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労働環境の整備について

投稿日:2024年10月15日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

労働環境とは、会社で働く従業員を取り巻く環境のことです。事業者には、従業員の健康や安全を守るため、労働環境を整える義務があります。「労働安全衛生法第3条の1」に、以下のように記されています。「快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」労働環境の整備は、従業員の定着や生産性の向上など企業の利益アップにつながるため非常に重要です。今回は、労働環境の整備について、お話しします。

◆非正規雇用労働者の待遇改善、長時間労働の是正等
■非正規雇用の現状と対策
●非正規雇用の現状と課題
近年、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者は 全体として増加傾向にあり、雇用者の約4割を占める状況にあります。このことは、高齢者が増える中、高齢者等の継続雇用により非正規雇用が増加していることや、女性を中心にパート労働者が増加していることなどの要因が大きいです。なお、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、2020(令和2)年、2021(令和3)年の非正規雇用労働者は対前年比で減少しましたが、2022(令和4)年以降は増加し、2023(令和5)年は、2,124万人となっています。 非正規雇用労働者は、雇用が不安定、賃金が低い、能力開発機会が乏しいなどの課題があり、正規雇用を希望しながらそれがかなわず、非正規雇用で働く者(不本意非正規雇用労働者)が9.6%(2023年)存在し、年齢階級別では25~34歳の若年層で13.1%(2023年)と高くなっています。一方、非正規雇用労働者の中には「自分の都合のよい時間に働きたいから」等の理由により自ら非正規雇用を選ぶ人もおり、多様な働き方が進む中で、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられることが重要となっています。

●非正規雇用労働者への総合的な対策の推進

〇正社員転換・待遇改善の推進
正社員を希望する方の正社員転換や非正規雇用を選択する方の待遇改善を推進するた め、キャリアアップ助成金において、非正規雇用労働者の正社員転換、処遇改善の取組み を図る事業主に対して助成を行っている。 また、どのような働き方を選択しても公正な待遇を受けられるようにし、人々が自分の 希望に合わせて多様な働き方を自由に選択できるようにすることが重要である。 2020(令和2)年4月1日に施行された「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理 の改善等に関する法律」(平成5年法律第76号。以下「パートタイム・有期雇用労働法」 という。同法の中小企業への適用は2021(令和3)年4月1日。)及び「労働者派遣事業 の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(昭和60年法律第88号)で は、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向け、①不合理な待遇差を解消するため の規定の整備、②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、③行政による法の履行確 保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)が整備された。 フリーター等の正社員就職支援のため、「わかものハローワーク」(2024(令和6)年 4月1日現在21か所)等を拠点に、担当者制による個別支援、正社員就職に向けたセミナーやグループワーク等各種支援、就職後の定着支援を実施しており、2023(令和5) 年度は約9.8万人が就職した。 また、職業経験、技能、知識の不足等から安定的な就職が困難な求職者について、正規 雇用化等の早期実現を図るため、これらの者をハローワーク等の紹介を通じて一定期間試 行雇用する事業主に対して助成措置(トライアル雇用助成金)を講じている。
(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書

〇能力開発機会の確保
ハローワークの求職者のうち、就職のために職業訓練が必要な者に対して無料のハロー トレーニング(公的職業訓練)を実施し、安定した就職に向けて職業能力開発の機会を提供しています。具体的には、主に雇用保険受給者を対象として、おおむね3か月から2年の公共職業訓練を実施しているほか、主に雇用保険を受給できない者を対象として2か月から6か月の求職者支援訓練を実施しています。また、非正規雇用労働者等を対象として、国家資格の取得等を目指す長期の訓練コースを2017(平成29)年度より拡充し、より高い可能性で正社員就職に導くことができる訓練を推進しています。また、非正規雇用労働者等に対して、キャリアコンサルティングや実践的な職業訓練の機会の提供及びその職務経歴等や訓練修了後の能力評価結果を取りまとめたジョブ・カー ドの就職活動における活用を通じて、求職者と求人企業とのマッチングやその実践的な職業能力の習得を促進し、安定的な雇用への移行等を目指すため、ジョブ・カード制度の活用促進を図っています。

