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実践編・応用編

海外進出企業で働く人々_インド_保険医療関連施策 

投稿日:2024年5月7日 更新日:

インドの社会保障制度の2回目です。インドの人口は、中国を追い越して世界1位となりました。また30歳未満の人口が多いことから、今後も生産人口は増加する見込みです。I Tなどの分野で、高度な人材資源を多く有している事も有名です。ただ、インドは歴史、宗教による独自の文化があり、またビジネス慣習も日本とは異なります。そんな中で、インドへ進出している日本企業は約1,400社です。キャリアコンサルタントが日本企業で働く人とコンサル業務でかかわる事も多くなっています。

■基本的な保健医療関連施策
2017年に公表された三か年行動計画では、保健予算を2015年度の約5,400億円(政府支出の1.7%)から2019年度には1兆8千億円(政府支出の3.6%)に増額することや、個別分野における政策方針(予防医療の強化、非感染性疾患への対策強化、医療関係者の質・量の強化、公立病院の調達効率化や質の向上など)が盛り込まれました。
国家保健施策2017が、2017年3月保健医療施策の強化を目的として閣議決定されました。この中では、予防的、促進的ヘルスケア施策を通じて、誰もが財政上の困難に直面することなく、最も高いレベルの健康状態を達成することを目的として掲げられました。また公的保健関連支出を対GDP比2.5%(2016年度は1.4%)に引き上げることや、全ての公立病院の診療や薬剤費、救急サービスを無料で提供すること、民間部門との連携強化、プライマリーケアへの資源の重点配分(高齢者医療、緩和医療等を含む包括的な医療を提供する)、ヘルス・ウェルネスセンターの設置などが盛り込まれました。

・長寿化インド計画
長寿化インド計画は、国家保健施策2017とともに、保健(健康管理・疾病予防)・一次医療・二次医療・三次医療に包括的にアプローチすることにより保健医療の質を高めるとともに、国民が質の高い医療サービスにアクセスできることを目的として、2018年2月の財務大臣による予算演説で発表されました。具体的には、次の二施策が柱となっています。
(1)健康・保健センター
約16万か所のサブ・センターの再整備による地域保健・一次医療機能の強化
(2)国家国民医療制度
これまでの国家医療制度の対象者、給付額等の拡大によるユニバーサル・ヘルスカバレッジ実現への挑戦

主要な医療制度

中央政府関係者を対象とした医療保険(Central Government Health Scheme:CGHS)の他、組織部門の低所得の労働者を対象とした従業員国家保険(ESI)がある。また2018年9月23日に貧困ライン以下の層を対象とした国家医療制度(RSBY)に替わり、国家国民医療制度(PM-JAY)が創設された。民間部門で働く労働者については、公的医療制度の対象が従業員国家保険(ESI)の対象組織部門の一定所得以下で働く者に限られており、これ以外の労働者は、企業又は個人で民間医療保険に加入していなければ重い医療負担に苦しむ可能性がある。貧困層については、これまで入院医療を含む二次・三次医療に係るRSBYがあったが、対象者が限定されており(一世帯5人まで)、支給額上限が低く、十分な医療が受けられなかった。こうした状況に対し、2018年8月にインド長寿化計画の下、RSBYの対象者を大幅に拡大し、給付内容が強化された国家国民医療制度(PM-JAY)が創設された。完全に実施されると、人口の40%をカバーすることとなる。制度の基本的枠組みは以下のとおり。

・1億760万世帯(約5億人)を対象世帯とした。対象者の抽出は、SECC(Socia-Eonomic Caste Census 2011)を基に実施。2021年7月時点で約1億3,440万世帯(6.5億人)が対象となっているとインド政府は説明している。
・二次医療及び三次医療を受けた際、1世帯年間上限50万ルピーまで支給。
・州政府指定の公立病院又は私立病院での受診が対象。2023年1月時点での指定医療機関数は26,055機関。医療機関の指定は、各医療機関の申請に基づき、州の指定委員会によって行われる(卓越した三次医療を行う医療機関は国家保健庁(National Health Authority:NHA)が直接指定を行う。)。
・24診療科、1,669項目に給付が適用され、その価格はNHAで決定される。
・給付費は原則、中央政府60%、州政府40%で負担(連邦直轄領では100%、その他一部の州では90%が中央負担)。本人負担はなし。
・サービスは、キャッシュレス、ペーパーレスで提供されることとなっており、eカード(ID)が対象者に配布(2021年11月時点で1億7千万枚が配布済み)。
インド政府では、2021年12月現在、延べ2千万回を超える入院に対して給付が行われ、これまでの累計支給額は2,500億ルピーを超えたとしている。また、給付の不正支給を防止するため保健家族福祉省は、2018年8月に不正防止ガイドラインを発出、2018年12月には実施調査・医療監視マニュアルを発出している。2021-2022年の保健・福祉家庭省年間報告において、これまでに207医療機関が指定取消しとなり、2021年11月現在1億6,550万ルピーの罰金が課されたと公表している。

(出典)厚生労働省 2022年 海外情勢報告

■医療保護の課題
インド行政委員会によると、公的な医療保護スキームや民間医療保険等により何らかの医療保護を受けられる割合は、インド全国民の7割に達しているとの見方を示しています。一方、残る3割(4億人超)が保護されていない状況を政府は懸念しており、公的保険の対象とならない中間所得層の医療保険加入への機運情勢、的確な対象者の抽出、高所得者向け商品が中心となっている民間保険会社の更なる対象者拡大、加入しやすい保険料設定、保険財政安定化のための逆選択が起きないための仕組みづくりなどの必要性を提言しています。
2021年9月、モディ首相はデジタルミッションの開始を宣言しました。インド国内の各医療機関の患者データを一意に特定し、個人単位で紐づけ、参照できるようにすることとし、そのためにヘルスIDを個人単位で振り出すというものです。医療機関におけるこのヘルスIDの使用(過去の診療歴の閲覧等)に当たっては、本人同意が前提とされています。医療機関が本人同意の基に参照できる情報は、検査歴、疾病歴、医療機関受診歴、診断結果、投薬記録等となっています。

上記以外の主な医療助成制度として、以下のようなものがあります。
① 保健大臣裁量助成制度
公立病院にて、生命の危機に瀕するような重大な病気(心臓病、がん、腎疾患、脳腫瘍など)のため、入院又は治療を受けている貧困層の人々に対する助成。助成上限は22万5千円。2021年度(21年12月末まで)は87人に対し1,859万円が支払われました。

② 国家治療基金
公立病院で治療を受ける貧困ライン以下の人々に対し、上限270万円を助成、州ごとにファンドを設立しています。2021年度(21年12月末まで)は、59人に対し1億7,530万円が支払われました。なお、国家治療基金の枠組みの下で、保健大臣がん患者基金が27の地区がんセンターが設けられ、各センターに最大933万円が割り当てられました。各センターは、がん患者への助成(最大37万円。ただし、保健家族福祉省の承認により上限を超えて助成も可。)を行います。2021年度(21年12月末まで)は、54人に対し、9,132万円が助成されています。

③ 州が運営する医療保障制度
州によって独自の医療保障制度を運営する場合があります。これら州独自の制度は、長寿化インド計画による国家国民医療制度が施行された以降も、国家国民医療制度と共存することが認められています。また、32の州・連邦直轄領において中央政府が規定する対象者を拡大し、地方財源による給付を実施しています。
(つづく)M.H

-実践編・応用編

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