キャリアコンサルタントの知恵袋 | 株式会社テクノファ

実践に強いキャリアコンサルタントになるなら

国家試験

キャリアコンサルタント国家資格合格 熟練レベル

投稿日:2024年9月1日 更新日:

キャリアコンサルティング技能検定2級試験は、「熟練レベルのキャリアコンサルタント」に求める能力判定の試験です。
「標準レベル」に該当するキャリアコンサルタントの場合には、キャリアコンサルティングの実務経験は問われません。国家資格試験に合格し登録した人はキャリアコンサルタントを名乗ることができます。しかし、この場合は国家資格試験に合格したというだけであり、実態としてはキャリアコンサルティングの実務経験がある人もいれば、実務経験がまったくない人もいます。それではキャリアコンサルティングの質を確保することが難しいので、 厚生労働省は「事実上の標準レベル」として熟練レベルを設定しています。

「熟練レベルのキャリアコンサルタント」に求められる能力要件として、厚生労働省は「標準レベルで求められる能力要件に『厚みと広がり』が求められる」としています。この「厚みと広がり」については厚生労働省の委託を受けた中央職業能力開発協会のキャリアコンサルティング研究会の報告にまとめられている熟練レベルのキャリアコンサルタントの特長が参考になりますので、ここではその報告書で述べられている内容について説明します。 なお、これもキャリアコンサルティング技能検定2級試験における判定対象になります。

熟練レベルのキャリアコンサルタントは、先に述べましたが、標準レベルのキャリアコンサルティングができていること、キャリアコンサルティングの十分な実務経験があることが前提として求められます。そして、「厚みと広がり」とは、標準レベルのキャリアコンサルタントとして求められる知識について、より詳しくかつ深く理解していること、そしてより高度なキャリアコンサルティングのスキルを習得していること、という意味であると解釈できます。

前述の報告書では、以下の9項目をあげています。
1.アイデンティティ(個性)
キャリアコンサルタントとしての自分なりのアィデンティティを有し(または探求し)、キャリアコンサルティング活動の基本的なスタンスがぶれていないようにします。自分自身のスタンス、限界等を自覚しているとともに、それを理論と実践に即して言語化できていることがポイントです。
キャリアコンサルティングはキャリア開発・形成の支援活動ですから、来談者の生き方にかかわる活動でもあります。そのような活動をする場合には、支援者自身がしっかりしたアイデンティティを持っていないと、来談者を混乱させたり、動揺させたりすることになりかねません。

2.役割認識
実際のキャリアコンサルティング活動において、キャリアコンサルタントとしての任務範囲を十分に理解し、キャリアコンサルティングの目的や適切な支援を行うための手段を自覚していることが重要です。キャリアコンサルタントは傍役であることを十分に認識し、自分に求められている役割を果たすうえで、自分は何ができて何ができないかを認識しながら行動することが求められます。

3.倫理観
社会人としてのモラルを有し、ルールを遵守しているとともに、 キャリア開発・形成支援の専門家としての高い職業的倫理観を有し、実際のキャリアコンサルティング活動で体現していることが大切です。キャリアカウンセリングにおいては、職業倫理が強く求められます。キャリアコンサルタントはキャリアカウンセリングにおいて求められる職業倫理とは何かを明確に理解し、倫理に基づいて行動することが重要です。

4.自己動機づけ
キャリアコンサルタントは、自分がなぜコンサルティング活動を行うのか、その活動が自分自身のキャリア開発上でどのように位置づけられているのか、具体的に行動で示すことが求められます。キャリアコンサルティング活動の推進に対して、キャリアコンサルタントとしての責任感を有し、常に自己を動機づけして自律的・積極的・前向きな態度を示していることが重要です。

5.来談者中心のスタンス
来談者中心(client-centered)をキャリアコンサルティングのすべての基本とし、来談者中心志向のかかわりを行っていることが重要です。システマティックに行うだけでなく、人に対する温かい気持ち、尊重する気持ちで接することができていること、及び来談者の主訴の理解に心を配り、それに焦点をあてた支援ができていること、並びにクライエントの力を信じ、助言が必要なときにも教えすぎないことなどが含まれます。
自分の人生の主人公は本人ですから、キャリア開発・形成はあくまでも個人主導であり、答えを出すのは本人である、というスタンスで来談者と向き合うことがキャリアコンサルティングの基本です。キャリアコンサルタントは来談者中心の理論を学び、実践できることが求められます。

6.積極的傾聴と建設的フィードバックの基本スキル
キャリアコンサルタントは専門家ですから、積極的傾聴の理論を学び、正式な訓練を通してそのスキルを習得していることが求められます。
そのためには、来談者の真の主張、悩みを感じ取り、理解したことを言語化して返すが、基本的には、来談者自身の成長(自己内省)を待つことができていること、また、自分が依拠する理論やスキルをきちんと習得し、これに基づく適切な支援を行うことができていることがポイントになります。

7.キャリアコンサルティングに関する準拠理論の理解、得意領域の構築
キャリアコンサルタントは、勘と経験に基づいて行動するのではなく、自分の考えや行動が理論的に裏づけられていて、なおかつそれを説明できることが求められます。
そのためには、
・カウンセリング理論
・発達心理学
・人的資源管理
・組織行動論
・労働法規など
キャリア開発・形成支援に必要な基本的知識やノウハウを体系的に習得しているとともに、他者に解説・説明できていることが必要です。また精通した領域を持ち、その領域のツールについて、効用や限界を理解していることも求められます。
キャリアコンサルタントは、勘と経験に基づいて行動するのではなく、自分の考えや行動が理論的に裏づけられていて、なおかつそれを説明できることが求められるわけです。

