キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。
前回に続き、多様な働き手の参画についてお話しします。労働参加率の向上について、特に期待されるのは女性、高齢者等の多様な働き手の労働参加です。我が国において、出産や育児による離職は女性の労働参加に大きな影響を与えていると考えられています。そのため、女性が子供の成長に合わせて柔軟な働き方に変えていくことが必要です。
また、高齢者の労働参加率は他国の平均より高い水準にあります。一方で、年齢に関わりなく元気である限り、働きたいと考える高齢者への対応はより重要であると考えられます。今回は、女性、高齢者等の多様なな働き手の参画についてお話しします。
■フリーター等の正社員就職の促進
フリーター数は、2023(令和5)年には134万人となり、前年(2022(令和4)年 132万人)と比べて2万人増加となっています。厚生労働省では、「わかものハローワーク」 (2024(令和6)年4月1日現在21か所)等で、担当者制による個別支援、正社員就職に向けたセミナーやグループワーク等各種支援、就職後の定着支援を実施し、2023年度は約9.8万人が就職しました。
■ニート等の若者の職業的自立支援の強化
ニート数は、2023(令和5)年には59万人となり、前年(2022(令和4)年 57万人)と比べて2万人増加となっています。ニート等の職業的自立を支援するためには、基本的な能力の開発にとどまらず、職業意識の啓発や社会適応支援を含む包括的な支援が必要であり、こうした支援は各人の置かれた状況に応じて個別的に行うことや、一度限りの支援にとどまらず、継続的に行うことが重要です。 このため、厚生労働省では、地方公共団体との協働によりNPO、保健・福祉機関等地域の若者支援機関からなるネットワークを構築・維持するとともに、その拠点となる地域 若者サポートステーション(以下「サポステ」という。)を設置し、キャリアコンサルタ ント等による専門的な相談や各種プログラムの実施など、多様な就労支援メニューを提供する「地域若者サポートステーション事業」を2006(平成18)年度から実施しています。 また、2020(令和2)年度からは、全てのサポステ(2024(令和6)年4月1日現在 177か所)において、40歳代の無業者に対する相談体制を整備するとともに、これら無業者の把握、サポステへの誘導の手法の一環として、福祉機関等へのアウトリーチを実施しています。
■就職氷河期世代に対する集中支援
いわゆる就職氷河期世代(おおむね 1993(平成5)年から2004(平成16)年に学校卒業期を迎えた世代)は、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代であり、現在も、不本意ながら不安定な仕事に就いている、無業の状態にある、社会参加に向けた支援を必要としているなど、様々な課題に直面している者がいる。 2019(令和元)年に取りまとめられた「経済財政運営と改革の基本方針2019」(2019 年6月21日閣議決定)における「就職氷河期世代支援プログラム」では、就職氷河期世代の抱える固有の課題や今後の人材ニーズを踏まえつつ、個々人の状況に応じた支援により、就職氷河期世代の活躍の場を更に広げられるよう、2020(令和2)年度からの3年間で集中的に取り組むという政府全体の方針が示された。さらに、2022(令和4)年に取りまとめられた「経済財政運営と改革の基本方針 2022」(2022年6月7日閣議決定)において、2022年度までの3年間の集中取組期間に加え、2023(令和5)年度からの2年間を「第二ステージ」と位置付け、これまでの施策の効果も検証の上、効果的・効率的な支援に取り組み、成果を積み上げるという政府全体の方針が示された。 また、「就職氷河期世代支援プログラム」に盛り込まれた各施策を具体化した「就職氷河期世代支援に関する行動計画」を毎年「就職氷河期世代支援の推進に関する関係府省会議」にて決定している。2023年12月には「就職氷河期世代支援に関する行動計画 2024」(2023年12月26日同会議決定)が取りまとめられた。
(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
■就職氷河期世代の活躍促進に向けた取組み
●地域ごとのプラットフォーム等を活用した社会気運の醸成
地域の関係機関を構成員とする地域レベルのプラットフォームを設置し、福祉と就労をはじめ各界一体となって、地域における就職氷河期世代の活躍促進の社会的気運を醸成することとしています。また、就職氷河期世代やその家族、関係者に対して、安定就職や社会参加の道筋を社会全体で用意、応援していることを効果的に伝えるため、関係府省庁や経済団体との連携、地域ごとのプラットフォームを活用する等のあらゆるルートを通じた積極的な広報を実施しています。
●不安定な就労状態にある方等の安定就職に向けた支援
正規雇用化を目指す就職氷河期世代等を支援するため、全国の主要なハローワークに 「就職氷河期世代専門窓口」を設置し、キャリアコンサルティング、生活設計面の相談、求人開拓等、就職から職場定着まで一貫した支援を実施している。
さらに、企業に対する就職氷河期世代の正社員雇用化の働きかけとして、ハローワーク等の紹介により、正社員経験が無い方や正社員経験が少ない方等を、正社員として雇い入れる事業主に対する「特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)の支給等を実施している。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
●長期にわたり無業の状態にある方等の就職実現に向けた基盤整備
就職氷河期世代の無業者に対する相談支援体制を整備するため、全国177か所のサポステにおいて、支援対象を49歳にまで拡大し、サポステの知見やノウハウを活用して、就職氷河期世代の方々に対する支援を全国で実施しています。
●社会参加に向けた支援を必要とする方等への丁寧な支援
