厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。
●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」
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3.1.2 把握したニーズ等の取扱い上の留意点
【指針】
民間教育訓練機関は、具体的な訓練コースの設定に当たり、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の品質に関する基本理念、品質方針及び品質目標を踏まえ、以下の点に留意する。
●把握したニーズ等の分析結果の活用
●ニーズ等を踏まえた課題及び問題点の把握
●ニーズ等を踏まえた訓練方法、訓練教材及び訓練成果の検討
出典 2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
(1)把握したニーズ等の分析結果の活用
(求職者に対する職業訓練の場合)
求職者に対する職業能力の向上、職種転換の支援等、外部労働市場における円滑な労働力の移動に役立つ観点を持ちながら、雇用のセーフティネットとして求職者の早期の就職を促進することを目指して訓練コースの設定又は開発に活用します。具体的には、ニーズ等の分析結果から訓練コースを設定する職種又は職務に求められる専門知識並びに技能及び技術と就業する際の基本能力について、可能な限り採用する事業所側の人材ニーズとのマッチングが容易となる訓練目標を設定します。
(在職者に対する職業訓練の場合)
ニーズ等の分析結果を踏まえて、職業訓練の成果及び効果の影響を受ける事業所等の生産性の向上、現場の課題解決、競争力強化に役立つような訓練目標を設定するとともに訓練目標を達成できるよう訓練内容等を検討し、在職者の職業能力の向上を図ることを目指します。とりわけ、オーダーメイドの職業訓練の場合は、事業所等との十分な協議を踏まえて、事業所等が求める人材像及び職業能力とマッチングするよう配慮して訓練コースを設計します。
(2) ニーズ等を踏まえた課題及び問題点の把握
訓練コースの設定から訓練の実施及び評価に至る職業訓練のプロセスごとに、ニーズ等を踏まえた課題及び問題点を把握する手順について、以下の例を参考にして明確にしておきます。
(課題及び問題点を把握する手順の例)
① 職業訓練の受講に際して、受講者が備えていることが望ましい知識、技能及び技術等の確認
② 受講者に求められる実務経験、保有資格などの具体的な要件等の確認
③ 訓練期間中における受講者の職業能力の習得状況及び要望等の把握
(3) ニーズ等を踏まえた訓練方法、訓練教材及び訓練成果の検討
ニーズ等を踏まえて設定した訓練目標の達成を目指して、訓練期間、訓練方法、訓練課題、訓練教材等を工夫し、訓練成果を高めます。とりわけ、訓練修了時の成果を意識し、以下の例を参考にして、受講者及び受講者が所属する事業所等にとって具体的で分かりやすい訓練成果の提示について配慮します。
(分かりやすい訓練成果の例)
① 受講者が受講により取得等が可能である資格及び技能等
② 訓練中に制作する課題(実務で活用できる成果物)
設計図面、構造物、製品、制御回路、制御プログラム、受発注及び経理処理等プログラム、企画書等の見える成果物 等
【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
●職業訓練は、事業所、受講者等へのヒアリング等を踏まえ、就職のために必要な技能及び知識が習得できるように検討して設定すること。
●訓練の実施方法は、訓練により習得できる内容(仕上がり像)に到達するために必要な水準(カリキュラム、訓練時間等)であり、かつ、その教材等は訓練の内容との整合性がとれており、必要なものに限定するとともに、低廉な価格となるように留意すること。
●必要に応じ、関連する資格や免許に関する情報、受講修了者の体験談の提供等の支援措置を含むものとすること。
●障がい者等の訓練実施に際し配慮が必要となる者に対して訓練を実施する場合は、障がい者等の個々の特性に応じた内容とすること。
●カリキュラムの策定に際しては、必要に応じ、独立行政法人高齢・障害・求職者 雇用支援機構の職業能力開発総合大学校が提供するカリキュラムモデル等も参考とすること。
3.2 職業訓練サービスの設計
3.2.1 職業訓練サービスの目的及び範囲の明確化
【指針】
民間教育訓練機関は、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の設計に当たり、把握したニーズ等とその分析結果を踏まえ、提供する職業訓練サービスの受講要件、具体的な目的等を設定する。また、利用者が適切な職業訓練サービスを選択できるようにするため、職業訓練サービスが対応できる範囲の情報及び相談援助の機会の提供方法を明確にする。
