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実践編・応用編

安心できる年金制度の確立 3

投稿日:2024年12月9日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

安心できる年金制度の確立の最終回です。少子高齢化は、老後生活を支える年金の支給水準に大きな影響を与えています。それは、年金を負担する現役世代が減少する一方で、年金を受け取る高齢者が増えるためです。国民の多くは、年金制度は今後どうなっていくのか、或いはまた将来自分がどの位年金を受け取ることができるのか、そんな不安を持っています。

◆公的年金の正確な業務運営
■日本年金機構について
厚生労働大臣の監督の下、日本年金機構は国と密接な連携を図りながら公的年金事業に関する業務運営を行うことにより、公的年金事業及び公的年金制度に対する国民の皆様の信頼を確保し、もって国民生活の安定に寄与することを目的としています。厚生労働大臣が定めた中期目標や日本年金機構が策定した中期計画及び各年度の年度計画に基づいて計画的に業務を行ってきました。2024(令和6)年度からは、第4期中期目標(対象期間:2024年4月1日から2029(令和11)年3月31日までの5年間)及び中期計画に基づいて業務を実施しています。

■日本年金機構の取組み
日本年金機構においては、年金の適用、保険料の徴収、年金の給付、年金記録の管理、年金相談という一連の業務を正確かつ確実に遂行するとともに、提供するサービスの質の向上を図ることを基本的な役割としています。

●国民年金の保険料納付率向上と厚生年金の適用促進
国民年金保険料の納付率対策については、これまで納付督励や免除等勧奨業務を受託する事業者との連携強化、口座振替やクレジットカード納付、コンビニでの納付の促進、スマホ決済アプリでの納付などの導入等による保険料を納めやすい環境づくりなど、保険料の収納対策の強化に取り組んできたところです。2022(令和4)年度における最終納付率 (2020(令和2)年度分保険料)は、前年度から2.7ポイント増の80.7%となり、2010(平成22)年度分保険料から10年連続で上昇しています。 また、保険料納付率の更なる向上を図るため、納付督励や免除勧奨などの対策を効率的・効果的に実施しており、負担能力がある方には督促状等を段階的に送付し、納付しない方については、滞納処分を実施しているほか、国税庁への強制徴収委任制度の活用など、収納対策の強化を図っています。

厚生年金の適用促進については、国税庁から提供されている法人の源泉徴収義務者情報に加えて雇用保険被保険者情報等を活用して適用すべき事業所を把握し、効率的・効果的な加入指導を実施しています。また、適用事業所に対する事業所調査については、優先度等を踏まえ対象事業所の選定を行い、様々な手法を組み合わせ、各種届出が適正に行われているか、計画的に調査を行っています。

●年金給付の改善や年金相談業務の実施
年金の給付については、年金受給にできる限り結びつけていくための取組みとして、受給権者の申請漏れを防止するため、年金受給開始年齢に到達する直前及び繰下げ受給の上限年齢である75歳に到達する直前に、年金請求書を本人宛に送付することや、受給資格期間を満たしながら年金請求を行っていない66歳から74歳までの方(1952(昭和27)年4月2日以降生まれの方に限る。)に対して、毎年、各年齢に到達する直前に年金見込額のお知らせを送付する等の取組みを行っている。
年金相談については、年金事務所等における待ち時間の短縮や平日昼間に相談できない方への相談時間の確保を図るため、週初めの開所日の受付時間延長、毎月第2土曜日の開所とともに、混雑時の相談ブースの増設や年金相談職員の配置等の対策に取り組んでいる。また、ねんきんダイヤルを開設するとともに、全ての年金事務所において予約制を実施しており、さらに、2024(令和6)年1月より、老齢年金請求に加え、障害年金、遺族年金・未支給年金の請求に関する相談や手続についても、インターネットから年金相談 予約を受け付けている。
お客様の声を反映させる取組みとして、各年金事務所への「ご意見箱」の設置、ホームページ上に「日本年金機構へのご意見ご要望」コーナーの設置、「お客様満足度アンケート調査」等の実施など、お客様目線に立った業務改善に向けた取組みを行っている。 また、日本年金機構の毎年度の事業実績、お客様サービス向上の取組み、予算・決算などの情報をわかりやすくお客様に提供するため、毎年、年次報告書((アニュアルレポート)を作成している。

