12日間受講経験談に入る前にキャリアコンサルタントの活動の環境についてお話しします。
現在の日本の働く環境について、報告書は、職業人生の長期化や働き方の多様化、日本型の雇用慣行の変化、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展、新型コロナウイルス感染症の影響による雇用の不透明さの増加など、「働く」を取り巻く環境が大きく変化している、と指摘。これにより、労働者にとってはこれまで以上にキャリア自律に迫られることが見込まれ、企業にとっても労働者の自律的、主体的なキャリア形成の取り組みを支援し、働きがいやモチベーションの維持向上を図ることが重要になる、としている。
また、報告書は、こうした変化のなかで、キャリアコンサルタントは内部・外部の労働市場において求められるキャリア形成支援に積極的な役割を果たし得ることを強調。労使双方が抱くキャリア観の変化や心理面・行動面でのゆれ・ゆらぎをとらえ、「働くことについての相談相手」として機能し、キャリア自律、キャリア実現の推進役を務めることが期待される、とした。 また、労働者が定期的に行うキャリア開発の取り組みには、キャリアの節目などに行うキャリア開発・形成のプロセスの棚卸しや振り返り、習得すべき知識・スキルの確認、保有・発揮している職業能力の自己評価などがあげられるが、報告書では、キャリアコンサルタントには、質の高いキャリアコンサルティングを通じて、キャリアプランの再設計、新たな学び・学び直しの動機付け等につながるような、適切な助言・指導を行う専門性の発揮が期待される、としている。
一方、企業に対しては、企業と労働者の協働の取り組みとして、連続的・長期的な見方で、さまざまなキャリア開発プログラムを1つにつなぐキャリア形成支援の実施が期待される、としている。
これらを踏まえ、報告書では、キャリアコンサルタントは、労使双方から寄せられる期待と要請に応え、さらなる専門性の深化や活動領域での活躍につなげるべく、自律的・自走的な学びと実践を積む必要がある、などと指摘。
国は効果的な学びの機会等の環境を整備し、キャリアコンサルティングの普及策を積極的に推進する必要があるなどとした。
Aさんの「キャリコンサルタント養成講座」受講奮闘記をお伝えしています。
Aさんは中小企業に勤めている小学生と4歳半の子供をもつ女性ですが、ある事をきっかけに「キャリコンサルタント」という資格を知りました。厚生労働省の国家資格であること、企業の中で人間関係の相談に乗ってあげる力を付けられることなどを知り、どこかの「キャリコンサルタント養成講座」を受けたいとNetで多くの「キャリコンサルタント養成講座」を調べました。
その結果テクノファの「キャリコンサルタント養成講座」が自分に合うのではないかと思い、3か月にわたる12日間「キャリコンサルタント養成講座」講座を受講することに決めました。決めた理由は16年の「キャリコンサルタント養成講座」の歴史と「組織と個人の共生」というところにありました。
前回に続き初日の主任講師の講義をお伝えします。
【初日の講義】
少々講座の内容からは脱線しますが、厚生労働省ではキャリアコンサルタント10万人養成計画というものを作り、その達成に向けて動き出しています。
令和3年で約5万8千人のキャリアコンサルタント登録の方(2級、1級技能士含む)がいますが、それを10万人にしようという計画です。まだまだ日本においてキャリアコンサルティングが根付いているとは言えません。それを変えていこうとして厚生労働省では、例えば企業内人材育成推進助成金というような制度も活用しながらキャリアコンサルティングを日本に広げていこうとしています。
話を講座の内容に戻します。言葉の定義等をまず話したいと思います。始めに取り上げるものは、多くの情報の中からものごとの本質を理解すること、共通する特徴を抽象化すること、つまり「概念化」についてです。そして抽象を概念に変える概念化能力の大切さについて講座を進めます。
この概念化能力は専門用語でいえば、「コンセプチュアルスキル」になります。人材開発分野においては求められるスキルは大きく次の3つに大別されます。
・コンセプチュアルスキル
・ヒューマンスキル
・テクニカルスキル になります。
このようにしてAさんは、概念化能力と「キャリア」という言葉の接点を考えることになりました。キャリアとは何?という問いかけによってAさんは講座の本質に一気に入り込んでいきました。
最初にアメリカのD.E.スーパーという学者のライフ・キャリア・レインボーについて学んでいただきます。キャリアとは仕事にかかわるもの、と捉える方が多いと思いますが、スーパーはライフという言葉を加えて、「人生を構成する一連の出来事」を意識させるためにライフ・キャリア・レインボーという考え方を提唱しました。
