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キャリアコンサルタント養成講座 12日間受講経験談 6

投稿日:2024年7月12日 更新日:

【10日目 メンタルヘルス】
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日目はガラッと変わってメンタルヘルスについて学びました。なぜキャリアコンサルタント養成講座でメンタルヘルス?と思われるかもしれませんが、メンタルヘルスはすべての人の問題です。クライエントがもし心の病気になりかかっているような状況であれば、どのような対処が必要か、またそのようなクライエントの状態を見抜く力量が必要です。

世の中の情勢として、2015年に従業員50名以上の会社にとっての義務づけられた労働安全衛生法の一部改正される形で導入されたストレスチェック法案により、ますますメンタルヘルスについて深い理解がキャリアコンサルタントにも求められています。

精神分析は、オーストリアの精神科医であったフロイト(Freud)によって創始された。彼は、ヒステリー研究、強迫神経症の研究から基本的な理論を示し、特に、無意識の存在を仮定した。意識的な力と同様かそれ以上に、無意識的な力が私たちの行動を決定していると考える。
無意識は、自分でも気づくことができない領域である。私たちの意識が存在を認めたくない衝動や願望などは、無意識のなかに閉じ込められる。これが「抑圧」という防衛機制であり、これによって私たちは心の安定を保っている。
精神分析的アプローチでは、相手の症状や問題(悩み)の背後にある無意識的な不満や葛藤などを表出させ、それまで気づかなかった自分に気づかせる(洞察させる)ことで、新たな自己理解を深め、症状の改善や悩みが薄らぐことを目指す。その際には、直接観察することができない欲求や動因に注目して、現在の行動にどのように影響を与えているのかを考えていく営みが行われる。
1.理論の内容
(1)局所論
フロイトは、心の世界を①意識(conscious)、②前意識(preconscious)、③無意識(unconscious)の領域に区分して、精神的な活動がどの領域で行われているかを明らかにしようとした。この心のモデルが局所論である。①意識はいま気がついている領域、②前意識は普段は気がついていないが何かのきっかけで意識にのぼったり思いだそうと努力することで思い出せる領域、③無意識は自分で思い出そうと努めても意思の力では思い出すことができない領域である。無意識から前意識や意識に上げようとする作業を意識化、逆に不快を呼び起こすような過去の体験を無意識のうちに押し込めようとする働きを抑圧と呼ぶ。

(2)構造論
フロイトは、心の構造を①自我(ego)、②イド(エス)、③超自我(super ego)の 3 層からなる「心的装置」として捉えた。これら 3 つの相互の力動的な関係を考えていこうとするのが構造論である。
①自我は、主に意識的な心の働きである。外界からの要請を受けて、イドや超自我にせまられながらその間の調整機能を果たしている。「現実原則」で動く。
②イドは、無意識的な本能欲求である。自我に対して願望の充足をせまるが、超自我の指令が優先と判断された場合には願望を抑圧する。「快楽原則」で動く。③超自我は、自我に対する裁判官(検閲機関)または理想像の役割をもつ。本能欲求に禁止を行って自我に罪悪感を生じさせたり、自我にあこがれの感情をもたらし理想に近づこうとさせる。「道徳原則」で動く。

(3)防衛機制
防衛機制は、自我に危険を及ぼす存在から心理的な安定を保つために用いられるさまざまな心理的作用である。個人のなかで生じた不安や抑うつ、罪悪感、恥などのような不快な感情の体験を弱めたり避けたりする機能がある。通常は無意識的かつ反射的に生じる。防衛機制自体は誰にでも認められる正常な心理的反応である。

2.職業相談場面との関わり
精神分析的アプローチでは、キャリア選択や仕事への適応に関連する現在の行動と過去の経験を関連づけて考える。そしてその関連についてクライエントに気づいてもらうことで、新たな自己理解と問題の軽減を促すことになる。以下に例を 3 つ示す。
第一に、現在の職場の同僚や上司との関係を妨げている原因がある場合である。その人の過去の対人関係や家族関係のなかでの未解決の葛藤を扱い、それをクライエントが把握できるように努めることが考えられる。
第二に、職業場面に臨むクライエントに否定的な自己観や自己効力感がある場合である。その気持ちのなかに埋め込まれている他者の期待や他者からのメッセージを、認識していくことを促すこともできよう。
第三に、クライエントが仕事に求める意味を探している場合である。過去の職業経験や教育・訓練歴、社会的経験を振り返って、クライエントが仕事を通して満たそうとしている欲求を明確化することを援助することも考えられる。
また、職業相談場面でのやり取りのなかでは、防衛機制に注目することもできよう。面接中にクライエントのなかで何らかの防衛機制が働いた場合、そのときに挙がった話題が自分にとって不快な感情を喚起させるものであったために、自分を守ろうとしたと考えられる。
例えば、職業を探して何回か応募のトライをしているにもかかわらず毎回試験が通過しないという話題が挙がったとする。反動形成でいえば、劣等感を無意識化に追いやり、逆に自分が得意なものを挙げ「自分にはこれがある」といって尊大な態度を示すことが考えられる。
また否認でいえば、なかなか就業先が決まらないという不安を抱かせる現実を知覚してもそれを認めないことが考えられる。防衛機制は無意識的な反応として生じるためクライエント側も意図していないことが多いが、職業相談場面で関わる者としてはクライエントの防衛機制が働いた場面を把握しておくことでクライエントのテーマや課題が見えてくることもあるかもしれないし、必要に応じてではあるが、面接の場面で扱うことで洞察を促すことも有効となるかもしれない。

出典 資料シリーズNo.165 労働政策研究・研修機構(JILPT)
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)

講座ではまずはメンタルヘルスの現状についての理解を深めることから入りました。労働時間、睡眠時間との関係や、日本における訴訟の歴史に始まり、ストレスと生産性について、を学びました。そして、ストレスマネジメントのコツを学んでいきます。これらはキャリアコンサルタントとしての力量獲得につながるだけでなく、セルフチェックにもつながることになると思います。

その上で、うつ病について学んでいきました。キャリアコンサルタントはうつ病の方のコンサルティングをしてはいけません。うつ病のようなクライアントが相談に来たときは、専門のクリニックへ行くことを進めます。そのためにはクライエントがそのような状態であることの見分け方、対処の仕方を知らなければなりません。そしてもう一つ、キャリアコンサルタントが陥りやすい傾向についても学びました。メンタルな問題に熱心に対応すればするほど陥りやすい状態を理解することができました。

11日目、12日目は事例研究です。いろいろな悩みを持っている想定で、あるいは転職の観点で問題を抱えていると思われるクライエント事例が取り上げられました。複数事例を取り上げながら、最近の世情を踏まえた問題を皆で考える貴重な時間になると共に、キャリアコンサルタントが決して簡単に取り組める仕事ではないことも感じられる時間になりました。だからこそより深く学ぼうという意欲を持つことができたと思います。

(つづく)Y.H

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