キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

基礎編・理論編

キャリアコンサルティントの相談のポイント

投稿日:2024年5月29日 更新日:

キャリアコンサルタントの相談実施においておける7つのポイントについて説明しますが、すべてを実行するとは限りません。クライエントのニーズに合わせて必要なものを実行します。

キャリアコンサルティングにおける相談は、ガイダンスやカウンセリングなど他の相談と重なるところや類似するところがありますので、キャリアコンサルティングの特徴を理解しておく必要があります。

木村周氏は著書『キャリアカウンセリング(改訂新版)』のなかで、キャリアガイダンスとキャリアカウンセリングについて、その他広く行われているガイダンスやカウンセリングと比較して、その特徴を述べています。それらを参考にキャリアコンサルティングの特徴を述べると、以下のようなります。

キャリアコンサルタントの相談の特徴
①問題行動の除去や治療ではなく、個人のよりよい適応や成長、あるいは発達を援助することに重点を置く。
②進路の選択、職業選択、キャリアルートの決定などの具体的な目標達成を目指すことを援助する。
③特定の理論や手法にとらわれず、さまざまな理論や手法を使用する。
④6つのステップ(キャリアガイダンスの6分野)を基本とする。
⑤カウンセリングにおけるシステマティック・アプローチをモデルとし、キャリアコンサルティングのアプローチとしては折衷的である。
⑥力ウンセリング的なかかわり方を基本とするが、他にもコンサルテーション、関係者間の調整、教育も重視する。
キャリアコンサルタントは、企業、学校、職業紹介機関、および職業能力開発機関において相談を行う。

引用:木村周『キャリアカウンセリング(改訂新版)』

次に力ウンセリングの基本的スキルとして、積極的傾聴について説明します。
面接を効果的に行うためには、力ウンセリングの基本である積極的傾聴(アクティブ・リスニング)の理論を学び、そのうえで訓練を受け、スキルとして正しく習得しなければなりません。

■「聞く」と「聴く」の違い
キャリアコンサルタントが積極的傾聴とはどういうことかを理解するには、まず「聞くこと」 と「聴くこと」の違いを理解しなければなりません。簡単に言えば 「聞く」というのは単に聞こえているということであり、相手が言わんとすることに耳を傾けること。相手の話を理解しようとして耳を傾けるのが「聴く」ということです。したがって、聞くという行動は受動的であり、聞くときにはあまりエネルギーを使いませんが、聴くという行動は能動的であり、エネルギーを必要とします。

また、話には「事実(ことがら)」、「計画(欲求・希望・要望・願望)」、「感情(気持ち)」という3つの要素(話の3要素)があり、キャリアコンサルタントはその3つのうちのどれを自分のメッセージとして伝えようとするか認識する必要があります。それを正確に理解することが「聴く」 ということです。話し手の話がよく分からないときは、話し手がこの3要素を意識せずに話している場合、話し手のメッセージがこの3要素のうちのどれかが分からない場合、あるいはどの要素かがわかっても内容がわからないなど、さまざまな場合があります。この分からなさを確かめることは、聴き手の自己理解でもあります。
(つづく)平林良人

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

傾聴とは積極的に聴くことである 

ドラッカーは近代経営学の父と呼ばれた人ですが、彼は経営者が効果的にマネジメントする8つの慣行を提案しました。その中に「最初に聴き、最後に話す」というものがあります。リーダーシップの本質は「信頼を獲得して結果を得ること」ですが、 信頼を得る行動で最大効果を生むものが聴くことであると述べています。驚くべきことに、多くの指導者は聴くことをうまくやれません。多くの調査で「指導者の聴く能力」は、評価項目で最も低いレベルに位置付けられています。最初に聴いて、最後に話しすることは大変重要なことです。 それはとても単純ですが、多くの人々はそれを理解することができません。 聞くと聴くとは違います。積極的に聞く、 …

コミュニケーション理論に基づくBFT統合モデル

キャリアコンサルタントの面談でのMRIコミュニケーション理論に基づくBFT統合モデルをお話しします。これまでと同様に若島孔文 長谷川啓三2018「新版よくわかる!短期療法ガイドブック」金剛出版から主だった箇所を引用して紹介します。 (1) ノンバーバル‐マネジメント側面への介入 バーバル‐マネジメント側面とは長谷川らがコミュニケーションを、トピック的側面-マネジメント側面の軸とバーバル(言語)-ノンバーバル(非言語)の軸の2軸で分類した象限の一つである。マネジメント側面とは対話者相互で、そこでのコミュニケーション自体の流れを規定するコミュニケーション行動と位置付けられている。 この2軸によるコ …

キャリアコンサルタントの活動領域

厚生労働省の「キャリアコンサルティング研究会」の「キャリアコンサルタント自身のキャリア形成のあり方部会」の報告書では、キャリアコンサルタントの働く分野に「活動領域」という言葉が使われ、企業領域、需給調整機関領域(就職支援領域)、教育領域、地域領域として分類されています。 キャリアコンサルティングの制度を構築するにあたり想定した活動領域、制度実施後の実際のキャリアコンサルティングの活動領域を、中央職業能力開発協会の熟練検討委員会が整理した、実践フィールドの違いによる熟練レベルのキャリアコンサルタントの特長、中央職業能力開発協会の指導レベルキャリア・コンサルタント制度設計の必要性、労働政策研究・研 …

CDW(キャリア開発ワークショップ)

CDWは”Career Development Workshop”の略ですが、CDWそのものがカウンセリングプロセスになっており、CDWの中で自己理解を深めていくプロセスを体験していただきます。このプロセスがきちんと確立されて、初めて、他の人たちはどう考えているのだろうかを客観視することができます。多様な考え方がある中で、自分のキャリア観を自己分析し、改めて自分の人生に思いを寄せて自分の仕事人生の位置づけをはっきりさせることができて、他人への視点が出てくるものだと思っています。 自分がカウンセリングするときには、どういった傾向があるのか、どういった思考で聴く癖があるのか、また返答する癖があるの …

ブリーフセラピー(Brief therapy:短期療法)とは

ブリーフセラピー(BFT)を取り上げます。キャリアコンサルティングにおいては、しばしば個人と部門・会社などの組織との関係性によって問題が生じることが少なくありません。これらの問題は直線的な因果関係から生じていることは極めて稀で、複数の事柄が相互に作用しあう因果関係から問題が生じ維持されていることがほとんどのケースに見られます。このような問題の解決は、単純に原因を探り対処するには無理があります。どちらかというと、問題を俯瞰して対処することが必要になります。 「①ほとんどの問題は人間関係の中で生まれ維持される、②セラピストの仕事はクライエントが何か新しいことをするように促すこと、③ほんの小さな変化 …