8.内省的実践と自己練磨(絶えざる学習)
キャリアコンサルタントは、コンサルティングには確定的な解答があるわけではないことを自覚し、自分の技量や資質を高める努力を怠らないことが求められます。
驕らず、自分を過信せず、継続して学習していること、失敗経験を反省するとともに、自身の力量を自覚し、自らの活動のフィードバックの機会を求めて、自己理解と行動改善に努めることが重要です。

9.組織化と連携
来談者を支援するための環境や体制づくりを行っていること、キャリア開発・形成支援のためのリソースを組織し、関係者と効果的に連携するとともに、支援のための人的ネットワークを構築することが大切です。
1人のキャリアコンサルタントができることには限界があります。 一方、キャリア開発・形成の支援は多面的な支援が求められますので、キャリアコンサルタントは自分の活動を補完するためのネットワークを持ち、そのネットワークを活用した適切な支援をすることが求められます。
標準レベルと熟練レベルの違いを、よりわかりやすく表現するなら、標準レベルのキャリアコンサルタントはキャリア開発・形成の支援を行う専門家としての入り口に立った人であり、熟練レベルのキャリアコンサルタントはベテランのキャリアコンサルタントということになるでしょう。キャリアコンサルティング技能検定2級試験は、このような熟練レベルのキャリアコンサルティング機能を十分に果たすことができているかどうかを判定するものです。
(つづく)A.K

-国家試験

執筆者:

関連記事

キャリアコンサルタント国家資格合格 I テクノファ

厚生労働省はキャリア開発・形成を支援するキャリアコンサルティングという専門的な活動を担う人材を、登録制の名称独占資格のキャリアコンサルタントとして、標準・熟練・指導の3つのレベルに分けて能力要件を定めています。 3つのレベルで、それぞれ求められる機能は違っていますが、キャリアコンサルティングを行う人は、そのレベルを問わず、自分自身のキャリア開発・形成に真正面から取り組み、悩み、考えるキャリアコンサルティング・マインドを持つことが求められています。 一定の職業経験があり、キャリアコンサルティングに関する基礎的な知識を持っている人事部門の人や、都道府県の職業能力開発協会、民間の教育研修機関などが実 …

2018年改正された働き方改革関連法

2018年6月に可決、成立し7月に法律公布、改正された働き方改革関連法は順次施行されています。キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティング業務を行う上でかかわりがある法律の改正を伴うものです。この法律は多くの法律に関連していますが、キャリアコンサルタントが知っているべき主要な労働に関する8つの法律についての主な改正点は次のようになります。 1.第一条 労働基準法関係 ・フレックスタイム制の拡充 ・時間外労働の上限規制 ・年5日の年次有給休暇の確実な取得 ・高度プロフェッショナル制度の創設 ・月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ ・労働条件の明示の方法 ・過半数代表者の選任 2. …

多様な働き手の参画 3

キャリアコンサルタントが知っていると有益な情報をお伝えします。 前回に続き、多様な働き手の参画についてお話しします。労働参加率の向上について、特に期待されるのは女性、高齢者等の多様な働き手の労働参加です。我が国において、出産や育児による離職は女性の労働参加に大きな影響を与えていると考えられています。そのため、女性が子供の成長に合わせて柔軟な働き方に変えていくことが必要です。 また、高齢者の労働参加率は他国の平均より高い水準にあります。一方で、年齢に関わりなく元気である限り、働きたいと考える高齢者への対応はより重要であると考えられます。今回は、女性、高齢者等の多様なな働き手の参画についてお話しし …

「労働安全衛生法」の改正項目を説明します

キャリアコンサルタントのキャリアコンサルティング業務に係る法律についてです。近年の働き方改革における種々の取り組みの一環としてで、働き方改革関連法で改正されましたが、その中の一つである「労働安全衛生法」の改正項目を説明します。キャリアコンサルタントには必須な労働法規の最新情報ということになります。 【労働安全衛生法】 改正項目 産業医の誠実な職務遂行、産業医への必要な情報提供が新設された。 産業医に対し労働者の労働時間その他、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供することが新設された。 事業者が勧告を受けたときは、勧告の内容などを衛生委員会又は安全衛生委員会に報告する義務 …

キャリアコンサルタント養成講座 12日間受講体験記 5

【8日目 キャリア・ガイダンス】 本講座キャリアコンサルタント養成講座も8日目になりました。8日目は、世の中の実情を踏まえて、各種の言葉や法体系等について学びました。最初は、「キャリアコンサルティング 理論と実際」木村周著(一般社団法人 雇用問題研究会)を使用して、まずはキャリア・ガイダンスという言葉の説明を受けました。「一定の又は特定の職業に従事するために必要な知識,技能,態度をはぐくむ教育」としての職業指導を言いますが、キャリア・ガイダンスという言葉は学校教育の世界などで広く使われています。 最近のキャリアガイダンス論は「情報」の重要性を徹底して強調する。キャリアガイダンスにおける情報とは …