厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。
●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」
以下、厚労省「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン(以下ガイドライン)」を紹介していきます。
第4章 民間教育訓練機関のマネジメント
本章では、3 章で示した職業訓練サービスの質の向上を目指すための基盤となる「民間教育訓練機関のマネジメント」について具体的な取り組みを示します。
4.1 マネジメントシステムの確立
【指針】
民間教育訓練機関は、受講者や関係者からの信頼を得て、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の質を向上させるために、以下のことを実施する。
マネジメントシステムのためのPDCAサイクルの導入
マネジメントシステムに関する責任者の任命
マネジメントシステムの確立出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
(1) マネジメントシステムのためのPDCAサイクルの導入
このガイドラインのマネジメントシステムの適正な管理と運営の基本ルールとして、PDCAサイクル(計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(act))を導入し、職業訓練サービスに関する訓練コースの設計から実施、評価に至る業務プロセスへの適用関係を明確にします。また、必要に応じてプロセスごとに、PDC Aサイクルを適用します。
(2) マネジメントシステムに関する責任者の任命
経営陣の中からマネジメントシステムを適切に運用する責任者を 1 名任命します。責任者は、マネジメントシステムの構築及び実施並びにその有効性を担保するため の継続的な改善に係る責務とともに、マネジメントシステムが有効に機能している 証拠を示す責務を負います。
(3) マネジメントシステムの確立
(2)の責任者は以下について取り組み、マネジメントシステムを確立します。
① 業務プロセスの運用及び管理のいずれもが効果的かつ効率的であることを確認するために必要な判断基準、取組方法を示します。
② 業務プロセス間の相互関係と相互作用を分かりやすく図示して、運営構造を明確にするとともに、相互作用に関する記録を行います。
③ 業務プロセスの運用及び点検のために必要な事業資源(人、物、情報)を利用できる環境を整えます。
④ 業務プロセスの検証に必要な測定、分析を行います。
⑤ 事業計画及び品質目標を達成するために、必要な改善処置をとります。
⑥ 確立したマネジメントシステムの運用状況を文書により記録するとともに、その記録を民間教育訓練機関の講師及びスタッフがいつでも閲覧できる手順を確立します。
⑦ 民間教育訓練機関の関係者に対して、当該マネジメントシステムが理解されるよう部内説明会又は部内研修等による必要な周知を行います。
(運営に関わる関係者の例)
ア 民間教育訓練機関の管理者
イ 講師
ウ カリキュラムやテスト等の設計者
エ 組織内の関係スタッフ 等
4.2 事業戦略及び計画
【指針】
民間教育訓練機関は、マネジメントシステムを運用するに当たり、事業計画を策定し、文書により記録する。事業計画には、経営理念と経営方針及び経営目標、経営組織の説明、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)を提供する上で重要な民間教育訓練機関の品質方針を記述する。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
事業計画を作成するに当たり、以下の項目を参考とし、事業計画の内容を検討します。
(項目の例)
① 提供する職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の信頼性と品質を向上させるための経営理念と経営方針及び経営目標
② 経営理念と経営方針及び経営目標を具現化するために策定された品質方針
(品質方針策定の視点例)
ア 職業訓練サービスを利用する受講者、事業所側からの視点
イ 蓄積された知識やノウハウ等を組織全体で共有、活用するナレッジマネジメント(※)の視点
ウ 講師及びスタッフの人材育成の視点エ 業務プロセスの視点
オ 財務及び収支の健全性との均衡等の視点 等
※ ナレッジマネジメント:知識を共有して活用することで、新たな知識を創造しながら経営を実践すること。
③ 経営理念と経営方針を達成するための経営戦略の策定とその見直し期間(見直し間隔)、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の品質方針を担保するための見直しや改善の実施状況の公表
④ 定期的な市場分析を踏まえた職業訓練サービスの動向に対応した事業分野の特定等
(市場分析の例)
ア 産業又は業種ごとの職務と仕事の実態及び訓練ニーズ
イ 地域の雇用失業情勢
ウ 他の民間教育訓練機関の同一職業訓練サービスへの参入又は撤退等の状況等
エ 職業訓練サービスを提供するための組織及び運営構造
オ ニーズ分析、事業企画、職業訓練サービスの提供、評価等を含む、職業訓練サービスを提供する上での重要なプロセスとその指標
カ 職業訓練サービスに関する関係者と協力するためのネットワークの構築
キ 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)を提供するための業務委託計画 等
4.3 マネジメントシステムに関する情報の共有等
【指針】
民間教育訓練機関は、講師及びスタッフ(協力者を含む)に対して確立したマネジメントシステムを説明し、その運用の改善に関する意見を求めるための仕組みと手順を明確にする。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
マネジメントシステムについて、講師及びスタッフ(協力者を含む)にその内容を説明するとともに、その運用の改善に関する意見を求めるための手順を、以下の項目を参考にして確立します。
(1) 意見提出の機会の設定
