厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。
●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」
3.4 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)のモニタリング
【指針】
民間教育訓練機関は、事前に定めた方法を用いて、訓練期間中及び訓練修了後に、受講者の職業能力の習得状況や受講状況を確認する。また、受講者等との意見交換等を行う。出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
(1) 「3.2.2 モニタリング方法の明確化」にて検討したモニタリング方法に基づき、ニーズ等を踏まえて作成したカリキュラムの訓練目的又は目標に対する職業訓練サービスの効果を確認します。また、訓練期間中は訓練日誌等を活用して、受講者の職業能力の習得状況を確認し記録します。
習得状況を確認した記録は、「3.5.2 職業訓練の効果の評価」において活用します。
(習得状況を把握する項目の例)
① 指導項目ごとの受講者の反応、理解状況
② 必要に応じて実施した小テストの記録
③ 演習課題、実習課題の取組状況
④ 受講者がつまずきやすい箇所とその理由
⑤ 受講者のコメント
⑥ 受講者との意見交換の要点
(2) 欠席、欠課、遅刻、早退等、受講者からの連絡、報告、相談に関する規則、報告又は届出様式を示して受講者とのコミュニケーションが図れるよう工夫するとともに、受講者の受講状況を記録します。また、その状況に応じて必要な指導又は面談を実施します。
記録した受講状況は、「3.5.3 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の効果の評価」において活用します。
(3) 受講者の目標達成における職業訓練サービスの効果を確認するため、以下の例を参考に、職業訓練サービスの提供中や受講修了後の適切な時期に、「3.2.2 モニタリング方法の明確化」で明確にした方法により受講者から意見を聴取することとし、その方法の伝達とともにあらかじめ受講者に協力を依頼します。
収集した情報は、上記(2)と同様に 「3.5.3 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の効果の評価」に活用するするほか、「4.7.1 受講者等からの意見及び要望等への対応」の情報と統合し、改善の材料としても活用します。
(収集する意見の例)
① 受講者の反応、受講者から職業訓練の感想の他以下の項目についてのアリング(職業訓練の満足度)
・講師の指導方法又はスタッフの対応
・カリキュラム(難易度、訓練期間)
・訓練環境(施設、設備及び機器、教材等)
・訓練以外の支援策 等
② 受講した職業訓練の内容をどれだけ理解し習得したかの確認(職業訓練の習得度)
③ 受講者の職場における行動の変化を測定し、その行動が現実に職場でどの程度行われているかの確認(職場での活用度)
④ 受講者の行動の変化が、就業している事業所等にもたらした成果の達成度合いの確認(職場での成果)
3.5 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の評価
3.5.1 評価対象及び評価指標等の設定
【指針】
民間教育訓練機関は、職業訓練サービスの評価の実施に当たり、以下の項目を設定し、評価を実施するための情報を整理する。●評価を実施する際の要件、評価対象及び評価指標
●評価方法等
●測定及びその評価情報(評価データ)の性質
出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
1.評価を実施する際の要件、評価対象及び評価指標
評価を実施する際の要件、評価対象及び評価指標を、以下の例を参考に設定します。
(評価を実施する際の要件の例)
① 評価を実施する対象、評価指標の選定と目的、想定される評価範囲(職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)全体、訓練コース、受講者、講師又はスタッフ等)の明確化
② 評価の実施そのものが目的にならないよう評価結果の活用範囲及び活用場面の十分な検討と具体的な評価目標値の明確化
