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基礎編・理論編

民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン

投稿日:2024年12月17日 更新日:

厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。

以下、厚労省「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン(以下ガイドライン)」を紹介していきます。
厚労省のガイドラインは次の取り組みを目指す民間教育訓練機関を対象としています。
① 職業訓練サービスの質の向上
② 職業訓練サービスの質保証の見える化(可視化)
③ 公共職業訓練(委託訓練)及び求職者支援訓練(求職者支援法に基づく認定職業訓練)(以下「公的職業訓練」という。)等の受託等
④ ISO29990の認証取得 等

このガイドラインの各項は「指針」と「指針の補足説明」、「公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例」で構成されており、各項で示す取り組みを参考として、受講されるキャリアコンサルタントを目指す人々に提供するサービス(職業訓練を含む)の質を向上させる指針として活用することを目指しています。
●「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン」
URL:サイト内検索結果|厚生労働省
2r985200000277tu.pdf

(1)ガイドライン本文について
① 「指針」について
その項において「最低限何をしたらよいか」という基本的な取り組みについて簡潔に提示しています。
② 「指針の補足説明」について
「指針」において提示した取り組みについて、どのように取り組めばよいのかを具体的に提示しています。職業訓練サービスの質を向上させるために、このガイドラインに例示されている具体的な方法を参考にして、民間教育訓練機関ごとの実情に応じた取り組みをすることを目的にしています。
③ 「公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例」について
「求職者支援訓練(求職者支援法に基づく認定職業訓練)」、「公共職業訓練(委託訓練)」及び「教育訓練給付制度(指定講座)」の認定基準等でそれぞれの制度ごとに基準がありますが、これらに共通する基準に関して認定等を得るための取組例を紹介してします。

(2)その他の記載内容について
① このガイドラインは、適正な管理と運営の基本ルールとしてPDCAサイクルの採用を前提としています。同時に民間教育訓練機関が受講者に提供する職業訓練サービスの一連の流れにおいても、PDCAサイクルは大いに活用できます。PDCAサイクルを活用した職業訓練の全体像を把握すると良いと思います。
② 民間教育訓練機関において実際に取り組まれてい る職業訓練サービスの質の向上のための実践例等を掲載しています。各民間教 育訓練機関が取り組む内容は、それぞれの業種及び業態に合わせた手法のため、全ての実践例が各民間教育訓練機関に適用可能なものではありません。ただし、参考例の中には、更なる職業訓練サービスの質を向上させるための取り組みを 具体化する手がかりも含まれています。
③ 民間教育訓練機関が自らの職業訓練サービスの内容について自己診断を行い、職業訓練サービスの改善のために、改善が必要な事項の「見える化」を行うことを目的とした自己診断表を掲載しています。

<適用範囲>
このガイドラインの適用範囲は職業訓練サービスを提供する民間教育訓練機関とします。
<関連文書>
国際標準化機構(2010)『ISO29990(非公式教育・訓練における学習サービス— サービス事業者向け基本的要求事項)』
用支援機構 (2011)『高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施する教育訓練サービスに関するガイドライン - 教育訓練ガイドライン』
2.1 用語の定義
このガイドラインにおいては、以下の用語の定義を適用します。
2.1.1 職業訓練サービス
業務遂行や就職するために必要な専門知識並びに技能及び技術等の習得を可能にするために設計されたプロセス又一連の活動。
2.1.2 民間教育訓練機関
あらゆる規模の民間の組織又は個人で、職業訓練サービスを提供する者。職業訓練サービスの提供に関与する全ての協力者を含む。
2.1.3 協力者
民間教育訓練機関に雇用されていないが、職業訓練サービスを提供するために民間教育訓練機関の傘下で働いている外部の団体又は外部の委託講師や派遣社員等が該当する。
2.1.4 事業計画
提供する職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)全般の事業目標を達成するための行動計画。
2.1.5 ニーズ
事業所や労働者又は求職者が、それぞれの立場や境遇において必要としている職業に関する要素、需要、要望。
2.1.6 カリキュラム
民間教育訓練機関によって作成された訓練計画で、職業訓練サービスに係る目的、内容、訓練成果、指導方法や専門知識並びに技能及び技術の習得方法、評価プロセス等を記載したもの。
2.1.7 講師
受講者に対し直接的又は間接的に指導をする者。民間教育訓練機関によっては「講師」以外に「指導員」、「インストラクター」、「教員」等が該当するが、このガイドラインにおいては「講師」とする。
2.1.8 スタッフ
職業訓練サービスを提供することを支援するための人材。管理者、キャリア・コンサルタント、カウンセラー、窓口担当者、設備担当者等も含まれる。
2.1.9 モニタリング
観察し、記録すること。
2.1.10 マネジメントシステム品質に関する方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステム。
2.1.11品質方針
品質に関する組織としての全体的な意図や方向性のことで、経営陣によって正式に示されたもの。
注記 通常、品質方針は、組織の全体的な方針との整合がとれており、品質目標を設定するための枠組みを与える。