■有期労働契約に関するルール
労働契約の期間の定めは、パートタイム労働、派遣労働などを含め、いわゆる正社員以外の多くの労働形態に関わる労働契約の要素であり、有期労働契約で働く人は1,443万人(2023(令和5)年平均)となっています。有期労働契約の更新の下で生じる雇止めの不安の解消や、有期労働契約であることを理由として不合理な労働条件が定められることのないようにしていくことが課題となっています。 2013(平成25)年4月1日に全面施行された改正労働契約法では、こうした有期労働契約に関する問題に対処し、働く人が安心して働き続けることができる社会を実現するため、次の3つの措置が講じられています。
●有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる制度(以下「無期転換ルール」という。)を導入すること
●最高裁判例として確立した「雇止め法理」を法定化すること
●有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けてはならないという規定を設けること
■パートタイム労働者・有期雇用労働者の均等・均衡待遇の確保
パートタイム労働者・有期雇用労働者の中には、補助的な業務ではなく、役職に就くなど職場で基幹的役割を果たす人も存在しています。一方で、その待遇がその働きや貢献に見合ったものになっていない場合もあります。このため、パートタイム労働者・有期雇用労働者について正社員との不合理な待遇差を解消し、働きや貢献に見合った公正な待遇をより一層確保することが課題となっているます。 こうしたことから、パートタイム労働者・有期雇用労働者がその能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため、パートタイム・有期雇用労働法違反が認められる企業に対しては、是正指導を行い、法違反に当たらないものの、改善に向けた取組みが望まれる企業に対しては、具体的な助言を行いつつ、支援ツール等を活用し、企業の制 度等の見直しを検討するように促し、同法の着実な履行確保を図っています。

■過重労働解消に向けた取組みの促進
長時間労働の是正については、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等長時間労働があると考えられる事業場に対して監督指導を行っています。 特に、毎年11月には、「過重労働解消キャンペーン」を実施し、長時間労働の抑制、過重労働による健康障害の防止及び労働時間管理の適正化等を重点とする監督指導や 国一斉の無料電話相談などの取組みを行っています。
また、過労死等の防止のための対策については、「過労死等防止対策推進法」(平成26年法律第100号)及び「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(2021(令和3)年7月30日閣議決定)に基づく取組みを実施しています。特に、毎年11月の過労死等防止啓発月間には「過労死等防止対策推進シンポジウム」を開催するとともに、ポスター等の掲出など重点的な啓発活動を行っています。 さらに、厚生労働省では、長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進、勤務間インターバル制度の導入促進など、労働時間等の設定の改善に向けた労使の自主的な取組み を促進しています。 具体的には、
・各企業に対し、「労働時間等見直しガイドライン」の周知・啓発
・生産性を高めながら労働時間の削減等に取り組む中小企業等に対する「働き方改革推進 支援助成金」の支給
・都道府県労働局に配置する「働き方・休み方改善コンサルタント」等による個々の企業 に対する支援の実施
・「働き方・休み方改善ポータルサイト」を活用した情報発信の実施
・10月の年次有給休暇取得促進期間に加え、連続休暇を取得しやすい夏季、年末年始及 びゴールデンウィークに集中的な周知・啓発の実施
・業種別の勤務間インターバル制度導入マニュアルや制度導入を支援するための動画の作 成・周知、及びシンポジウムの開催などの取組みを行っている。

 ■トラック、バス、タクシーの自動車運転者の長時間労働の抑制
自動車の運転の業務については、働き方改革関連法において、2024(令和6)年4月1 日から時間外労働の上限規制が適用され、臨時的な特別の事情がある場合の時間外労働時 間の限度は年960時間となり、加えて、将来的には時間外労働の上限規制の一般則の適 用を目指す旨の規定が設けられている。 さらに、2024年4月1日から、時間外労働の上限規制(年960時間)と併せて、改正改善基準告示が適用されることから、関係省庁と連携し周知を徹底する等、自動車運転者 の長時間労働の是正に向けた環境整備のための取組みを進めている。 特に、トラック運転者については、長時間労働の要因の中に、荷主との取引慣行など個々の運送事業者の努力だけでは見直すことが困難なものがあることから、労働基準監督署が発着荷主等に対して、長時間の恒常的な荷待ち時間を発生させないこと等についての 要請等を行うなどして、こうした課題の改善が図られるよう取り組んでいるところでる。
(出典)厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書

(つづく)Y.H

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