③ 設定された評価指標ごとの測定及びその評価担当者、直接の管理責任者、評価結果によって影響を受ける関係者の明確化
(評価対象及び評価指標の例)
① 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)全体に係る評価指標
分野ごとの定員に対する応募者数、応募率、分野ごとの求人数及び就職率並びに関連就職率、職業訓練サービス全体の受講者の満足度等
② 訓練コースに関する評価指標
定員数に対する応募率、受講率、修了率、修了者数等に対する就職率、定着率、満足度、資格取得率等
③ 受講者に対する評価指標
満足度、習得度、活用度、資格取得等の有無、欠席、欠課、遅刻、早退の回数及び時間数、出席率等
④ 講師及びスタッフ等の評価指標満足(指導力、対応力等)等
2.評価方法等
上記(1)で設定した評価指標ごとに評価を実施するに当たり、評価目的に沿った評価結果が得られるように以下の例を参考にして、方法や手順等の仕組みを明確にします。
(評価の仕組みの例)
① 評価方法、評価手順、評価項目及び評価基準の設定
② 評価目的に適した評価項目の選定と評価の実施時期の設定、評価計画及びスケジュールの策定
③ 評価に偏りが発生しない手順、評価を実施する際の留意事項等の検討
④ 評価者は公平かつ平等であり、評価する分野について十分な知識を備え客観的に評価する能力を有する者である根拠
⑤ 上記①~④を見直す仕組み
3.測定及びその評価情報(評価データ)の性質
評価のために測定又は収集した評価データ及びその他の評価に係る情報について、以下の例を参考にして、留意事項を明確にします。
(留意事項の例)
① 評価を行う対象ごとに設定された指標及び想定される評価範囲を踏まえ、適切かつ十分な評価が可能な評価データであるかの確認② 受講者のニーズ等に対する適切な対応を可能とするための評価結果であるかの確認
③ 評価データ等の信頼性と適切な根拠があるかの確認
④ 系統的かつ正確な分析であるかの確認
⑤ 評価データの閲覧権限の設定、管理方法は適切であるかの確認
⑥ 情報漏洩に対する対応策は適切かの確認 等
【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
・ 訓練に係る目標資格等の取得状況や受講者の就職状況を把握することにより、自らが提供する訓練の効果を検証すること
3.5.2 職業訓練の効果の評価
【指針】
民間教育訓練機関は、受講者に対して、以下の項目について、職業訓練の効果に関する測定を実施して評価を行う。
(1) 職業訓練の習得度
(2) 職業訓練の効果及び成果等出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
(1) 職業訓練の習得度
受講者ごとに訓練目標の達成状況を評価するため、職業訓練の習得度の測定を実施します。以下の例を参考にして、習得度の測定の実施に関する留意事項を明確にします。
(留意事項の例)
① 「3.5.1 評価対象及び評価指標等の設定」を参考に、習得度の測定を行う評価者を特定し、客観的で公平かつ平等な評価、適切な評価を実施できるよう評価者に必要な研修を実施(なお、職業訓練の一部を外部に委託する場合、委託先の責任者に評価者の要件を提示し、評価に係る能力を有している者の選任を依頼する。また、必要に応じて、評価者研修の受講の機会を提供する。)
② 必要に応じて複数の評価者を選任
③ 習得度の測定は、受講者による自己確認とともに講師等による客観的評価を実施(特に、評価担当者が複数の場合、評価者によって評価に違いがでる等の客観性が欠けることがないように研修等を実施する。)
④ 職業訓練で習得した技術や知識を測定するために、訓練受講前に受講者の有する職業能力の確認を実施
⑤ 職業訓練の途中の適切な時期に訓練科目(学科、実技等)ごとの訓練目標への到達状況が把握できる評価項目及び評価細目を設定(職業訓練によって習得した職業能力(専門的知識、技能及び技術、態度等)の習得度を測定し、職業訓練の進捗管理を行うとともに、記録した結果と受講前に有していた職業能力との差を確認する。)
⑥ 評価の結果は、適切な形式で記録及び管理し、閲覧権限を設定して、許可なく開示、漏洩されることがないように留意
⑦ 評価の結果は、可能な限り社会的通用性がある形式で作成
⑧ 訓練期間中において評価を実施した際に、評価の結果から受講者の目標達成の見通しや今後の訓練進捗度等に支障が発生する可能性が認められる場合には、必要に応じ受講者や関係者からの意見を踏まえ、速やかに対応策を検討
