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実践編・応用編

海外進出企業で働く人々_インド_公的扶助制度  

投稿日:2024年5月9日 更新日:

インドの社会保障制度の3回目です。インドの人口は、中国を追い越して世界1位となりました。また30歳未満の人口が多いことから、今後も生産人口は増加する見込みです。I Tなどの分野で、高度な人材資源を多く有している事も有名です。ただ、インドは歴史、宗教による独自の文化があり、またビジネス慣習も日本とは異なります。そんな中で、インドへ進出している日本企業は約1,400社です。キャリアコンサルタントが日本企業で働く人とコンサル業務でかかわる事も多くなっています。

■公的扶助制度
憲法第41条において、州政府は開発や経済的能力の範囲内で失業、老齢、疾病、障害その他不当な困窮に対する公的扶助を受ける権利を確保するための効果的な対策をとることが義務付けられており、これに基づき救貧対策がとられています。中央政府は、貧困層への老齢、世帯主の死亡、妊娠等に対する給付を内容とする国家社会扶助プログラムを1995年に導入し、また2000年に国家社会扶助プログラムに基づく老齢年金を受給していない貧困の高齢者向けに食糧を支給するアナプルナという計画を導入し、直接運営してきましたが、現在は州政府へ制度導入・運営の権限が移管されており、中央政府の農村開発省が策定するガイドラインと財務省の財政援助に基づいて州政府が制度を運営しています。
(1)インディラ・ガンディ国家老齢年金計画
貧困ライン以下の世帯の60歳以上の高齢者に対して、月額370円の年金が支給されます。また、80歳以上の高齢者に対しては、月額930円に増額されます。州政府は中央政府と少なくとも同額以上の拠出をすることが推奨されています。受給者数は約2,200万人、支給額は約702億円(2022年度)。

(2)インディラ・ガンディ国家寡婦年金計画
貧困ライン以下の世帯の40歳以上の寡婦に対して、月額560円の寡婦年金が支給されます。また、80歳以上の高齢者に対しては、月額930円に増額されます。州政府は中央政府と少なくとも同額以上の拠出をすることが推奨されています。受給者数は672万人、支給額は約259億円(2022年度)。

(3)インディラ・ガンディ国家障害年金計画
貧困ライン以下の世帯の18歳から79歳までの重度又は複数の障害を持つ者に対して、月額370円の障害年金が支給されます。また、80歳以上の障害者に対しては、930円に増額されます。州政府は中央政府と同額の拠出をすることが推奨されています。受給者数は約87万人、支給額は約33億円(2022年度)。

(4)国家家族給付計画
貧困ライン以下の世帯における18歳から59歳までの主たる生計を支える者(18歳~60歳)の死亡について、一時金として37,000円が支給されます。受給者は約15万人、支給額は21億千万円。

(5)アナプルナ計画
インディラ・ガンディ国家老齢年金計画の受給資格はあるが、受給していない60歳以上の高齢者に対して、毎月10㎏の穀物(米・小麦)が無料で支給されます。2022年度予算では約17億9千万円を計上。

(6)高齢者福祉施策
全人口約14億0,756万人(2021年)のうち、65歳以上の人口は、約9,574万人であり、対人口比は約6.8%となっています。現状の高齢化率はそれほど高くないですが、年々上昇しており、今後もこの傾向は続くと見込まれます。ほとんどの高齢者の生活は、子の世代からの援助によって賄われているのが現状です。人口構成はピラミッド型であり、増加する生産年齢人口(2021年の15-64歳人口は9億5,025万人(約68%))に対する雇用の確保が大きな政策課題でありますが、今後増加する高齢者への政策も課題です。特に、医療機関や介護施設の多くが都市部に集中しており、人口の6割を占める農村部ではこれらの社会資源が不足している一方で、都市部への労働者人口の流入により、農村部に残された高齢者に対する家族のサポートの減少も懸念されています。

■障害者福祉施策
1.現状
2011年の国勢調査によると、障害者は2,681万557人であり、対人口比は2.1%となっている。障害種別にみると、視覚障害503万2,463人、言語障害199万8,535人、聴覚障害507万1,007人、運動機能障害543万6,604人、精神障害222万8,450人、複数の障害を持つ者211万6,487人となっている。なお、2018年7~12月に実施された政府のサンプル調査(NSS)によると、7歳以上の障害者の識字率は52.2%(都市部:65.5%、農村部47.2%)で、全体の74.0%(都市部:87.7%、農村部:73.5%。2017年7月~2018年8月の同サンプル調査(NSS))に比べて低く、生活のケアに加えて教育や雇用の機会確保が課題である。

2.対策
障害者福祉に関する主な法律は、①2016年障害者の権利法(Rights of Persons with Disability Act,2016)、②1999年自閉症、脳性麻痺、知的障害及び重複障害者の福祉のための国家信託法(National Trust for Welfare of Persons with Autism, Cerebral Palsy, Mental Retardation and Multiple Disability Act,1999)、③1992年インド・リハビリテーション評議会法(Rehabilitation Council of India Act,1992)の3つである。2016年障害者の権利法は、国連の障害者権利条約の批准を受けて1995年障害者(機会平等、権利保障および完全参加)法を全面改正した法律であり、2016年12月に成立した。対象となる障害は、1995年法で対象となっていた全盲、聴覚障害などに加え、筋ジストロフィーなどの疾病など21の障害種別である。主な内容は、①選挙へのアクセス、司法へのアクセス、公共の建築物・公共交通機関のバリアフリー化など障害者に対するアクセシビリティの確保、②高等教育や公務員の採用における留保枠の設定、③一定の障害がある6~18歳の児童・生徒に対し、教育を受ける権利を付与するとともに障害のない児童・生徒との統合教育の推進等である。また、自閉症、脳性麻痺、知的障害及び重度障害者の福祉のための国家信託法により、障害者支援のための信託が創設され、障害者が家族とともに生活できるような支援や、家族の支援が得られない時に支援団体から支援を得られる措置、保護者死亡時の支援等が実施されている。そのほか、インド・リハビリテーション評議会法により、リハビリテーション評議会が設置され、リハビリテーションの専門職の養成や認定がなされている。

(出典)厚生労働省 2022年 海外情勢報告

■児童健全育成施策
18歳未満人口は約5.1億人です。このうち、約1.7億人が経済的、社会的に困難な立場にあると推定されています。こうしたことに対し、女性子ども開発省及び保健家族福祉省を中心に児童の基本的人権を守るための施策が行われていますが、積極的な福祉施策には至っていません。主な政策課題は、
①乳児死亡率の低減
②児童の死亡率の低減
③妊産婦死亡率の低減
④安全な飲用水や下水設備へのアクセス
⑤児童婚姻の廃止
⑥ポリオ撲滅
⑦乳幼児のHIV感染の防止
といったものです。保育サービスは、貧困家庭の働く母親や病弱な母親の0歳から6歳までの子を対象としています。保育所は全国で2万3,293施設あり、利用者数は58万8,000人にとどまっており、カバーされていない地域も多くあります(2014年度)。
(つづく)M.H

-実践編・応用編

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