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基礎編・理論編

相談者の面接目標達成ヘルピング技法_キャリアコンサルティングとキャリアカウンセリング

投稿日:2024年8月6日 更新日:

ヘルピング技法のうち(1) かかわり技法(事前段階)の解説はご存知のことばかりで目新しくなく期待外れだったとの感想をお持ちの方がいらっしゃったと思います。
しかしながら、私はキャリアカウンセリングであってもキャリアコンサルティングであってもこの目新しくないという点がとても重要なことだと思っています。これは、実際の個々のキャリアコンサルティングの場面を重ねて、國分康孝1996年のカウンセリング技法論における『面接目標達成のために、カウンセラーがクライエントにどういう反応を重ねていくか。』を再考してみると、次のように考えられるからです。
まず、面接目標について担当したケースを振り返ってみると、似ていても全く同じものはないと私たちは実感しています。また、適用場面、そしてキャリアコンサルタントとクライエントの各個性は異なっているわけですから技法の適用とその反応についても当然違ったものになると思われます。キャリアコンサルティングにはこのような現実がありますから、どのような場面でも適切に選択して面接目標に近づけるように既存の主要な技法や理論を習熟することはとても大切です。これだけでは対応が難しい、あるいはリフレッシュが望ましいと実感したとき、新しい技法や理論を勉強すればよいと思います。

今回はヘリピング技法(2)~(4)の全体像を記し、その後にヘルピング技法の各段階におけるマイクロ技法の適用を試みます。なお、以下の内容は、國分康孝1996年「カウンセリングの原理」、木村周2016「キャリアコンサルティング理論と実際」からの引用を私の解釈を含めて再構成してあります。また、以下の解説ではマイクロ技法で用いられるカウンセラーをヘルパー、クライエントをヘルピーと表示してあります。

1.ヘリピング技法解説の続き
(1) かかわり技法(事前段階) 前回解説を振り返ってみてください。
① ヘルパーはかかわり技法でかかわり、ヘルピーは参入というかたちで応じることで、ヘルピーが自分の体験をヘルパーと分かち合おうとする段階。
② 具体的技法は、かかわりへの準備、親身なかかわり、観察、傾聴。
(2)応答技法(第1段階)
① ヘルパーは応答技法でかかわり、ヘルピーは自己探索というかたちで応じることで、ヘルピーが自分の実態「現在地」に気づくことを目指す段階。
② 具体的技法は、事柄への応答、感情への応答、意味への応答。
(3)意識化技法(第2段階)
① ヘルパーは意識化技法でかかわり、ヘルピーは自己理解を深めるというかたちで応じることで、ヘルピーがなりたい自分の「目的地」に気づくことを目指す段階。
② 具体的技法は、意味、問題、目標、感情の意識化。
(4)手ほどき技法(第3段階)
※ (第1段階)の「現在地」 から(第2段階)の「目的地」 へ移行するにはどうすればよいかを工夫する。この工夫の段階を手ほどき技法という。
① ヘルパーは手ほどき技法でかかわり、ヘルピーはそれを行動化(「目的地(目標)」に到達するために計画を立て、それを実行)する段階。
② 具体的技法は、目標の明確化、行動計画の作成、スケジュールと強化法の設定、行動化の準備、各段階の検討の手ほどき。
(5)援助過程の繰り返し
ヘルパー・ヘルピーの相互作用としての(第1段階)から(第3段階)の各結果を検討しながら、必要に応じて適切な段階へ行き戻りしながら援助過程を繰り返す。
出典 國分康孝1996年「カウンセリングの原理」、
木村周2016「キャリアコンサルティング理論と実際」

2.ヘルピング技法の各段階におけるマイクロ技法の適用
これまで解説してきたヘルピング技法については、キャリアカウンセリングにおけるシステマティック・アプローチの考え方と多くの点で共通しており、分かりやすさと実際への応用のしやすさという点でキャリアコンサルタントには必須のものと捉えています。具体的には、前述1.のヘルピング技法の全体像と(1)~(4)各段段階のそれぞれの目的をしっかり理解する。そのうえで、各段階の具体的技法を使いこなせるのが望ましいと考えています。
ただし、前回と重なりますが、具体的技法は、國分康孝1996年が、マイクロ技法について「現存の各理論、各技法をそのまま受身的なものから能動的なものに並べたもの」、ヘルピング技法について「現存の各理論、各技法をいちど融合させてからカーカフのことばでオーガナイズしたもの」と述べていることもあり、技法の背景理論を振返りやすい点で、マイクロ技法の各技法を学ぶ方が合理的と考えます。
さて、ヘルピング技法の各段階((2)応答技法(第1段階)、(3)手ほどき技法(第3段階)、(4)手ほどき技法(第3段階))におけるマイクロ技法の適用について、私は下記のように捉えています。
・各段階の目的に沿うための技法を明確に区分して使い分けることは実際には難しい。
・それでも、各段階の目的を意識して技法を用いることは必要。
・また、各段階は直線的ではなく行き戻りしつつ進むものといった認識を持つ。
・そして、マイクロ技法の各技法はヘルピーに対する影響度に強弱があるとの認識を持つ。
・マイクロ技法の「基本的かかわり技法」はヘルピング技法(1)かかわり技法(事前段階)だけでなく各段階でも共通基盤として必要。
・ヘルピング技法の各段階には次のように強いてマイクロ技法を当てはめている。
(2)応答技法(第1段階)には焦点のあてかた。(3)意識化技法(第2段階)には積極技法・対決。
(4)手ほどき技法(第3段階))には技法の連鎖および面接の構造化。ただし、(4)にはむしろ行動療法的な対応が望ましい。
これらのことを踏まえて、(2)応答技法(第1段階)と(3)意識化技法(第2段階)について当てはめたマイクロ技法を次に記します。

