■自分の「特質」とは何(自己理解)
「自己理解と他者理解」について考えます。自分の特質を知るということについて考えてみたいと思います。
自分の特質を知るということは、自分を良く知るということ、つまり「自己理解」になります。自己理解とは文字通り、自分自身を把握し理解することをいいます。「自己理解」という言葉は近年、世の中にあふれており、自己理解についての書籍や記事も豊富ですので、この言葉には馴染みがある方も多いかと思いますが、ここでは内閣府の「ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)における定義を紹介します。
自己理解とは、自己理解とは,いくつかの手段により自分の気質,性格,ある種のタイプ,価値観,考え方,態度・行動などを深く知り,それを自分自身が納得して受け止めている状態のことである。
つまり、漠然としていた自分の像を明らかにし、これこそが本来の自分の姿であると自身で理解している状態といえます。
さて、普段の生活のなかで、自分自身について知り把握する機会はどのくらいあるでしょうか。就職を具体的に考える際に、自分にはどんな職業適性があるかの根拠として自分の特質や性格等を考えることがあるかもしれません。ただ、日常生活を送る中では、なかなか考える機会はない方も多いのではないでしょうか。あるいは、「自分のことは自分が一番よく知っている。他人にとやかく言われたくない。自分のことなど他人はあずかり知らぬものだ。」と思っている人もいるかもしれません。
もし、本当の自分とはどのようなものかを理解している、あるいは理解するまでには至らなくてもかなり明らかになっている、このような状態の場合を考えてみます。このような場合、自分の行動、決定等が過去の経験などから培ってきた自分の価値観や言動のパターンに基づいている可能性が大きいことがわかるかもしれません。また、物事に対する自分の将来的な行動、決定等を予測することができ、自分自身を客観的にみることができるようになるかもしれません。最新の自分について理解を深めておくことは、就職の機会のみならず、日常生活においても役に立つ場面はあることでしょう。
では、どのようにすれば自分自身を理解することができるのでしょうか。
内閣府の「ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)」では、自己理解の方法として以下の3視点が記述されています。
①自己分析(自分の考え、自分の感じ、自分の想いなど)
②他人からのフィードバック(聴く、受け止める)
③データの活用(職業興味調査、職業適性検査、性格検査、その他)
また、自己理解を深める具体的な方法について、厚生労働省の資料にキャリアコンサルティングを行う上での自己理解サポートの実践について記述したものがあります。その部分の概要を以下に記載します。
〇自己理解の実際
自己理解への第一歩は、現在の自分を描かせてみることです。その最もよい方法は自己紹介文を書かせてみることでしょう。将来の夢、生き方・信念、長所・短所、適性・能力、学校で学んだこと、過去の経験、趣味、家族や友人などの自身に対する見方など、要するに現在の自分を表現します。どこをアピールしたいのか十分に表現させます。肯定的な部分をチェックさせます。人間は誰でも長所と短所を持っています。それが個性的だということです。個性的な人生を送るために、自分の肯定的な面を探させてみましょう。積極的か、人から頼りにされているか、失敗を恐れないか、自身の自己イメージについて、自身でチェックしたり、他人に観察・評価してもらうように勧めるのもよいでしょう。その前提としては、(1)肯定的な面で、必要なときに自分をどれだけ主張できるかは、個性的な人生を送る上で欠かすことができないこと、(2)一方、誰にでも否定的な面はあるが欠点や弱さも含めてそれが「その人らしさ」であり、個性であること、(3)それらの否定的な面がどこから来たのか、その原因を知って自分自身の見方や考え方を持っていればよいこと、などを理解させることが重要です。〇自己理解の視点
人間の基本的な考え方や希望、過去の経験、得手・不得手、行動パターンなどは、人それぞれです。自己理解とは、これらについて、より深く明らかにしてみることです。またその個人をとりまく様々な条件についても理解する必要があります。職業・職務に関連する個人の側の要因(その職業・職務が要求するさまざまな側面を十分にやりこなす個人の側の要因)については、ある人が潜在的に持っている知的能力・精神運動機能(狭義の能力)や価値観・興味等、更にOJT、Off-JT、自己啓発によって習熟された顕在的な能力である知識・技能(狭義の能力)や態度(性格やヤル気等が目に見えた形となったもの)から成り立っているといわれています。自己理解を行う上で必要なこれらの個人の側の要因項目について、個人がどのような状態にあるかを、用意されたチェックシートにより目に見えるようにしています。チェックシートで明らかになる個人の側の要因項目として次のような項目があげられています。
A キャリア指向性(キャリアシートII)
(1) 職業興味
(2)価値観
B 過去の経験(キャリアシートIII-A、III-B)
C 職業能力等(キャリアシートVI又はV)(1) 職業・職務能力
(1) 職業・職務能力
a 知識・技能
b 適性(狭義)
(2) 態度・行動パターン
D 個人を取り巻く諸条件(キャリアシートVIII)
などがあります。
<引用先> 厚生労働省ホームページ資料 キャリア・コンサルティング技法等に関する調査研究報告書の概要
URL:キャリア・コンサルティング技法等に関する調査研究報告書の概要 (mhlw.go.jp)
人は生活する中で様々なキャリアを形成し、自身とキャリアとの関係は絶えず変化していきます、それに合わせて自己理解が変わることもあるでしょうが、自己理解を常に深化させていくことが大切です。
(つづく)Y.H