⑨ 職業訓練の習得度の結果については、受講者自身が持つ要素以外にも、受講環境や他の受講者の影響等、受講者に影響を及ぼしている他の要素の有無についても検証
(2) 職業訓練の効果及び成果等
上記(1)で測定した習得度以外の評価についても、「3.5.1 評価対象及び評価指標等の設定」で設定した受講者の評価指標ごとに、訓練効果及び成果等に関する評価を行います。以下の例を参考にして、評価の際の留意事項を明確にします。
(留意事項の例)
① 「3.4 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)のモニタリング」で記録した欠席、欠課、遅刻、早退等の回数、出席率について評価を行う。
② 職場での活用に関する訓練効果は客観的評価を行い、必要に応じて受講者の職場でのヒアリングを行う。
③ 職業訓練の過程又は訓練修了後に取得した資格等の取得状況、合格率等について評価を行い、必要に応じてその成果を公開する。
④ 習得度の測定及び収集情報(評価データ)の取扱いは、上記(1)及び「3.5.1 評価対象及び評価指標等の設定」を参考にして、それらの根拠、信頼性が活用するに十分であるかを検証する。
【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
・ 訓練の結果として習得された技能及びこれに関する知識について、適切な時期に評価を行うこと。求職者支援訓練(求職者支援法に基づく認定職業訓練)の実施者においては、その結果をジョブ・カードの評価シートに記載すること
3.5.3 職業訓練サービスの効果の評価
【指針】
民間教育訓練機関は、以下の項目に留意して、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の効果や品質に関
する評価を行う。
(1) 職業訓練サービスの評価担当者の選任又は育成
(2) 職業訓練サービスの効果の測定及び評価出典 URL:2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
(1) 職業訓練サービスの評価担当者の選任又は育成
民間教育訓練機関の職業訓練サービスの責任者は、の「3.5.1 評価対象及び評価指標等の設定」で設定した職業訓練サービスの評価指標ごとに適切な評価が可能となるよう、客観的な評価を行うことができ、かつ訓練内容に精通した評価担当者を選任又は育成する手順を明確にし、評価担当者を任命します。
(評価担当者の例)
① 経営層
② 部門長、マネージャ
③ 施設責任者
④ 上記以外の民間教育訓練機関関係者 等
上記の評価担当者は、それぞれの立場から評価の観点や評価基準に基づき、職業訓練サービスの効果を総合的に評価します。必要に応じて、2者以上の複数評価を行い、より確実かつ客観的な評価が実施できる仕組みを構築します。
評価担当者が評価に関する必要な知識及び評価能力を備えるために研修を計画的に実施します。
(2) 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の効果の測定及び評価
職業訓練サービスの効果の測定及び評価に当たり、評価項目ごとに民間教育訓練機関内で統一した評価目標、評価の観点及び評価基準を設定し、評価担当者によって測定及び評価を行います。その際は、評価指標ごとに数値化された評価結果を単純に評価するのではなく、以下の例を参考にして留意事項を明確にします。
(留意事項の例)
① 評価指標に影響を及ぼす外部要因との関連性
例:受講者の就職率に影響を及ぼす項目
提供した職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の地域における業種又は職種等の有効求人倍率、求人事業所数、求人事業所の人材ニーズ、求職者ニーズ、景気動向等
② 評価指標ごとの過去のデータの推移表
③ 評価指標ごとに講じた過去の改善策等
④ 評価結果から的確な課題や問題点を抽出するための他の評価指標との関連性
例:就職者数を分析する場合、コースの定員数、応募者数、受講者数、資格取得者数等の数値が影響を及ぼしていないかを分析し、課題や問題点の本質を抽出
⑤ 選任された評価者のコメントの記載方法
⑥ 評価結果の効果的かつ効率的な分析手順及び報告書様式の定型化又は標準化
(つづく)平林良人