キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

実践編・応用編

海外進出日本企業で働く人々_韓国_労働市場

投稿日:2024年4月15日 更新日:

昨今は海外進出している企業で働く日本人も多数います。彼らを取り巻く状況を知っていることもキャリアコンサルタントには有用なことです。今回は韓国の労働市場についてお伝えします。

■2023年最近の動向
1.尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権の「6大国政目標」と「110大国政課題」
2022年5月10日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任し、「6大国政目標」が定められました。具体的には、①常識を取り戻した正しい国、②民間が引っ張り、政府が後押しするダイナミックな経済、③あたたかく寄り添い、誰もが幸せな社会、④自律と創意で作る揺るぎない未来、⑤自由、平和、繁栄に寄与するグローバルな中枢国家、⑥韓国のどこでも暮らしやすい地方時代の6つです。⑥を除くそれぞれの国政目標には、全部で110の国政課題が置かれており、①に15、②に26、③に32、④に19、⑤に18の国政課題が置かれています。このうち、労働分野に係る課題は、3つめの目標の「あたたかく寄り添い、誰もが幸せな社会」に置かれた32の課題のうちの次の7つであります。

① 労働災害防止の強化及び企業自律の安全管理体系構築の支援
② 公正な労使関係の構築及び両性平等雇用の実現
③ 労使の協力による共生の労働市場の構築
④ 雇用事業の効果の向上及び雇用サービスの高度化
⑤ 雇用のセーフティネットの強化及び持続可能性の向上
⑥ 全国民の生涯段階別職業能力開発と職場学習の支援
⑦ 中小企業・自営業者へのオーダーメード型職業訓練の支援強化
これについては、労働組合は不平等社会と二極化を懸念しており、経営者側は規制緩和を高く評価しています。

2.労働市場改革
労働市場改革は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「新政権の経済政策方向」においても取り組むべき課題として取り上げられているものとなっています。2022年6月23日、雇用労働部のイ・ジョンシク長官は、新政権の労働市場改革推進の方向性に関するブリーフィングを行い、労働時間制度と賃金体系の改編を喫緊の課題として取り上げました。

労働時間制度は、2018年に勤労基準法が改正され、労働時間の上限は週52時間に定められました。以降、制度の定着に努めてきた一方、労働時間の「短縮」と企業や業種の経営環境の「多様化」の間でバランスを取るべく柔軟に対応すべきとの要望が強く、これを勘案し、①週単位での管理としている労働時間の上限を月単位での管理にするなど合理的な総量管理の期間に関する方案、②選択的勤務時間制について、研究開発分野のみ精算期間を3か月としている現行制度を、その他職種にも拡大すること等を検討することとしました。これにより、基本的な労働時間の上限は現行制度を維持しつつも、繁忙期の業務量の増加にも柔軟に対応する制度を模索するとしています。

賃金体系については、韓国では一般的に年功色の強い賃金体系となっていることから、時代に沿った賃金体系とすべく、①終身雇用と年功序列の賃金体系の見直し、②賃金ピーク制や再雇用などの合理的な制度改善を検討することとしました。同部では、7月から10月にかけての4か月間に、関係する専門家とともに「未来の労働市場研究会」を開催し、その後具体的な立法課題と政策課題を抽出するとしました。

新型コロナウイルス感染症に関する雇用対策
2017年10月の雇用政策ロードマップ(5年間)の発表以来、文在寅(ムン・ジェイン)前政権はジョブセーフティネットの強化やイノベーション人材の育成、最低賃金の引き上げや週52時間労働の導入などのタスクを実行し、その結果、労働市場の賃金格差の縮小や労働時間の短縮などが図られた。就業率は史上最高に達し、特に雇用市場で脆弱とみなされている若者、女性、高齢者の就業率はすべて上昇した。しかし、2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、2020年3月以降雇用指標が悪化し、被用者数が急減、失業率が上昇した。これに対応するため、政府は、2020年から2021年にかけて72兆ウォンに相当する雇用パッケージを策定した。

雇用維持補助金については、新型コロナウイルスが原因で操業が中断された事業所は、2020年1月29日から、生産量の減少などの要件を証明する必要なく、雇用調整が避けられなくなった事業主として認定されることとされたほか、2020年9月末まで支援水準が引き上げられた。

