厚生労働省はキャリア開発・形成を支援するキャリアコンサルティングという専門的な活動を担う人材を、登録制の名称独占資格のキャリアコンサルタントとして、標準・熟練・指導の3つのレベルに分けて能力要件を定めています。
3つのレベルで、それぞれ求められる機能は違っていますが、キャリアコンサルティングを行う人は、そのレベルを問わず、自分自身のキャリア開発・形成に真正面から取り組み、悩み、考えるキャリアコンサルティング・マインドを持つことが求められています。
一定の職業経験があり、キャリアコンサルティングに関する基礎的な知識を持っている人事部門の人や、都道府県の職業能力開発協会、民間の教育研修機関などが実施するキャリアコンサルティングの講習・研修を受けた一般の管理職の人などはキャリコンサルタントの入り口に立っています。
人の生涯において生きがい、働きがいといったことまでも含めて、それぞれの個人がどのように職業にかかわり、キャリアを開発・形成していくか考え、自らマネジメント(自立/自律)するという、個人主体のキャリア開発・形成を、業務遂行等の日常的な場面で、広く一般に普及するようにつとめるとともに、キャリア開発・形成の目標設定・実行にかかわる相談を担うのがキャリアコンサルティングです。
最初は、主体的なキャリア開発・形成について自己理解が基本になります。したがって、日常の活動は自己理解の支援が中心になります。たとえば、仕事上の目標設定場面などでも本人のキャリア開発・形成と関連づけた目標設定ができるような支援ができることなどが求められることになります。また、キャリア開発・形成上の目標も比較的短期の目標設定となり、その目標を達成するための支援活動が中心となります。
キャリア開発・形成に関する専門的な支援が必要な場合や、長期的なキャリア発達の視点に立った中・長期的なキャリア・プランを作成する必要があるような場合には、そのような支援ができる専門家であるキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングに導くこと(リファー)が大切です。これは、自分ができる支援の範囲を超えた活動は行わないということであり、いわば職業的倫理と言えるものです。適切な支援ができる人が適切な判断に基づいて適切な支援を行うことによって、はじめて個人主導のキャリア開発・形成が推進されるからです。
キャリアコンサルタント国家資格に合格するには、まず次の3つのレベルについての理解が必要です。
1.標準レベルのキャリアコンサルタント
標準レベルのキャリアコンサルティングでは、キャリア発達の視点に立ち、来談者の将来の生活設計(ライフ・プラン)と関連づけながら現在の職業選択を援助したり、他のさまざまな生活上の社会的な役割なども考慮に入れたキャリア開発・形成(キャリア・プラン)を考え、中・長期的な目標を設定し、その実行を支援・援助したりする機能が求められます。厚生労働省はキャリアコンサルタントを国家資格とし、国家試験により求めるキャリアコンサルティング能力を満たしているかどうかを判定しているので、この試験に合格し登録している人が該当します。
2.熟練レベルのキャリアコンサルタント
キャリアコンサルティング技能士2級が該当します。標準レベルのキャリアコンサルタントが3年以上の業務経験を有すると2級技能士受験資格が生まれます。
一定の職業経験および十分なキャリアコンサルティングの経験があり、経験の浅いキャリアコンサルタントの模範となり、適切な助言ができるだけの資質を有している人です。
熟練レベルのキャリアコンサルタントには、キャリア開発・形成を支援する専門家としてのアイデンティティを探求しているとともに、専門家としての倫理観を持ち、キャリアコンサルタントとして活動できる役割と能力の範囲を十分に認識していることが求められます。さらに、キャリアコンサルティング活動を推進するために、自ら前向きに動機づけて活動していることが求められます。
キャリアコンサルティング技能検定2級試験は、この熟練レベルのキャリアコンサルティング機能を十分に果たすことができるかどうかを判定するものです。
3.指導者レベルのキャリアコンサルタント
キャリアコンサルティング技能士1級の人が該当します。熟練レベルのキャリアコンサルタントとして3年以上の業務経験があると1級技能士受験資格が生まれます。
十分な職業経験および豊富なキャリアコンサルティングの経験と知識をもとに、熟練レベルのキャリアコンサルタントに対して効果的なキャリアコンサルティングの指導ができるだけの資質と専門性を有している人です。キャリアコンサルティング技能検定1級試験は、この指導レベルのキャリアコンサルティング機能を十分に果たすことができるかどうかを判定するものです。
キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを効果的に行うためには、他の専門機関とのネットワークを持つことは必要な要件ですが、資質の向上を図るうえでは、より上級の専門家による指導(スーパービジョン)を受けることも必要となります。
(つづく)A.K