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実践編・応用編

暮らしの安心確保について2

投稿日:2024年12月3日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
暮らしの安心確保についての最終回です。高齢になっても、住み慣れた地域で安心して暮らしていくことは、国民共通の願いです。そのためには、地域共生社会の実現に向けて努力することが重要です。

■生活保護基準の見直しについて
生活保護基準の見直しについては、一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られるよう、定期的に検証を行っています。2022(令和4)年12月に取りまとめられた社会保障審議会生活保護基準部会の報告書を踏まえ、食費や光熱費などの日常的に必要な費用に対応する生活扶助基準について、同部会の検証結果を反映することを基本とした上で、コロナ禍や物価上昇の影響等、足下の社会経済情勢等を総合的に勘案し、2023(令和5)、2024(令和6)年度の臨時的・特例的な対応として、検証結果に基づく消費実態の水準に世帯人員一人当たり月額1,000円を加算するとともに、加算を行ってもなお従前(2023年9月まで)の基準額から減額となる世帯については従前の基準額を保障することとしました。(2023年10月施行)。

■生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しについて
生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度については、「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」(平成30年法律第44号)の附則第8条において、「施行後5年を目途として、改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」とされている。この規定等を踏まえ、2021(令和3)年10月以降、生活困窮者自立支援制度については「生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会・ワーキンググループ」において、生活保護制度については「生活保護制度に関する国と地方の実務者協議」」において議論を行った。

2022(令和4)年6月からは「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会」において議論を深め、同年12月に「中間まとめ」が取りまとめられた。
2023(令和5)年9月から同部会を再開し、同年12月には「最終報告書」が取りまとめられ、「中間まとめ」で検討が必要とされた事項について、具体的な方向性が示された。 また、単身高齢者世帯の更なる増加や持ち家比率の低下等により、住まい支援に対するニーズが今後ますます高まることにかんがみ、「全世代型社会保障構築会議」や「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会」(国土交通省・厚生労働省・法務省の3省合同で開催)における議論も踏まえ、居住支援に関する制度見直しの具体的な方向性についても「最終報告書」において整理された。

「最終報告書」において示された方向性等を踏まえ、2024(令和6)年2月に、①居住支援の強化のための措置、②子どもの貧困への対応のための措置、③支援関係機関の連携強化等を盛り込んだ「生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。
(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書

◆困難な問題を抱える女性への支援
女性が抱える困難な問題は、性暴力や性的虐待、性的搾取等の性的な被害や家庭関係の 破綻、生活困窮など、多様化するとともに複雑化しています。このような状況は、新型コロナウイルス感染症の影響により顕在化し、「孤独・孤立対策」といった視点を含め新たな女性支援強化が喫緊の課題となっています。 こうした中、困難な問題を抱える女性を支援する施策を、従前の根拠法であった旧売春防止法から脱却させ、支援対象者の意思の尊重と福祉の増進、人権の擁護等を理念とする新たな支援の仕組みを構築する「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(令和4年法律第52号。以下「女性支援新法」という。)が2022(令和4)年度に成立し、2024 (令和6)年4月から施行されています。引き続き、女性支援新法に基づき困難な問題を抱える女性への包括的な支援を推進しています。 また、女性支援新法に基づく「民間団体との協働」による支援として、若年層をはじめとした困難を抱える女性が支援に円滑につながるよう、SNSを活用した相談窓口の開設を促進するとともに、公的機関と民間支援団体が密接に連携し、アウトリーチによる相談支援や居場所の確保等を行う事業も実施しています。

■配偶者からの暴力被害者の保護
配偶者からの暴力(DV)は、人権を著しく侵害する大きな社会問題です。2022(令和4)年度の全国の婦人相談所及び婦人相談員の受け付けた来所による女性相談者の実人員77,396人(2021(令和3)年度75,279人)のうち、「夫等の暴力」を主訴とする者が34,514人(2021年度34,265人)であり、相談理由の44.6%(2021年度45.5%)を占めるなど、配偶者からの暴力の被害者の割合が高水準で推移しています。 関係府省庁(内閣府、警察庁等)及び関係機関(配偶者暴力相談支援センター、警察、裁判所等)との密接な連携を図るなど、引き続き取組みを強化することが必要です。

