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実践編・応用編

海外進出日本企業で働く人々_中国_障害者福祉その他

投稿日:2024年4月18日 更新日:

昨今は海外進出している企業で働く日本人も多数います。彼らを取り巻く状況を知っていることもキャリアコンサルタントには有用なことです。今回は中国の社会保障について、障害者福祉、その他についてお伝えします。

■中国の障害者福祉
1.現状
中国の障害者は2020年末で8,502万人と推計(10年ごとに推計)されており、労災事故や交通事故による身体障害者が増加する傾向にある。1988年に中国障害者連合会が設立され、政府の委託を受け、障害者の代表機関として、障害者の権益保護のための活動を実施している。1991年に「障害者保障法」が施行され、障害者の権利、政府の責務、各政府及び社会において実施すべき対策(リハビリテーション、教育、就業対策、文化生活、福祉、環境等)等の障害者対策の全般にわたる基本的事項・対策指針が定められた。また、2008年4月には、障害者の差別禁止条項の充実、教育における特別支援の実施、雇用の促進等を強化する同法の改正案が全国人民代表大会で成立し、同年7月から施行された。同改正により、国は全ての障害者に対して、リハビリテーション、教育、労働・就業、文化的生活、バリアフリー環境、社会保障等を権利として保障することが明記された。また、2017年に「障害の予防・障害者のリハビリテーション条例」が公布され、障害の予防と軽減、社会参加を促すための国の責務が示された。

2.施策の方向性等
障害者に特化した所得保障制度はなく、健常者と同様に、各制度の要件に合致する者(都市部住民が中心)に対してのみ各制度の一般的な給付が行われるほか、企業に対する税制優遇等を通じた就業参加(福祉工場等の障害者用の就業の場の確保)が促進されるに留まっている。就業促進以外の施策としては、リハビリテーション等の提供体制の整備及び障害者教育等が行われている。障害者に対するリハビリテーションや医療等については、医療機関や地域(社区)のリハビリセンターが中心となって整備を進めているが、財政負担が十分ではなく寄付等に拠っていることから、供給が不足している。また、一部の障害者は、社会福利院等に入居しているが、これらの施設は障害者に特化した施設ではなく、困窮者向けの収容施設であり、数も少ない。一方で、これらのサービスを受けるためには、医療保険や労災保険の加入者や就業先の費用負担を受けられる一部の者を除き、受益者負担となっている。このためサービスを享受できない障害者も多い。

2022年政府活動報告においては、「障害の予防とリハビリのサービス向上を図る」とされている。2007年に公布された「障害者就労条例」に基づき、障害者の就労支援の枠組みとして、政府設立の福祉企業や盲人按摩機構等への就業、障害者雇用率に基づく就業等が取り組まれている。

(出典)厚生労働省 2022年 海外情勢報告

■児童福祉
孤児や貧困地域の農村部等から都市に流入した浮浪児等をはじめとする困窮児童に対する対策が中心であり、児童手当等一般児童向けの統一的な施策はありません。困窮児童に対する対策は、児童福利院等の入所施設への収容が中心となっている(2021年末の入所児童数は5.3万人)。また、孤児等は養子縁組によって扶養される者も多く、2021年では1.2万件に上っています。

■公的扶助制度
(1)都市住民最低生活保障制度
生活困難者に給付を行う最低生活保障制度が、1993年頃から一部地域で導入が進められ、1997年以降、全国的に整備が進められています。各地の最低生活保障制度をできる限り統一的に運営するため、1999年に「都市住民最低生活保障条例」が公布され、全市及び全県にて実施されることになりました。2021年末の受給者は737.8万人で、受給者数は2009年をピーク(2,345.6万人)に減少しており、特に2016年以降(1,701万人)の減少が顕著です。対象者は、収入が最低生活保障基準未満の都市住民で、最低生活保障基準は各地の生活状況や財政状況等を勘案して、各地方政府が定めることとされているが、概ね各地平均賃金の20~30%です。管理運営は、各市及び県が行い、給付内容は地方政府の認定の際、資産状況も調査され、最低生活保障基準から収入額を控除した額が給付されます。

(2)農村最低生活保障制度
1994年頃から農村部でも最低生活保障制度が導入されました。2003年以後、中央政府の政策強化により、農村最低生活保障制度は飛躍的に発展しており、2007年末には全省で確立されました。2021年末の受給者は、約3,474.5万人です。