3.職業訓練サービス
職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の質の向上を目指すための具体的な取り組みをついて示します。
3.1 職業訓練のニーズ等の明確化
3.1.1 ニーズ等の把握
【指針】
民間教育訓練機関は、質の良い職業訓練サービスを設計又は開発して提供するに当たり、職業訓練サービスに関する以下のニーズ等の把握等を行う。

  • 経済及び雇用失業情勢、産業構造等の社会動向の把握
  • 事業所等のニーズの把握
  • 受講予定者等のニーズの把握
  • 多様なニーズ等の把握
  • 「ニーズ等の把握」に関する管理

出典 2r985200000277tu.pdf

(1) 経済及び雇用失業情勢、産業構造等の社会動向の把握
新聞、雑誌及びインターネットあるいは関係行政機関との連携等を通じて、景気動向、市場動向、技術動向、資格等の動向、法改正の状況等や雇用失業情勢(失業率、有効求人倍率、求人件数、就職率、待遇や処遇等)等の社会動向に関する情報を把握します。

(参考とする情報の例)
① 国及び都道府県の雇用対策、各種統計情報及び調査報告書等
② ハローワーク等の統計情報、求人及び求職情報
③民間研究機関等の業況レポート、産業別情報    等

(2) 事業所等のニーズの把握
地域の業界団体(経営者協会、商工会議所等)や事業所等の人事担当者又は実務担当者(研修担当者も含む)等に対するヒアリングやアンケート調査により、ニーズを把握します。
また、職業訓練サービスを受託し又は職業訓練サービスの一部を委託する場合は、当該職業訓練サービスの関係者と協議し、具体的な目的、要望、最終目標及び要件を明確にします。

(事業所等のニーズの例)
① 採用又は雇用継続を希望する(採用又は雇用の継続の可能性の高い)人材像、就業するに当たり必要とされる基礎能力及び専門能力、人材の過不足感、採用動向及び計画等
② 受講者が就業するに当たり、業界団体や事業所等が要望する職業訓練の最終目標、開発又は養成したい職業能力、職場での職業能力の活用方法等
③ 個別の事業所や地域の業界団体等における在職者に対する研修計画、研修により養成したい職業能力、想定される受講者数等

(3) 受講予定者等のニーズの把握
職業訓練の受講効果を高めるために、想定される受講予定者等に対し、以下の 例を参考にして、可能な範囲でのヒアリングやアンケート調査を行うことにより、受講予定者等のニーズを把握します。
(求職者のニーズの例)
職業訓練により習得したい職業能力、取得を希望する資格等、希望する職種、就業形態、就業地域及び賃金等
(在職者のニーズの例)
現状の課題、受講目的、習得したい職業能力、取得を希望する資格等、習得した職業能力の活用場面等。

また、必要に応じ、キャリアコンサルタント支援(※)を通じて、受講予定者等が保有する既得の資格等や成績証明書等を書面にて確認するとともに、受講者の職歴、職業能力開発に係る経歴等が記載された書面(以下「ジョブ・カード」という。)を交付します。
ただし、情報の入手に関しては、個人情報の取り扱いに留意し、正当な承諾を 得て入手することが必要です。
※「キャリアコンサルタント支援」とは、「個人がその適性や職業経験等に応じて自ら職業生活設計を行い、これに即した職業選択や職業訓練等の職業能力開発を効果的に行うことができるよう、個別の希望に応じて実施される相談、その他の支援」のことです。

(4) 多様なニーズ等の把握
職業訓練サービスの設計又は開発に当たり、その職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)ごとに受講者に最低限必要とされる特定の知識、技能及び技術等が備わっていることを前提とする場合があります。
このため、受講者ごとの多様な特性(国籍、言語や文化の違い、読み書き能力、障がい者、母子家庭等)を考慮して、職業訓練サービスの目的や受講者を受け入れる訓練環境を設計又は開発するために、あらかじめ関係するニーズ等の把握を行います。
また、設計又は開発した職業訓練サービスごとの多様な特性への対応状況等は、職業訓練サービスの利用者に対して、分かりやすくかつ適切に情報提供ができる よう整理しておきます。

(5) ニーズの把握に関する管理
ニーズ等を継続的に把握する仕組み等を、以下の例を参考にして明確にします。
(仕組みの例)
① 仕組みを文書化し、組織内で共有化する。
② 把握したニーズ等の情報は、職業訓練サービスの提供に係る分析のために活用する。
③ ニーズ等の情報は、一定期間さかのぼって参照できるよう整理して保管する。
④ 把握したニーズ等は、設計又は開発しようとする職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)に活用又は反映する。

【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
公的職業訓練の実施に際しては、早期の再就職を促す観点から、人材ニーズに対応した職業訓練のカリキュラムを開発又は策定するためのニーズ把握を行うこと。
※ 公的職業訓練については、それぞれ定める基準があり、それに沿った取り組みが必要となるため、質を保証するための最低レベルの要件を共通事項として記載しているが、公的職業訓練の受託等に際しては、各基準(都道府県が設定する公共職業訓練(委託訓練)の入札要件(入札説明書又は仕様書)、認定職業訓練(求職者支援訓練の認定基準))に定められた要件に合致するものとすることが必要である(以下、当該要件において同様である)。

(つづく)平林

-基礎編・理論編

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