◆自殺対策の推進
我が国の自殺者数は、警察庁の自殺統計原票を集計した結果によると、1998(平成 10)年から14年連続して年間3万人を超えて推移していたが、2010(平成22)年以降は10年連続の減少となっており、2019(令和元)年の年間自殺者数は、20,169人と、1978(昭和53)年の統計開始以来最小となった。しかしながら、新型コロナウイルス染症等の影響を受け自殺の要因となり得る様々な問題が悪化した可能性が示唆されており、2020(令和2)年の年間自殺者数は21,081人と11年ぶりに増加に転じた。2023 (令和5)年は、年間自殺者数は21,837人(男性14,862人、女性6,975人)と、前年に 比べ44人(0.2%)減少した。
自殺の多くは多様かつ複合的な原因及び背景を有しており、様々な要因が連鎖する中で起きている。2023年中の原因・動機特定者は19,449人であり、原因・動機は「健康問題」(12,403件)、「経済・生活問題」(5,181件)、「家庭問題」(4,708件)、「勤務問題」(2,875件)の順となっている。

2006(平成18)年に成立した自殺対策基本法(平成18年法律第85号)及び政府が推進すべき自殺対策の指針である「自殺総合対策大綱」(以下「大綱」という。)に基づき、2026(令和8)年までに、自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)を2015(平成 27)年と比べて30%以上減少させることを目標として総合的に自殺対策を推進している。
大綱の基本理念である「生きることの包括的な支援」を進めるためには、大綱に掲げた様々な施策が確実に実施されることが重要である。2019(平成31)年3月から、国、地方公共団体、関係団体、民間団体が連携・協働するため、また、施策の実施状況、目標の達成状況等を検証し、施策の効果等を評価するため、「自殺総合対策の推進に関する有識者会議」を開催し、2021(令和3)年度には、大綱の見直しに向けた意見が取りまとめられた。その後、閣僚級の自殺総合対策会議での大綱案の決定を経て、2022(令和4)年10月に第4次大綱が閣議決定され、これまでの取組みに加え、子ども・若者、女性に対する対策や地域自殺対策の取組みの強化等を推進することとしている。

また、地域レベルでの自殺対策の取組みについては、都道府県及び市町村は自殺対策計 画を策定し、国及び地域自殺対策推進センターにおいて、計画のPDCAサイクルが推進されるよう支援を行っている。
今後、自殺対策の一層の充実を図っていくためには、保健、医療のみならず、福祉、教育、労働など、広く関連施策と連動した総合的かつ効果的な自殺対策の実施に必要な調査研究及び検証並びにその成果の活用や地域レベルの実践的な自殺対策の取組みへの支援などを総合的かつ的確に推進する仕組みの整備が必要とされている。このような認識の下、2019年6月、「自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律」(令和元年法律第32号)が成立し、自殺対策を支える調査研究及びその成果の活用等の中核を新たに担う厚生労働大臣の指定調査研究等法人として、2020年4月から「一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター」が活動を開始した。当該指定法人による、個々の自治体の自殺の状況をまとめた「地域自殺実態プロファイル」の提供や、自治体の自殺対策担当者向けの研修会の実施等により、地域の実情に応じた実践的な自殺対策の取組みを支援している。

近年、全体の自殺者数は減少していたものの、未成年者の自殺者数は増加の傾向が見られ、2022年の小中高生の自殺者数は過去最多の514人となり、2023年も513人と高い水準となっている。
こどもの自殺対策については、2023年6月に「こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議」において「こどもの自殺対策緊急強化プラン」が取りまとめられた。同プランにおいては、こどもの自殺対策の柱の一つとして、市町村等では対応が困難な場合に助言等行う多職種の専門家により構成される「こども・若者の自殺危機対応チーム」を全国に設置することが盛り込まれており、厚生労働省では、同チームの設置・運営について、地域自殺対策強化交付金により支援を行っている。

学校においては、命や暮らしの危機に直面したとき、誰にどうやって助けを求めればよいかの具体的かつ実践的な方法を学ぶとともに、つらいときや苦しいときには助けを求めてもよいということを学ぶ「SOSの出し方に関する教育」を含む自殺予防教育を文部科学省とともに推進し、学校と地域の専門家との間での協力・連携関係の構築等を図っている。
(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書

(つづく)Y.H

-実践編・応用編

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