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多様な働き手の参画の最終回です。労働参加率の向上について、特に期待されるのは女性、高齢者等の多様な働き手の労働参加です。我が国において、出産や育児による離職は女性の労働参加に大きな影響を与えていると考えられています。そのため、女性が子供の成長に合わせて柔軟な働き方に変えていくことが必要です。
また、高齢者の労働参加率は他国の平均より高い水準にあります。一方で、年齢に関わりなく元気である限り、働きたいと考える高齢者への対応はより重要であると考えられます。
■二国間の協定等に基づく外国人看護師候補者及び介護福祉士候補者の受入れ
経済連携協定(EPA)等に基づく外国人看護師候補者及び介護福祉士候補者の受入れは、経済活動の連携強化の観点から、公的な枠組みで特例的に行われているものです。本枠組みにより入国した看護師候補者及び介護福祉士候補者は、協定等で定められた滞在期間(看護師候補者3年、介護福祉士候補者4年)の間、病院・介護施設等で就労を行い、国家試験の合格を目指して研修等を受け、滞在期間中又は帰国後に国家資格を取得した場合においては、日本国内において看護師及び介護福祉士としての就労が認められます。インドネシアは2008(平成20)年度から、フィリピンは2009(平成21)年度から、ベトナムは2014(平成26)年度から受け入れています。 厚生労働省では、国家資格取得に向けた就労・研修等に関する支援の実施、受入れ調整機関である公益社団法人国際厚生事業団(候補者の受入れを適正に実施する観点から、同法人が唯一の受入れ調整機関となっている。)による職業紹介業務等に対する指導監督を行うとともに、外務省、法務省及び経済産業省と緊密に連携しその運営を行っています。
“■外国人技能実習制度の適正な実施
外国人技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識の移転を通じて、開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的とし、1993(平成5)年に創設された制度である。 制度創設以降、技能実習は我が国の国際貢献において重要な役割を果たしており、送出国からも積極的な評価を受けている一方で、入管法令・労働関係法令違反等の発生も指摘されてきた。こうした状況を受けて、管理監督体制の強化や制度の拡充などを内容とする 「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」が、2017(平成 29)年11月1日に施行された。同法においては、監理団体について許可制、技能実習計画について認定制とし、外国人技能実習機構(認可法人)を設立して監理団体等に対する 実地検査や技能実習生に対する母国語相談等の業務を行っているほか、通報・申告窓口の 整備、人権侵害行為等に対する罰則等を整備している。入管法令・労働関係法令違反等の 不適切な事案については関係機関とともに必要な対応を行い、違反の態様に応じて法務大臣・厚生労働大臣等が許可の取消等の行政処分等を行うなど、同法に基づき、技能実習の 適正な実施及び技能実習生の保護を図り、制度の趣旨に沿った技能実習制度の活用を進めている。さらに、日本と送出国が技能実習を適正かつ円滑に行うために連携を図ることを目的と して、技能実習生の送出国のうち15か国(ベトナム、カンボジア、インド、フィリピン、ラオス、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、ブータン、ウズベキスタ ン、パキスタン、タイ、インドネシア及びネパール(2024(令和6)年3月31日現在))との間で、二国間取決め(MOC)を作成し、送出機関の適正化等を図っている。 技能実習制度の在り方については、技能実習法等の附則に基づく検討の時期を迎えたことから、2022(令和4)年11月に有識者会議を設置し、約1年間にわたり制度見直しの議論が行われ、2023(令和5)年11月30日、議論の成果として最終報告書が法務大臣に提出された。最終報告書では、我が国が外国人材に選ばれる国になるよう、現行制度を発展的に解消し、人手不足分野における人材育成と人材確保を目的とする新たな制度を創設するとともに、外国人のキャリアパスを明確化し、新たな制度から特定技能制度への円滑な移行を図ることや、一定の要件の下で転籍制限を緩和するなど外国人の人権に十分配慮することなどの方向性が提言されている。
政府は、この最終報告書を踏まえ、2024年2月9日、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」において、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応について」を決定した。これを踏まえ、2024年3月 15日、育成就労制度の創設等を盛り込んだ「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案」を第213回通常国会に提出した(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書。