【指針の補足説明】
1.求職者や在職者等の受講希望者や事業所等の職業訓練サービスの利用を希望する者(以下「職業訓練サービス利用希望者」という。)が自らの要望に応じた職業訓練サービスを的確に選択できるよう、また、職業訓練サービス利用希望者のニーズ等に対応した職業訓練サービスが提案できるよう、以下の項目例を参考にして、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の目的及び対応できる範囲を明確にします。
(職業訓練サービスの目的及び対応できる範囲の例)
① 職業訓練サービスの対象者(求職者、在職者、その他具体的な対象者)
② 職業訓練サービスの目的、訓練目標、訓練内容、成果等
③ 目的を変えない範囲内での訓練コースの内容の変更に対する対応の可否等
④ 民間教育訓練機関が設定した範囲に対する柔軟な対応の条件 等
2.職業訓練サービス利用希望者と職業訓練サービスのマッチングは、職業訓練サービスの有効活用と訓練効果を高めるために重要なことです。そのために、民間教育訓練機関は、職業訓練サービス利用希望者が目的に合った適切な訓練コースを受講できるようにするため、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の目的や範囲等の必要な情報を、分かりやすく提供する工夫をします。
また、職業訓練サービス利用希望者に対して、民間教育訓練機関との相互理解等が可能となる相談援助の窓口を設定する等、職業訓練サービスに関する相談援助の機会を提供する工夫をします。
3.2.2 モニタリング方法の明確化
【指針】
民間教育訓練機関は、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の設計に当たり、訓練目標の達成に向けて、効果的かつ効率的な職業訓練の促進及び支援方法の準備や見直しを行うために、職業 訓練の効果や成果の活用に関する事前評価の方法、訓練期間中のモニタリング方法、 訓練修了後の評価方法を明確にする。
【指針の補足説明】
職業訓練サービスの設計に当たり、職業訓練を効果的かつ効率的に実施する方法 を検討し明確にします。職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)を提供する前に、事業所等の関係者に対して、事業所等が期待する職業訓練の効果やその成果等を確認する方法を、以下の例を参考にして明確にします。
(確認する方法の例)
① 民間教育訓練機関の担当者が事業所等に訪問し事業所等の採用又は人材育成担当者に個別に確認する。
② 事業所等の関係者を交えた検討会議を開催する。
③ 事業所等の関係者あてにアンケート調査を行う。
受講者の訓練目標に対する到達状況を訓練期間中に把握するため、受講者に対する意見聴取や職業能力の習得状況の確認等のモニタリング方法を、以下の例を参考にして明確にします。なお、受講者に対して事前に十分な説明を行うとともに、受講者の同意を得ておくことが必要です。
(意見の聴取方法の例)
① 面談によるヒアリング
② 郵送や電子メール等も含めた書面によるアンケート調査
③ Web 上でのアンケート調査
④ 電話による聞き取り調査等
(職業能力の習得状況の確認方法の例)
① 日々の受講状況(出席状況、受講態度等)
② カリキュラムに組み込まれた小テスト、課題等の成績
③ 模擬試験等の結果
④ 訓練期間中に受講者が制作した成果物等
各受講者が職業訓練で習得した職業能力の活用状況を確認する方法については、上記の例を参考にして明確にします。
【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
受講者の知識や技能、実務経験、受講動機等に関する情報を入手するため、ジョブ・カードの有無を確認し、ジョブ・カードを所有している受講者には受講者の承諾を得てその内容の確認を行うこと。
ジョブ・カードを所有していない受講者に対しては、キャリアコンサルタントがキャリア・コンサルティン グを実施し、ジョブ・カードを作成して交付すること(求職者支援訓練(求職者支 援法に基づく認定職業訓練)は訓練実施者によるジョブ・カードの交付は必須であり、公共職業訓練(委託訓練)も平成 24 年度以降から順次必須となる予定である。)
職業訓練の修了時に、当該職業訓練の受講者が保有する技能及び知識が修了に値するか否かを確認すること。
3.2.3 カリキュラムの作成と見直し
【指針】
民間教育訓練機関は、以下の事項に留意して、カリキュラムの作成と見直しを行う。
●職業訓練サービスの目的又は目標の設定等
●カリキュラムに適した訓練方法の設定
●職業訓練の支援方法
●関係者の役割及び責任
●カリキュラムを改善する手順