社会とのつながりをつくり、社会参加に向けたより丁寧な支援を必要とする方を支援するため、
アウトリーチなど自立相談支援機関における機能を強化しています。また、市町村において、福祉と就労をつなぐ「市町村プラットフォーム」を設置し、地域の関係機関の連携を促進するとともに、ひきこもり状態にある方が安心して過ごせる居場所づくりや、その家族に向けた相談会や講習会等の実施等、多様な支援の選択肢を用意し、一人ひとりの状況に応じたきめ細かな支援に取り組んでいます。
◆障害者、難病・がん患者の活躍促進
■障害者雇用の現状
●民間企業における雇用状況
2023(令和5)年6月1日現在の障害者雇用状況は、雇用障害者数が20年連続で過去最高を更新し、64.2万人(前年比4.6%増)となるなど、一層進展しています。 雇用障害者のうち身体障害者は36.0万人(前年比0.7%増)、知的障害者は15.2万人(前年比3.6%増)、精神障害者は13.0万人(前年比18.7%増)と、いずれの障害種別でも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きくなっています。 また、民間企業が雇用している障害者の割合(以下「実雇用率」という。)は2.33% (前年比0.08ポイント増)です。 法定雇用率を達成した企業の割合は、50.1%(前年比1.8ポイント増)と増加しています。また、雇用障害者が0人である企業(以下「障害者雇用ゼロ企業」という。)が法定雇用率 未達成企業の58.6%(前年比0.5ポイント増)を占める状況です。
●国・地方公共団体における雇用状況
2023(令和5)年6月1日現在の障害者任免状況については、国の機関(法定雇用率 2.6%)に勤務している障害者数が9.9千人(前年比2.4%増)及び実雇用率が2.92% (前年比0.07ポイント増)でした。 また、都道府県の機関(法定雇用率2.6%)が1.1万人(前年比2.1%増)及び2.96% (前年比0.10ポイント増)で、市町村の機関(法定雇用率2.6%)が3.6万人(前年 比3.1%増)及び2.63%(前年比0.06ポイント増)でした。 さらに、都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.5%)が1.7万人(前年比3.0%増)及び2.34%(前年比0.07ポイント増)となっています。
■障害者に対する就労支援の推進
●公務部門における障害者雇用の推進
国及び地方公共団体の機関については、民間企業に率先して障害のある人の雇入れを行 うべき立場にあります。加えて、2018(平成30)年の公務部門における障害者雇用の不適切 計上事案が明らかになったことを踏まえ、障害者雇用推進者、障害者職業生活相談員の選 任義務等に加え、障害者活躍推進計画の作成・公表義務を課しています。
〇障害者雇用に関する理解の促進
人事院において、一般職国家公務員における合理的配慮の考え方等を定めた「職員の募 集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針(国家公務員の合理的配慮指針)」を2018年12月に策定するとともに、2020(令和2)年1月には各府省において提供された合理的配慮の事例を把握し、厚生労働省とも連携してとりまとめ、各府省に提供している。
内閣人事局を中心として厚生労働省、人事院の協力のもと、公務部門において障害者を雇用する際に必要となる基礎知識や支援策等を整理した「公務部門における障害者雇用マニュアル」を2019(平成31)年3月に作成した(障害者雇用促進法の改正内容を踏まえ、2024(令和6)年1月に改訂)。 厚生労働省において、国の機関における障害者雇用に関する理解の促進を図るため、以 下の取組みを実施した。・障害者雇用の際に必要となる設備改善・機器導入に関する情報について、国の機関の人 事担当者等を対象に、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に蓄積されたノウハウ
・情報の提供
・国の機関等の人事担当者等を対象に、障害者の働きやすい職場環境づくりや障害特性に 応じた雇用管理を内容とする「障害者雇用セミナー」の開催
・障害者とともに働く国の機関及び地方自治体等の職員を対象に、精神・発達障害の特性 を正しく理解し、職場でこれら障害者を温かく見守り、支援する応援者となるための 「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」(併せて同講座のe-ラーニング版を提供)の実施
・各府省における障害者雇用の取組みを好事例として収集し、各府省に共有 また、内閣人事局において、障害特性を理解した上での雇用・配置や業務のコーディ ネートを行う障害者雇用のキーパーソンとなる職員を養成するための「障害者雇用キーパーソン養成講習会を実施した。(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書
〇職場実習の実施
厚生労働省において、各府省における障害者の採用に向けた着実な取組みを推進するた め、各府省等の人事担当者等を対象に、各府省が行う特別支援学校等と連携した職場実習の実施に向けた支援を行いました。
〇職場定着支援の推進
厚生労働省において、ハローワーク等に各府省から障害者の職場定着に関する相談を受 け付ける窓口を設置して、各府省において働く障害者やその上司・同僚からの相談に応じたほか、ハローワーク等に障害者の職場適応に係る支援経験や専門知識を有する専門の支 援者を配置し、各府省からの要請等に応じて職場適応支援を実施しました。また、各府省が自ら職場適応に係る支援を適切に行えるようにするため、職員の中から選任した支援者に必要な支援スキル等を付与する支援者向けセミナーを実施しました。 内閣人事局において、就労支援機関等と連携し、各府省からの依頼に応じて、障害者雇用に知見を有する専門家を一定期間、各府省の職場に派遣し、採用、定着、職業能力の開発及び向上等に関する助言等を行う専門家派遣事業を実施しています。
(つづく)Y.H