◆重層的なセーフティーネットの構築
■生活保護受給者などの生活困窮者に対する就労支援の推進
生活保護受給者を含め生活困窮者を広く対象として、2013(平成25)年度から地方自治体(福祉事務所)にハローワークの相談窓口(常設窓口や巡回相談)を設置するなど、 ワンストップ型の就労支援体制を全国的に整備し、ハローワークと地方自治体の協定に基づき、両者によるチーム支援方式により、就労支援を行う「生活保護受給者等就労自立促進事業」を実施しています。2023(令和5)年度における実績は、支援対象者数約8.8万人、就職者数約6.1万人となっています。
■求職者支援制度
求職者支援制度は、主に雇用保険を受給できない方々に対して公的な職業訓練の受講機会を提供するとともに、収入、資産など一定の要件を満たす場合に、訓練を受けることを容易にするための職業訓練受講給付金を支給しています。2023(令和5)年4月に、誰もが職業訓練を受講しやすい環境整備を図り、今後のステップアップに結びつけられるようにするため、本制度について、職業訓練受講給付金の支給要件の緩和や訓練対象者の拡大等の見直しを行い、当該制度の活用促進を図りました。 なお、求職者支援訓練には、多くの職種に共通する基本的能力を習得するための「基礎コース」と、基本的能力と特定の職種の職務に必要な実践的能力を一括して習得するための「実践コース」があります。 また、ハローワークは求職者に対してキャリアコンサルティングを実施し、適切な訓練へ誘導するとともに、個々の求職者の状況を踏まえて作成した就職支援計画に基づき、訓練期間中から訓練修了後まで、一貫して就職支援を行い、求職者の早期の就職に向け取り組んでいます。 2022(令和4)年度においては、約4.0万人が訓練を受講しました。また、2022年度中に終了した訓練コースの雇用保険適用就職率は、基礎コース57.1%、実践コース59.0%となっています。
■雇用保険制度
雇用保険制度は、労働者が失業した場合や自ら職業に関する教育訓練を受けた場合、育 児休業を取得した場合等に給付を行うとともに、失業の予防や労働者の能力開発等のため の事業を行うなど、雇用に関する総合的機能を有する制度として運営されている。 新型コロナウイルス感染症の雇用への影響に対処するために雇用調整助成金の拡充等の特例措置を講じた結果、雇用保険財政の状況は急速に悪化し、失業等給付の保険料率は2023(令和5)年度から原則である0.8%としている。2022(令和4)年度末をもって 記の特例措置は終了したため、2023年度の収支は安定的に推移したものの、雇用のセーフティネットとしての役割を十分に果たすことができるよう、今後も制度の安定化を図っていく必要がある。
一方、雇用保険制度については、子育て支援の強化やリ・スキリングの推進等の観点から制度の充実を求められていたことから、2023年9月以降、労働政策審議会においての見直しについて議論を進め、2024(令和6)年1月に報告書をとりまとめた。この内容に沿って、多様な働き方を効果的に支えるとともに、労働者の主体的なキャリア形成を支援するため、
・雇用保険の適用拡大
・教育訓練やリ・スキリング支援の充実
・育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保
等を内容とする「雇用保険法等の一部を改正する法律案」を2024年2月に第213回通常国会に提出するとともに
・出生後休業支援給付の創設
・育児時短就業給付の創設
をその内容に含む「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」も2024年2月に第213回通常国会に提出した。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
■雇用調整助成金
雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造の変化等の経済上の理由によって事業活動の 縮小を余儀なくされた事業主が、一時的に休業、教育訓練又は出向を行って労働者の雇用 の維持を図る場合に、休業手当、賃金などの一部を助成しています。 また、2024(令和6)年1月より、令和6年能登半島地震の影響に伴い事業活動が縮小した事業主を対象に、支給要件の緩和や助成率の引き上げ等の特例措置を実施しています。 さらに、休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しやすくするため、教育訓練を一定割合実施しない場合に助成率を引き下げる等の省令改正を実施したところであり、2024年4月より施行している。
(つづく)Y.H