Aさんは日頃聞いたことのない横文字を耳にしながら必死に講師の話を理解しようとします。
そして講座は「キャリアコンサルティング」と「キャリアカウンセリング」の違いの説明に進みます。資格制度上はキャリアコンサルタントはキャリアコンサルティングを行うのですが、アメリカから導入され過去30年にわたって日本で展開されてきたのは、キャリアカウンセラーによるキャリアカウンセリングであることを理解するよう講師が説明します。
さて、この両者には違いがあるのでしょうか。もしあるのであればどのような違いがあるのでしょうか。
非常に似ている言葉ですし、同じだよ、と言われる方もいらっしゃるのですが、実はキャリア支援という観点で考えた際にその両者にはかなりの違いがあります。テクノファの講座で目指しているものは、キャリアコンサルタントの資格をまずは取得していただき、その上で、キャリアカウンセリングができるような人材になっていただきたい、というのがテクノファの「キャリアコンサルタント養成講座」の目的です。
さて、そのキャリアカウンセリングができるようになキャリアコンサルタントになる、ということで重要になってくるのは何といっても「内的キャリア」なのです。
いきなり専門用語になってしまい申し訳ありませんが、「内的キャリア」とは何か。その理解は対比される言葉である「外的キャリア」をまずご理解いただくことから入ることが良いと思います。
「外的キャリア」とは、仕事における地位とか肩書、収入などのいわゆる世間一般、つまり外部から見られるその人の仕事の状況です。外側から見たキャリアということです。一方で「内的キャリア」とは、その人自身の心の中にあるやりたいことを中心としたQuality of Lifeを意識したもの、つまり内側から見たキャリアのことです。
内的キャリアの形成においては、やりたいこと(興味・関心)、やるべきこと(使命・価値観)、できること(能力・才能)の3つの統合が大事になります。
講座の中では、短時間ですが、帳票を使ったワークをします。なかなか一人では難しいかもしれないのですが、グループワークとしてやれば、思った以上の成果を皆さんに与える楽しいワークです。一度やり方を会得いただければあとは一人でもできるワークです。繰り返し、定期的にやると効果が期待できるはずです。
そして、内的キャリアを踏まえた上で、カウンセリング・プロセス理論、G.イーガンの援助プロセスについて学んでいただきます。そこでは3つのステージに分けて、①現在のシナリオ、②好ましいシナリオ、③新しいシナリオの実行という考え方を紹介していきます。
そのほかに未来志向アプローチやクランボルツの理論、ジェラッドの理論などの入り口部分の紹介をしていきます。ただし、これらの理論はさっと学んだからと言って十分な理解に達するものではありません。このあと講座が進んでいくことによって深く理解をしていくものになります。
ジェラッドの理論では、未来を創造的に作り出すことが大切です。「キャリアカウンセリングは未来志向カウンセリングである」ことをテーマに、A ; そうなるだろう未来、B ; そうなるかもしれない未来、C;そうなってほしい未来、という三要素の関連を含めてこの先学んでいくことになります。
次に統合的生涯設計(ILP:Integrative Life Planning)のハンセンの理論を紹介していきます。ここでのポイントは何を統合するのか、それは決して仕事だけではない、ということです。人生を統合していくとQOL(Quality of Life)が上がるのか。講座の中では6つの人生課題を提示します。そしてハンセンによるキャリアカウンセラーへの7つの教訓を紹介します。一言でいうと、Change Agent たれ、ということであり、キャリアカウンセラーの職業的意義、価値が非常に高い視点で語られています。
次はサビカスのライフデザイン理論です。これはクライエントの人生を語ることで、その意味を理解し、ストーリーの中で人生を把握することを行っていくものです。色々な理論が出てきますが、キャリアコンサルタント、キャリアカウンセラーにとってやはりこれらの理論を学んでおくことは将来のためには必須です。ここは頑張って勉強するところです。
そして今日の講座の最後は、キャリアカウンセリングに求められることを以下の6つの視点で整理、包括です。
- 社会に対する理解
- 自己理解
- 自己変革
- 目標設定と戦略的思考
- 行動化・スキル・知識・能力の獲得
- 家族や関係する人たちへの対応
この日を含む12日間のコースでこれらのことを学びそして対応できるようになっていました。
(つづく)T.A