職業訓練を円滑に進めるために、内部及び外部に対して、定期的及び必要に応じて会議等を開催する等、情報の共有や改善に関する意見の提出の促進を図ります。会議は、開催ごとに目的及び目標を明確にした上で、単なる報告会とならないように留意し、議論する事項の整理や絞り込みを行います。緊急を要する場合を除き、事前に議題の案内と関係資料の情報提供を行います。
提供した情報を補完して業務の効率化を図るために、関係者が容易に確認することができる掲示板や予定表等を活用して確実に連絡できる仕組みを準備します。
(2) 意見提出の効率化及び円滑化
必要に応じて、相互に情報を交換できる通信ネットワーク等を構築し活用する等、マネジメントシステムに関する円滑な情報交換を可能とする環境整備に努めます。
(3) 公平かつ平等な意見提出の機会の提供
意見提出の機会は、組織内の講師及びスタッフ等の関係者に公平かつ平等に提供します。性別等による差別を排除し、関係者の間で差別感がないよう配慮します。
4.4 記録及び文書管理
【指針】
民間教育訓練機関は、ガイドラインの適用及び遵守の状況を文書により記録するとともに、講師及びスタッフ(協力者を含む)による閲覧手順を確立し、文書管理に関する必要な事項を定めた規程等を作成する。
また、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)を利用する受講者及び受講者が所属する事業所等に関する様々な情報を記録するとともに、それらの情報の適切な管理を行う。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
(1) このガイドラインの適用状況等を文書により記録し保存する手順を確立します。
※ 文書管理の手順は、過去の対応状況等を残しておくツールであるとともに、PDCAサイクルの構築の効果的な推進のためのツールとしても活用することできます。
(2) 記録及び管理している文書は、民間教育訓練機関の講師及びスタッフ(協力者を含む)が、いつでも閲覧できる手順を確立します。
(3) 文書管理に関する必要な事項を定めた規程等を作成しておきます。
(4) 3.1 職業訓練のニーズ等の明確化」、「3.3 職業訓練サービスの実施」、「3.4 職業訓練サービスのモニタリング」及び 「3.5 職業訓練サービスの評価」で入手又は取得した受講者及び受講者が所属する事業所等の情報は、個人情報の保護等に関する法令を遵守するとともに、保有個人情報を適切に管理し、個人の権利利益を保護します。
4.5 財務管理及びリスク管理
【指針】
民間教育訓練機関は、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の提供に関連する事業の継続性を確実なものとするため、以下のことを実施し、文書により記録する。●財務管理
① 職業訓練サービスに係る財務状態及び運営状況の透明性の確保
② 財務を管理するための仕組みの確立及び適切な運用●リスク管理
リスクを管理するための仕組みの確立及び適切な運用出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
(1) 財務管理
① 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講)に係る財務状態及び運営状況を明らかにし、適正かつ効率的な業務を運営するため、民間教育訓練機関の会計規程等において、財務及び会計に関する基準並びに会計責任者の設置等の必要な事項を定めます。
② 会計責任者は、当該会計規程等に基づき、職業訓練サービスに係る財務及び会計に関する事務を適切に行うとともに、帳簿等に必要な事項を整然かつ明瞭に記録及び保存します。
(2) リスク管理
職業訓練サービスの提供が継続できなくなる主な原因(自然災害や事故又は犯罪の発生、インフルエンザ等の疾病の伝染等)を把握した上で、現状の対策について検証し、改善するための優先順位を割り振ります。
割り振られた優先順位にしたがって、各リスクに対応するための適切な改善方策を講じる手順を確立し、危機管理マニュアル等を定めます。
4.6 人事管理並びに人的及び物的資源の管理
4.6.1 人事管理並びに人的及び物的資源の選択、配分及び配置
【指針】
民間教育訓練機関は、受講者や事業所等のニーズ、その他多様なニーズにも配慮しながら、必要な講師及びスタッフ(協力者を含む)並びに職業訓練サービスの提供のための人的及び物的資源を選択、配分及び配置する手順を確立するとともに、当該人的及び物的資源の維持又は管理を行う。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
1.講師やスタッフ等の配分及び配置については、個々のニーズや訓練効果も考慮し、適正な人的及び物的資源を配分するとともに、その手順に従って配置します。また、提供する職業訓練サービスによっては、受講者のニーズが多様化する場合もあるため、必要に応じて以下の例に配慮して配分及び配置します。
(多様なニーズの例)
① 言語に関するニーズ
② 文化に関するニーズ
③ 読み書き能力に関するニーズ
④ 家庭環境(母子家庭等)に関するニーズ
⑤ 障がいに関するニーズ 等
※ 関連事項として「3.1.1 ニーズ等の把握」の【指針の補足説明】の(4) を参照してください。
2.人事管理については、必要な講師やスタッフの役割と、その役割を担うための能力要件を明確にし、要件を満たす人材を確保し、より効果的な職業訓練サービスを提供できるよう、人材の採用を計画して実行するとともに、実態を評価して必要に応じて改善に努めるようにします。そのため、要件を満たす人材の確保、定期的な能力の測定、能力の開発等、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の質を向上させるための人材の能力等の管理、人材育成の手順を確立します。
3.施設及び設備、機器等の配分及び配置については、上記(1)と同様に個々のニーズと訓練効果を考慮して配分及び配置します。このため、必要な施設、設備及び機器等の管理方法と効果的かつ効率的な運用を確立します。なお、設備及び機器については、労働安全衛生法等の安全衛生に関する法令に基づいて配分及び配置します。
4.また、利用者が直接使用する教材等についても個々のニーズと訓練効果を考慮することはもちろんですが、ほとんどの場合、受益者負担となる場合があり、教材のコストにも配慮した教材の作成方法、配布の基準を定めておきます。
(つづく)平林良人