(2) マイクロ技法 応答技法(第1段階)⇒ヘルピング技法 焦点のあてかた
⑧ 支持 面接場面では理論・事例によって裏付けされた「そんなもんだろうなあ」「よかったねえ」というヘルパーの支持によって、クライアントには自信や勇気が湧いてくることがある。
しかし、劣等感の強い人には以下の技法を用いた方がよい場合がある。
・直接補償  劣等感そのものを粉砕する。
・間接補償 (例)「話は下手だけど、論文で認められてるよ」
・価値観からの解放 (例)学歴に劣等感を持っている人に対して「人間の価値は学歴だけで決まるものではないよ」
⑨ 焦点合わせ(焦点付けではありません)
ヘルパーが話題を掘り下げていくとヘルピーが応えなくなることがある。そこで、ヘルパーはいろいろな状況を想定して意図的に会話のトピックスをシフトしてみる。(例)として以下のようなものがある。
・第3者へのシフト  「家族はどうなったの?」
・自分(ヘルパー)の考えへのシフト 「ぼくの考えは、—–だけど」
・二人の世界へのシフト 「ぼくたちは、—–だったけど」
・世代の文化へのシフト 「一般的には—–」「最近の傾向は—–」
・問題の焦点のシフト 「その問題以外に—–」
(3)マイクロ技法 意識化技法(第2段階)⇒ヘルピング技法 積極技法
⑩ 情報提供
知識・情報不足のために悩むヘルピーに対して、情報提供は問題解決に役立つ場合がある。いわゆる進路相談では適切な情報提供は重要せある。
⑪ フィードバック
ヘルピーの気づかない事実に気づかせる。ただし、ヘルピーを不愉快にさせずに気づかせるには、タイミングの判断と観察力が必要。
⑫ 解釈(定義のし直し)
例えば、「ようするに、—–ということですか」といった推論をいうことで、ヘルピーのものの見方が変わってくることがある。
キャリアコンサルティングでは、日常生活レベルでの行動パターンや行動の意味について解釈が適用される。
⑬ 助言
ヘルパーは、ヘルピーがキャリアコンサルティングに求める内容レベル(相談(consultation)~教示(instruction))や必要レベル(示唆(suggestion)~助言(advice))に応じて強弱を判断して対応することが重要。
⑭ 自己開示
ヘルパーが下記の影響を念頭にヘルピーに自分のことを語る。
・ヘルピーが親近感を持つことによって、リレーションを促進する。
・ヘルピーが模倣する。
・ヘルピーがヒントを得る。
⑮ 指示
ヘルピーが実行しやすいように指示(direction)する。行動療法・論理療法・交流分析で用いられる。
⑯ 説得
ヘルピーの状況を下記の3つに分けて、論理療法風に説得すると下記のようになる。
・ヘルピーの認知面から  ⇒あなたの考えは、事実ではない。
・ヘルピーの認知面から ⇒あなたは感情でものを言っており、論理的でない。
・ヘルピーの行動面から ⇒あなたのやり方では、ハッピーにならない。
⑰ 対決
ヘルパーがヘルピーに自己開示する際、対決しなければならない場面が生じることがある。
マイクロ技法の対決ではヘルピーの言動の矛盾点を下記のように指摘する。
・ヘルピーのことばとことばの矛盾点 ⇒この前言ったことと違うじゃない。
・ヘルピーのことばと非言語の矛盾点 ⇒大丈夫と言ったのにふるえてるんじゃない。
・ヘルピーのことばと行動の矛盾点 ⇒楽しみだといいながらまだしていない。
・ヘルピーの非言語と非言語の矛盾点 ⇒笑っているのに顔色が悪い。
⑱ 契約
・契約によって行動変容する。
(続く)1級技能士 上脇 貴

-基礎編・理論編

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