の把握と分析、意見及び要望に対する対応等の手順は、以下の例を参考にして確立します。
(意見及び要望の収集方法の例)
コースの受講中又は修了時の調査、さらに修了後の追跡調査等として、受講者の派遣元の事業所等の満足度、受講者が習得した能力の活用度等の訓練効果に関する必要な項目を設定し、ヒアリング又はアンケート調査等を実施します。
(収集項目の例)
① 受講者の受講中又は修了時の満足度、習得度
② 受講者の修了後の満足度、習得した職業能力の活用状況(就職先での満足度)
③ 受講者の派遣元や受講者の就業先となる事業所等の満足度
④ 高い成果が得られた職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)に関する各種統計データ 等
2.把握された様々な情報を分析し、「4.7.3 予防処置及び是正処置」により事案ごとに必要な処置を講じるとともに、その結果を記録します。
【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
・訓練を行う日には、実施する時間の他に最低 1 時間以上、質疑応答ができる講師の支援体制があること
・受講者からの問い合わせ等に常に対応する窓口として、事務担当者を 1 人以上配置すること
・受講者等からの苦情を適切に処理できる体制を整備すること
4.7.2 内部監査
【指針】
民間教育訓練機関は、自らがガイドラインに沿って確立したマネジメントシステム が効果的に機能していることを確認するために、内部監査を実施する手順を確立する。
なお、内部監査は、監査の対象となるプロセス及び業務領域の重要性や過去の監査結果も考慮しながら計画し、実施する。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
1. 内部監査の対象となるプロセス及び業務領域を定期的に確認、見直すため、監査の有効期間を最長で 36 ヶ月間有効とする等の設定をします。
2. 内部監査の実施に当たり、以下の項目や手順等を満たすように対応します。
①内部監査は、監査の対象となるプロセス及び業務領域のうち、監査を行う者自らが担当する業務については、その業務を担当していない者が実施
②内部監査は、監査の専門的知識並びに監査の対象となるプロセス及び領域に関する一定の知識を有する者が実施
③監査対象となった当該プロセス及び業務領域の責任者が、監査結果の報告を受理
④監査対象となった当該プロセス及び業務領域の責任者は、改善すべき点を明確にし、予防処置及び是正処置を検討
⑤内部監査の結果を受けて講じられる予防処置及び是正処置は、適切な時期及び適切な方法で実施
⑥内部監査の計画、対象となったプロセス及び業務領域、当該対象の具体的な監査事項、担当者、結果(改善点)及び講じられた処置は文書により記録
【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
・公的職業訓練の委託費や奨励金の請求に際し、請求内容の的確性について、可能な限り請求手続を行った者以外の者が定期的に内部監査を行うこと
4.7.3 予防処置及び是正処置
【指針】
民間教育訓練機関は、評価結果及び監査結果に基づき、予防処置及び是正処置を講じる。
(注記)評価結果とは、「3.4 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)のモニタリング」及び 「3.5 職業訓練サービスの評価」で行った結果をいう。監査結果とは、「4.7.2 内部監査」による結果をいう。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
1.マネジメントシステムにおける不具合の再発防止のために、評価結果及び監査結果から不具合の要因を探し出し、適切な是正処置を早期に講じるよう努めます。また、是正処置を講じた状況について記録します。また、是正処置後の有効性の確認を行います。
2.評価結果及び監査結果から、まだ起こっていない不具合の事象や要因を想定して、不具合の発生防止又は潜在的な不具合の要因を排除するために、以下の例を参考にして適切な予防処置及び是正措置を講じ、その状況について記録します。また、予防処置及び是正措置後の有効性を確認します。
(予防処置及び是正処置の手順の例)
① マネジメントシステムにおける不具合を把握
② 不具合の主な原因を明確化
③ 不具合を予防又は是正(もしくは不具合の主な原因を予防又は是正)するための処置を実施
④ 不具合が再発しないようにする処置の必要性を査定
⑤ 必要な処置を迅速に決定及び実施
⑥ 実施された処置の結果を記録
⑦ 実施された処置の効果や影響を確認
4.7.4 マネジメントシステムの点検
【指針】
民間教育訓練機関は、ガイドラインに沿って確立したマネジメントシステムを、確実に適切かつ有効に継続して運用するため、定期的及び必要に応じて随時点検する。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
1.マネジメントシステムの責任者は、マネジメントシステムの点検を定期的及び必要に応じて随時行い、その結果は経営責任者へ報告して記録します。
点検は、以下の例を参考にして行います。
(実施する点検項目の例)
① 方針(経営方針、品質方針等)の組織全体への的確な伝達、浸透の状況
② カリキュラムの進捗状況等
事業に関する具体的数値目標とその目標管理の仕組み、年間計画等の立案及び承認、受講者からのフィードバック等
③ 事業資源(人的及び物的資源並びに資金)の管理状況
講師やスタッフ等の採用、退職、能力開発及び育成状況、施設設備や機器等の管理状況、財務の管理状況
④ 事業実績の状況
年度ごとの実績及び監査結果(内部監査、必要に応じて外部監査)
⑤ マネジメントシステム等の改善提案の状況
・品質方針及び品質目標を含むマネジメントシステムの変更の必要性
・マネジメントシステムの運用状況に対する関係者からの苦情、意見や要望
・予防処置及び是正処置の状況
・過去に実施したマネジメントシステムの点検結果を踏まえて実施した処置のフォローアップ
・マネジメントシステムを改善する機会の確保(間隔、頻度等) 等
2.点検の結果を踏まえた対応としては以下のような例があります。
(点検結果を踏まえた対応の例)
① マネジメントシステム及びそのプロセスの改善(組織及び体制や手続きの見直し、プロセスの効率化)
② 訓練コース、カリキュラム等の改善
③ 事業資源(人的及び物的資源並びに資金)の配分の改善 等
(つづく)平林良人