●デジタル化への対応等
年金関係の手続については、マイナポータルやe-Govを活用し、電子申請や電子送付の推進に取り組んでいる。
事業所の社会保険関係の手続は、紙媒体やDVDなどの電子媒体による申請の他、電子申請が可能となっている。厚生年金の適用事業所が行う手続については、紙や電子媒体による申請よりも処理が早いなどのメリットもあることから、主要な手続における電子申請の利用割合は、本格的に利用促進に取り組む前の23.0%(2019(令和元)年度)から69.5%(2023(令和5)年9月末)に大幅に上昇している。また、e-Govの電子送達機能を活用し、これまで日本年金機構から事業所へ紙で郵送していた保険料額や増減内訳等の情報をデータ形式で定期的に送付する「オンライン事業所年金情報サービス」を 2023年1月から開始した。さらに、2024(令和6)年1月からは、口座振替による保険 料納付を行う事業所に郵送していた「保険料納入告知額・領収済額通知書」について、電子送付を開始している。
一方、個人の手続に関しては、2023年9月から源泉徴収所得税の各種控除を受けるた めに毎年の提出が必要な「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の申請について、マイナポータルからの電子申請を可能とした。前年の申告内容等があらかじめ入力されているため入力が簡単であり、また、紙の扶養親族等申告書を郵送する手間や切手代が不要になるといった利便性から、多くの方に利用されている。 さらに、国民年金保険料について、現在の口座振替やクレジットカード納付に加え、スマホ決済アプリでの納付を2023年2月から開始した。

(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書

●ねんきんネットとねんきん定期便
〇「ねんきんネット」の機能改善と利用促進
日本年金機構において、ご自身の年金記録などをパソコンやスマートフォンで24時間 いつでも手軽に確認できる「ねんきんネット」のサービスを提供しています。「ねんきんネット」では、お客様サービスの向上を図るため様々な機能を提供しており、現在と今後の働き方や収入、期間等の条件を設定した場合の年金見込額の試算や、電子版の通知書の閲覧、持ち主(亡くなられた方を含む。)が不明となっている記録の検索などを行うことができます。「ねんきんネット」は、マイナポータルと認証連携を行うか、日本年金機構のウェブサイトにアクセスし、ユーザIDを取得することで利用が可能となり、利用者数は2024(令和6)年3月末現在、約1,098万人と増加が続いています。

〇「ねんきん定期便」の見直し
国民・厚生年金の全ての被保険者へ毎年誕生月に「ねんきん定期便」を送付しています。また、ねんきんネットでは電子版「ねんきん定期便」を確認することもできます。「ねんきん定期便」においては、記載内容を見やすくわかりやすくし、公的年金制度のポイントを周知するため、年金受給を繰り下げた場合の年金見込額の増額イメージ図を引き続き表示するほか、繰下げ制度についてより丁寧に情報提供を行う等の見直しを行っています。

■年金記録問題への取組み及び年金記録確認
過去の年金記録問題については、日本年金機構と密接に連携しながら、様々な対策を進めてきました。その結果、約5,095万件の未統合記録のうち、約3,382万件(2024(令和6)年3月現在)の記録が解明されました。 また、「政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律」 (平成26年法律第64号)において、年金記録が誤っている場合の訂正請求手続の創設、事務処理誤りにより保険料納付ができなかった者についての事後的救済手続の創設等が行なわれました。

●未解明記録の解明
未解明記録の解明に向けて、「ねんきん特別便(名寄せ特別便)」等の未回答者に対し、再度「年金加入記録の確認のお知らせ」を送付している。

また、年金記録を正確に管理するためには、ご本人にも確認いただき、なるべく早い時点で記録の「もれ」や「誤り」を申し出ていただくことも重要である。そのため、毎年誕生月に送付している「ねんきん定期便」では、年金加入期間、年金見込額、保険料納付額 のほか、最近の月別状況として直近1年間の国民年金の納付状況や厚生年金の標準報酬月額等をお知らせしている。また、節目年齢の方には封書形式で全ての年金記録をお知らせし、ご本人に年金記録をチェックしていただいている。一方、「ねんきんネット」では、いつでもご自身の最新の年金記録が確認可能であり、記録の「もれ」や「誤り」を見つけやすいようわかりやすく表示している。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書

●年金記録の訂正手続
年金記録の訂正請求がされた場合、厚生労働省(地方厚生(支)局長)は、様々な関連資料や周辺事情を収集・調査し、最終的に、国民の立場に立って、公平・公正な判断を行う地方審議会の審議結果に基づき、訂正・不訂正等の決定を行う。地方厚生(支)局長の決定に不服がある場合は、行政不服審査法に基づく審査請求を行うことや決定の取消しを求める訴訟を提起することが可能です。
2024(令和6)年2月末時点で年金事務所が受け付けた訂正請求の件数は、制度発足以来累計で約4万7千件となっています。受け付けた件数のうち、約4万5千件の処理が完了しており、約3万6千件の年金記録が訂正されています。
(つづく)Y.H

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