キャリアコンサルタント国家試験に役立つ法整備について勉強しましょう。 キャリアコンサルタントのキャリアコンサルティング業務に係る法整備について厚生労働省の資料を参考に説明します。
働く人々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じるために、関係する法令を整備するために、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)が2018年7月に公布され、関連する法律が順次施行されています。これにより人々の働き方、生活はいままでにも増して多様化し、キャリアコンサルタントの活動の場が広がっています。
働き方改革とはなにか
・働き方改革の基本的な考え方
「働き方改革」は、働く人々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く人々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資や技術革新による生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。
働く人の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指すものです。
・中小企業・小規模事業者の働き方改革
「働き方改革」は、我が国雇用の7割を担う中小企業・小規模事業者において、着実に実施することが必要です。魅力ある職場とすることで、人手不足解消にもつながります。職場環境の改善などの「魅力ある職場づくり」が人手不足解消につながることから、人手不足感が強い中小企業・小規模事業者においては、生産性向上に加え、「働き方改革」による魅力ある職場づくりが重要です。
取組に当たっては、「意識の共有がされやすい」など、中小企業・小規模事業者だからこその強みもあります。
「魅力ある職場づくり」→「人材の確保」→「業績の向上」→「利益増」の好循環をつくるため、「働き方改革」により魅力ある職場を目指すことが必要になります。
働き方改革の推進
1.労働時間法制の見直し
見直しの目的
働き過ぎを防ぐことで、働く人々の健康を守り、多様な「ワーク・ライフ・バランス」を実現できるようにします。
見直しの内容
① 残業時間の上限規制
② 「勤務間インターバル」制度の導入促進
③ 年5日間の年次有給休暇の取得(企業に義務づけ)
④ 月60時間超の残業の、割増賃金率引上げ
⑤ 労働時間の客観的な把握(企業に義務づけ)
⑥「フレックスタイム制」の拡充
⑦ 「高度プロフェッショナル制度」を創設
⑧ 産業医 ・ 産 業 保 健 機 能 の 強 化
見直しの概要
①残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできない。(月45時間は、1日当たり2時間程度の残業に相当。)
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
・年720時間以内
・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
・月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできない。(月80時間は、1日当たり4時間程度の残業に相当。)また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月まで。
②1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組み、この仕組みを企業の努力義務とすることで、働く人々の十分な生活時間や睡眠時間を確保する。
③年次有給休暇が年10日以上付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、そのうちの年5日について使用者が時季を指定して取得させることを義務づけ。
④月60時間超の残業割増賃金率を大企業、中小企業ともに50%にする(中小企業の割増賃金率を引上げ)
⑤健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況が客観的な方法その他適切な方法で把握されるよう法律で義務づける。
⑥労働時間の清算期間を3か月に
⑦自律的で創造的な働き方を希望する人々が、高い収入を確保しながら、メリハリのある働き方をできるよう、本人の希望に応じた自由な働き方の選択肢を用意する。
⑧事業者から産業医への情報提供を充実・強化する。 産業医の活動と衛生委員会との関係を強化する。 産業医等による労働者の健康相談を強化する。事業者による労働者の健康情報の適正な取扱いを推進する。
2.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
改正の目的
正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と 非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)との 不合理な待遇の差をなくす。同一企業内における正規雇用と非正規雇用の間にある不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても「納得」できるようにする。
改正の概要
① 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与 などの個々の待遇ごとに、不合理な待遇差を設けることが禁止される。 ガイドラインを策定し、どのような待遇差が不合理に当たるかを明確にする。
② 労働者に対する、待遇に関する説明義務の強化
非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」など、自身の待遇について説明を求めることができるようになる。事業主は、非正規雇用労働者から求めがあった場合は、説明をしなければならない。
③ 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続の規定の整備
都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続き続(行政ADR※)を行う。「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても、行政ADRの対象となる。
※事業主と労働者との間の紛争を、裁判をせずに解決する手続きのこと。
出展 厚生労働省資料https://www.mhlw.go.jp/content/000335765.pdf
(つづく)A.K