特に、旅行業、観光運送業、観光宿泊業、公演業、航空機取扱業、免税店、展示・国際会議業、空港バスの8つの観光関連業種を「特別雇用支援業種」に指定し、事業所の規模にかかわらず、2021年3月31日までの間、支援水準を90%(1日当たりの上限は7万ウォン)に引き上げた。2020年8月24日からは、この8つの特別雇用支援業種の企業の支援期間を60日延長した(最大180日→240日)。さらに、2020年10月20日、その他の業種に対する支援期間も2020年内は60日延長することとした(最大180日→240日)。また、緊急雇用安定補助金プログラムを含む様々な収入支援プログラムを実施し、収入支援を提供した。これにより自営業者など雇用保険の対象外の者に対しても支援を行った。2020年から2021年にかけて累計約179万人が緊急雇用安定補助金を受給した。さらに、低所得者や若者など、脆弱なグループの者が労働市場にとどまることができるよう、政府予算を使用して、公共部門と民間部門の両方で雇用を創出するよう努めた。これにより、2020年には約159万人の雇用が、また2021年は10月までに約139万人の雇用が創出された。(出典)厚生労働省 2022年 海外情勢報告

(つづく)Y.H

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

わが国の国土交通行政の展開

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 国土交通省は、陸海空にわたる諸活動の基盤に関して、国土の総合的な利用と保全、社会資本の整合整備、交通政策の推進、観光立国の推進,、海上の安全の確保などを任務としています。これらの多岐にわたる取組みの目指すところは、安心・安全で豊かな自立し活力ある暮らしを可能にすることにより私達の暮らしを支えることといえます。今回は、国土交通行政の展開についてお話しします。 ◆東日本大震災からの復旧・復興の現状と対策 東日本大震災からの復旧・復興事業については、国土交通省の最優先課題の一つであり、一日も早い復興を目標に全力で取り組んできました。 そ …

海外進出日本企業で働く人々_インド_雇用施策

インドの人口は、中国を追い越して世界1位となりました。また30歳未満の人口が多いことから、今後も生産人口は増加する見込みです。I Tなどの分野で、高度な人材資源を多く有している事も有名です。ただ、インドは歴史、宗教による独自の文化があり、またビジネス慣習も日本とは異なります。そんな中で、インドへ進出している日本企業は約1,400社です。キャリアコンサルタントが日本企業で働く人とコンサル業務でかかわる事も多くなっています。今回は、インドの雇用策についてお話しします。 インドの2020~21年度の経済成長率は、コロナ禍によりマイナスとなっていますが、その後は回復傾向にあります。労働者は、非組織部門 …

日本における安全・安心社会の構築 3

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 前回に続き、安全・安心社会の構築についてお話しします。安全の目的が、事故防止だとすれば、安心の目的は心を安がらせることです。心の持ちようは、人それぞれであり、保険を例にすると、基本的プランで満足の人もいれば、様々なオプションを付けなければ不安な人もいます。一方、安全はもう少し客観性が必要です。「気を付ければ大丈夫」と主張されても多くの人は、納得しません。例えば猛犬を鎖で繋いだ状態のように客観的に見て、事故の確立等が低減されている必要があります。「安全」は客観性が必要で、「安心」は主観的要素が強いということです。 ■災害に強い安全な …

持続可能な医療・介護の実現 5

 キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 持続可能な医療・介護の実現についての最終回です。少子高齢化によって、ますます労働力の減少が進んでいます。医療・介護も例外ではなく、将来的に医師や看護師、介護従事者が減っていくことは避けられません。つまり、社会と同じく需要と供給のバランスが崩れてしまう可能性があります。このバランスをどう保っていくかが、医療・介護業界の課題です。また、医療費も今後増える一方であり、税金が減ってしまえば、必然的に社会保障費の確保が難しくなってきます。 ■医療・介護の連携 要介護認定率や認知症の発生率等が高い75歳以上の高齢者の増加に伴い、医療ニーズと …

海外進出日本企業で働く人々_イギリス_社会保障施策 2

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 前回に続き、英国の社会保障施策の2回目です。英国は、ヨーロッパ最大の人口を誇る巨大消費市場やビジネスハブとしての優位性を持ち合わせており、英国政府も外国企業への投資を促進するための税制上のインセンティブを提供しています。例えば他の多くの国に比べて、法人税率が低く設定されていることは良く知られています。そうした中、英国に拠点を持つ日系企業は約960社、最も多く進出しているのが製造業で約330社です。 ■公衆衛生施策 1.地域保健サービス 地域保健サービスは、病院サービス、一般家庭医サービスと並ぶ国民保健サービスの柱の一つです。従来は …