出典 2r985200000277tu.pdf
【指針の補足説明】
1.職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の目的又は目標の設定等
カリキュラムの作成に当たり、職場での職務又は仕事の内容、習得することが期待される職業能力、過去に実施した類似の職業訓練の成果等の情報を踏まえ、職業訓練サービスの目的又は目標を設定するとともに、以下の例を参考にしてカリキュラムを作成します。
(カリキュラムの記載項目の例)
① 訓練科の名称
② 想定する訓練成果(習得する能力、習得する資格等)を活用する職務や仕事等の仕上がり像
③ 訓練期間、訓練時間(学科総時間、実技総時間、訓練期間中の総訓練時間)
④ 訓練定員
⑤ 受講要件
⑥ 訓練目標(訓練コース修了時の目標、科目ごとの到達目標等)
⑦ 成績(受講効果等)の評価の方法及び基準
⑧ 学科及び実技の科目リスト並びに各々の訓練内容、訓練時間
⑨ 職場実習の有無
⑩ 訓練形態
⑪ 指導方法
⑫ 使用教材、設備及び機器等
⑬ カリキュラムに付随する各種訓練計画の作成
・訓練実施計画予定表(日別)
・直接訓練を担当する講師のリストと担当科目及び期間
・職業訓練を支援するスタッフのリスト等
2.カリキュラムに適した訓練方法の設定
カリキュラムを作成する際には、職業訓練の目的又は目標を達成できるよう、以下の例を参考にして訓練方法を設定します。
(訓練方法の設定の例)
① 受講者の様々なニーズと適性等を考慮して訓練方法(グループ学習、プロジェクト方式の課題研究発表等)を選択する。
② 訓練コースの内容に応じて、学科、実技、職場実習を組み合わせる。
③ 事業所等の実務に沿った訓練課題を設定する。
④ 受講者の習得度、訓練成果を確認するためのモニタリング方法を明確にする。
⑤ 受講者が利用する施設、設備及び機器等の環境を整える。
⑥ 職業訓練の実施に際しては、訓練効果を高めるため、必要に応じ、自習、受講者間のグループ演習や相互交流(集団での経験交流、意見交換等を通じた訓練手法)の場を設定する。
3.職業訓練の支援方法
訓練修了時に職業訓練の目的又目標が達成できるよう、モニタリングの結果を踏まえた追加指導等の支援方法を、以下の例を参考にして明確にします。
(職業訓練の支援方法の例)
① 訓練コースの科目ごとに設定した訓練目標に未到達の受講者に対して、安全衛生に十分配慮することを前提として、自習の環境を提供する。
② 必要に応じて、補習又は補講等を開催する仕組みを整備する。
③ 求職者に対する訓練コースの場合は、訓練期間中及び修了後 3 ヶ月間のキャリア形成支援、就職支援の方法を明確にする。
4.関係者の役割及び責任
カリキュラムの作成に伴い、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の提供を確実に行うため、以下の例を参考にして、民間教育訓練機関を含む関係者(受講者及び受講者が所属する事業所等)ごとの役割や責任を明確にします。
(役割と責任の例)
① 民間教育訓練機関の管理者(責任者)は、受講者が備えていることが望ましい知識や技能等、職業能力の習得状況、修了後の職場での訓練成果の活用状況を把握するため、民間教育訓練機関の講師(指導員)やスタッフの役割分担を定めて、確実にモニタリング等が実施できる体制を整える。
また、必要に応じて、受講者及び受講者が所属する事業者等に対して記録した情報を提供する。
② 受講者は、原則として、欠席、欠課、遅刻、早退をせずに、訓練コースの目的又は目標の達成を目指して受講し、必要に応じて実施されるアンケート調査に協力する。
③ 受講者が所属する事業所等は、職業訓練のニーズの把握、訓練成果の活用状況等について、ヒアリング及びアンケート調査に協力する。
④ 民間教育訓練機関の講師は、職業訓練の指導はもとより、訓練期間中の受講状況等についてモニタリング及び評価を行い、必要事項について記録する。
⑤ その他、キャリア形成支援及び就職支援スタッフの役割の明確化 等
5.カリキュラムを改善する手順
「3.2.2 モニタリング方法の明確化」で設定したモニタリング方法によって得られた結果や 「4.7.4 マネジメントシステムの点検」の結果を踏まえる等、訓練方法や評価方法等を含めてカリキュラムを改善する手順を明確にします。
【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
訓練期間、訓練時間、訓練方法、訓練内容(教科)、受講者数について、公的職業訓練の受託等のための基準に従い、作成されたものであること
(例)訓練期間(3 ヶ月以上 6 ヶ月以下)、訓練時間(月 100 時間以上)、訓練方法、受講者数(1 コース概ね 10 人~30 人)等訓練期間中及び訓練修了後の就職支援を行うこと。
(つづく)平林