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実践編・応用編

海外進出日本企業で働く人々_スウェーデン_社会保障施策 3

投稿日:2024年7月21日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。

スウェーデンの社会保障施策の最終回です。スウェーデンは、「北欧の中の日本」と言われるほど両国の国民性には幾つかの共通点があります。例えば、几帳面で真面目・シャイな我慢強い性格のところです。また、グループ内の和の尊重や謙虚さも日本人に通じるところがあります。社会保障制度が手厚い北欧諸国の中でも、スウェーデンは特に育児に対する支援が手厚く、子供の大学までの教育費や18歳までの医療費が無料で、育児休暇などの制度も充実しています。スウェーデンに進出している日系企業の拠点数は、約160社です。またコミューンとは、日本の市町村に当たるものです。なお、2024年3月に北大西洋条約機(NATO)に正式加盟しました。

“◆社会扶助制度
日本の生活保護に相当する社会扶助(Ekonomiskt bistånd)は、コミューンの責任の下に運営されており、財源はコミューンの一般財源である。対象者はスウェーデンに1年以上居住する者で、公共職業安定所に求職登録したうえで、就労能力のある者には求職活動が要求される。給付額は申請者の資力と所得を総合的に算定(ミーンズテスト)した額と、政府が定める全国基準額をベースに各コミューンが決めた基準額との差額となる。医薬品、家具等の一時的支出についても個別に考慮される。なお、医療はレギオンによって全ての住民に提供されており、社会扶助には含まれない。2021年には、182,328世帯(18歳~64歳の者がいる世帯の約3.8%)が受給(前年比約16,000世帯減)しているが、支給総額約117億クローナ(1世帯平均約64,000クローナ)、平均支給期間は7.3か月(中央値)となっており、長期化の傾向にある。受給世帯類型別に見ると、シングルマザー世帯が受給者の14.7%となっていること、受給者年齢別では18歳~29歳の世代が18歳以上受給者の0.8%を占めるなど若年世代の受給者比率が高いこと、全受給世帯中42.7%が長期(2021年中に10か月以上)の受給期間となっていることが特徴である。”

◆社会福祉施策等
■社会福祉施策は、「高齢者・障害者に対するケア」と「個人・家族に対するサービス」の2つに大別されます。「高齢者・障害者に対するケア」とは、高齢者・障害者に対するケア(福祉)サービスです。一方、「個人・家族に対するサービス」とは、様々な理由により支援・保護などを必要とするグループに対するものです。具体的には児童、家族、アルコール・薬物中毒者などに対する助言、支援、ケア、治療、経済的支援(社会扶助)などを行うものです。また、この中には、本人の同意なく強制的に実施される、例えば虐待の被害者のケアも含まれます。

■高齢者ケア(福祉)施策
人口に占める65歳以上の者の比率は、2000年には17.2%でありましたが、2021年末には20.3%まで高まってきています。コミューンが提供義務を負う高齢者ケア(福祉)サービスは、在宅サービスと施設サービスに大別されます。

  • 在宅サービス
    ホームヘルプサービス、訪問看護、デイサービス、デイケア、ショートステイ、、緊急アラーム、移送サービスなどのメニューがあります。
  • 施設サービス
    社会サービス法上「施設」は高齢者のための「特別住宅」として定義されています。高齢者を収容する「施設」というより介護などの特別なニーズを有する高齢者のための「住宅」という考え方に立っています。以前は高齢者の集合住宅であるサービスハウス、重度の介護が必要な者のためのナーシングホーム、認知症の者のためのグループホームなどの分類が存在していましたが、近年新たに設立された施設ではこれらの形態間の明確な違いはなくなってきています。社会サービス法に規定される「特別住宅」は身体的・精神的に介護の必要性が相当程度高い高齢者を対象としているため、入居に際してはコミューンの認定が必要になります。2021年10月現在、65歳以上の者の4.0%に相当する約84,000人が「特別住宅」で暮らしています。また、介護の必要性はそれほど高くないものの、一人で暮らすことに不安感や孤独感を覚える高齢者に対応するため、「特別住宅」と通常の高齢者住宅の間を埋める「安心住宅」があります。「安心住宅」は、毎日、専門スタッフが常駐し居住者の援助を行うことが要件となっています。
  • サービスの提供
    2021年には高齢者が受けたホームヘルプサービスのうち25.3%(利用時間ベース)、高齢者が居住する「特別住宅」のうち20.8%(入居者数ベース)は民間企業などコミューン以外の事業者によって提供されたものです。また、近年、①家族介護者の負担が重くなっていることを踏まえたコミューンの援助義務に関する規定を設ける改正(2009年7月)、②高齢者サービスの提供に当たっては高齢者が「尊厳」をもって生活できることを保証すること、コミューンはサービスの提供方法及び提供時間について可能な限り利用者の要請に応じるべきこと等を内容とする改正(2011年1月)、③高齢者が特別住宅に入居する場合にパートナーとともに住む権利を保障する改正(2012年11月)等、社会サービス法の改正がなされ、サービス提供の向上が図られています。2018年5月には、認知症患者のケアの向上を図るため、医療と高齢者ケアの協力関係の強化、人材育成、知識・技能の強化、政策評価、認知症フレンドリーな社会の構築、デジタル化・支援技術を重点分野とする政府としての認知症戦略が策定されています。
  • 費用
    費用は、基本的にコミューンの税財源とサービス利用者の自己負担でまかなわれます。その具体的内容はコミューンごとに異なりますが、2002年7月から高齢者・障害者福祉サービスに係る利用者負担限度額保障制度が導入されました。これは、サービスの利用者負担に全国一律の上限額を設定するとともに、収入から利用者負担額を支払った後に利用者の手元に残る額の下限額を設定したものです。

◆保育(育児)サービス

実施主体はコミューンであり、公費(税財源)と低額の利用者負担により費用をまかなっています。対象児童の年齢に応じて、基本的に1~6歳児(就学前)を対象とする保育所(プレスクール、就学している児童を対象とする放課後保育所、そして両者(1~12歳児)を対象とする家庭保育(教育的保育)があります。なお、5~6歳児については義務教育の準備段階として就学前学級制度が設けられています。保育所には、通常の保育所以外に開放型保育所があります。開放型保育所は保護者が児童とともに自分で日を選んで任意の時間に訪問できる施設で、地域の子どもの遊び場であると同時に育児期間中の父母などに交流の機会を提供しています。家庭保育は、一定の資格を有する保育担当者が、自分の家で数人の児童を保育するものです。2021年において1~5歳児の85.6%が保育所、1.3%が家庭保育(教育的保育)を、6~9歳児の81.9%が放課後保育所、0.1%が家庭保育(教育的保育)を、10~12歳児の19.0%が放課後保育所を利用しています。6歳児の多くは就学前学級を利用しています。

以上

(つづく)Y.H

(出典)
厚生労働省 2022年 海外情勢報告

 

 

-実践編・応用編

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