(3)包括的な制度体系
都市住民最低生活保障条例の制定以降、中国政府は公的扶助制度を充実させるため、医療、衛生、廉価住宅、法律扶助などの様々な分野で様々な規則や条例を制定してきました。2014年には「社会扶助暫定弁法」を制定し、これにより、都市と農村の最低生活保障制度が同じ枠組みに入るとともに、基本生活扶助を基本とし、医療扶助、教育扶助、住宅扶助、就労扶助、災害扶助、臨時扶助等を含む包括的な制度体系が成立しました。公的扶助に関し、中国政府は「応保尽保」(できる限り支援を必要とする者全てを保障・救済の対象にする)との方針を掲げているが、最低生活保障制度の保障水準は現地住民の基本生活に必需の衣食住費用に基づき設定されているため、保障水準が低いとの指摘もあります。2022年政府活動報告では、「民生の最低ラインの保障と生活困窮層の救済を強化」するとされています。なお、地域格差が大きい中国では、全国統一的な基準設定が難しいためにナショナル・ミニマムは存在せず、支援措置の具体的な内容は地方政府が定めています。

6 最近の動向
(1)社会保障制度に関する動向
地域の経済水準や都市部で生活する者の経済水準には大きな差があることから、社会保障制度も多層的に構築されています。各種の社会保障施策は、中央政府が定める政策の下、地方政府が自己裁量で制度詳細を設計していることから、制度間・地域間の格差は大きく、都市部における経済水準の高い層と比べ、農村部や社会的弱者層(老人、障害者、失業者、無・低収入者、出稼ぎ者、農民等)に対する保障は十分ではありません。そのため、中国政府は、制度対象者の拡大や給付水準の引き上げ等に取り組んでいます。2021年3月の全国人民代表大会で承認された「第14次五か年計画・2035年ビジョン目標」においては、2035年までに「共同富裕」の実質的進展を得るとの目標が掲げられており、これらの方針は2022年に開催された第20回共産党大会報告でも維持されており、社会保障制度においても、所得再分配のための各種施策が一層講じられていくと見込まれています。

(2)年金の支給開始年齢、法定退職年齢の引き上げ
年金の支給開始年齢については、法定退職年齢と一致させており,民間企業の場合、男性が60歳、女性は幹部職員が55歳、その他の女性労働者が50歳です。支給開始年齢の引上げについては、長年議論が継続されており、第14次五か年計画(2021年-2025年)においては、法定退職年齢について、4つの原則(①少しずつ調整、②弾力的実施、③分類して実施、④統一的に計画し各方面に配慮)に従い、段階的に実施するとされました。

(3)医療保険制度における制度間・地域間格差是正の動き
中国の医療保険制度は、加入率は95%を超える一方で、制度間・地域間で保険給付の対象や給付水準に格差を抱えており、制度は各地方政府が運用しているため、従来、保険加入登録地ではない他省で受診した場合、保険給付の対象外とされてきました。中国政府はこうした課題の改善に取り組んでおり、2022年政府活動報告においては、保険加入登録地ではない他省での医療保険即時適用方法の改善、基本医療保険の省級統一管理の推進、全国での基本医療保険適用医薬品目の基本的統一等の方針が掲げられました。

(4)「健康中国」に向けた取組2016年8月、習近平国家主席以下、幹部も出席のもと、全国衛生・健康大会が開催されました。衛生・健康に関する会議に国家主席が出席するのは21世紀において初めての出来事です。習近平国家主席からは、「全面的な健康がなければ『小康社会』も語れない」との発言があり、2016年10月、健康分野における初の中長期的な国家計画である「健康中国2030計画綱要」が公表され、2030年までに主要な健康指標を高所国水準に達成する等の目標が設定されました。2019年7月、国務院は「健康中国実施行動計画」を発表し、「計画綱要」の目標を達成するために必要な取組を具体化し、3大主要任務(健康に影響する諸要因への全面的介入、健康なライフサイクルの維持、重大疾病の防止)で計15項目の特別対策が定められました。2021年3月の「第14次五か年計画・2035年ビジョン目標」においては、健康中国の建設を全面的に推進するとし、感染症対策の強化を中心とする公衆衛生体系の強化、医薬衛生体制改革の深化、医療保険制度の健全化、中医薬の伝承・革新の推進などに取り組むとされました。(つづく)Y.H

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