「キャリアコンサルタン養成講座39」に引き続き、テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座について述べます。弊社のキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス- サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースであるISO9001に沿って行われています。厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。
しかし、ISO29990は2018年に廃止され、後継規格ISO 29993:2017 及び ISO 21001:2018に受け継がれています。規格の変化は以下の通りです。
ISO 29990:2010は、以下の理由により 2018 年 12 月に廃止されました。
ISO 29990:2010 は、サービス規格として検討が開始されましたが、最終的には学習サービスに関する要求事項(第 3 節)と事業者のマネジメントに関する要求事項(第 4 節)が含まれたハイブリッド規格として発行されました。
しかし、規格が発行された後、ISO よりこのようなハイブリッド規格は認められないため、学習サービスに関する規格とマネジメントシステム規格に分離して整理するように指示がありました。したがって、下記 2 のとおり ISO 29990:2010 の後継規格が発行され、ISO 29990:2010 は廃止されました。
ISO 29990:2010 に含まれる学習サービスに関する要求事項(第 3 節)と学習サービス事業者のマネジメントに関する要求事項(第 4 節)は、 ISO 29993:2017 と ISO 21001:2018 にそれぞれ引き継がれました。
ISO 29990:2010 の廃止に至る主な経緯は、以下のとおりです。
① 2010 年、ISO 29990:2010 は、学習サービスに関する要求事項と学習サービス事業者のマネジメントに関する要求事項を含む規格として発行されました。(ISO 29990:2010 における学習サービス事業者のマネジメントに関する要求事項は、マネジメントシステム規格の上位構造(HLS)に基づいたものではなく、品質マネジメントシステム規格と同等ではありません。)
② 2012 年、ISO/TMB(技術管理評議会)は、ISO 専門業務用指針に基づき、一つの規格に異なる種類の要求事項(サービスに関する要求事項、マネジメントに関する要求事項、製品に関する要求事項等)を含めた規格は認められないことを再確認し、全ての委員会に対してこのルールに従うように要請しました。
③ ISO/TC 232(教育及び学習サービス)は、ISO/TMB からの上記の要請に加え、ISO 中央事務局からの指導も受け、ISO 29990:2010 の定期見直し時に学習サービスに関する要求事項とマネジメントに関する要求事項をそれぞれ個別の規格に分離することを決定しました。
④ その後、ISO/TC 232 の活動とは別に、ISO/TC 176/WG 5(教育機関に関する要求事項)では、以前発行した IWA 2:2007 (品質マネジメントシステム-教育分野における ISO 9001:2000 の適用の指針)を国際規格化するために ISO 18420(教育機関のマネジメントシステム)の開発を始めました。
⑤ しかしながら、教育分野に関しては、既に JTC 1/SC 36/WG 5(品質保証と記述フレームワーク)及びISO/TC 232 が標準化活動を行っている等の状況に鑑み、ISO は、これらの三委員会における教育機関のマネジメントに関する標準化活動の重複を整理するため、 新たに ISO/PC 288(教育機関のマネジメントシステム)を 2013 年 9 月に設置し、規格番号を ISO 21001 に改めて教育機関のマネジメントシステム規格の開発を継続することとしました。
ISO 2100:2018 が発行されたため、2019 年 6 月に解散されました。
⑥ 2017 年 8 月に ISO 29993:2017 が発行され、2018 年 5 月に ISO 21001:2018が 発行されたことを受け、ISO/TC 232 は、2018 年 12 月に ISO 29990:2010 を廃止しました。
出典(一社)人材育成と教育サービス協議会 file.php
以下は厚労省の指針です。
【指針】
民間教育訓練機関は、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の設計に当たり、訓練目標の達成に向けて、効果的かつ効率的な職業訓練の促進及び支援方法の準備や見直しを行うために、職業 訓練の効果や成果の活用に関する事前評価の方法、訓練期間中のモニタリング方法、 訓練修了後の評価方法を明確にする。
【指針の補足説明】
職業訓練サービスの設計に当たり、職業訓練を効果的かつ効率的に実施する方法 を検討し明確にします。職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)を提供する前に、事業所等の関係者に対して、事業所等が期待する職業訓練の効果やその成果等を確認する方法を、以下の例を参考にして明確にします。
(確認する方法の例)
① 民間教育訓練機関の担当者が事業所等に訪問し事業所等の採用又は人材育成担当者に個別に確認する。
② 事業所等の関係者を交えた検討会議を開催する。
③ 事業所等の関係者あてにアンケート調査を行う。
受講者の訓練目標に対する到達状況を訓練期間中に把握するため、受講者に対する意見聴取や職業能力の習得状況の確認等のモニタリング方法を、以下の例を参考にして明確にします。なお、受講者に対して事前に十分な説明を行うとともに、受講者の同意を得ておくことが必要です。
(意見の聴取方法の例)
① 面談によるヒアリング
② 郵送や電子メール等も含めた書面によるアンケート調査
③ Web 上でのアンケート調査
④ 電話による聞き取り調査等
(職業能力の習得状況の確認方法の例)
① 日々の受講状況(出席状況、受講態度等)
② カリキュラムに組み込まれた小テスト、課題等の成績
③ 模擬試験等の結果
④ 訓練期間中に受講者が制作した成果物等
各受講者が職業訓練で習得した職業能力の活用状況を確認する方法については、上記の例を参考にして明確にします。
【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
受講者の知識や技能、実務経験、受講動機等に関する情報を入手するため、ジョブ・カードの有無を確認し、ジョブ・カードを所有している受講者には受講者の承諾を得てその内容の確認を行うこと。
ジョブ・カードを所有していない受講者に対しては、キャリア・コンサルティン グを実施し、ジョブ・カードを作成して交付すること(求職者支援訓練(求職者支 援法に基づく認定職業訓練)は訓練実施者によるジョブ・カードの交付は必須であり、公共職業訓練(委託訓練)も平成 24 年度以降から順次必須となる予定である。)
職業訓練の修了時に、当該職業訓練の受講者が保有する技能及び知識が修了に値するか否かを確認すること。
3.2.3 カリキュラムの作成と見直し
【指針】
民間教育訓練機関は、以下の事項に留意して、カリキュラムの作成と見直しを行う。
- 職業訓練サービスの目的又は目標の設定等
- カリキュラムに適した訓練方法の設定
- 職業訓練の支援方法
- 関係者の役割及び責任
- カリキュラムを改善する手順
【指針の補足説明】
1.職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の目的又は目標の設定等
カリキュラムの作成に当たり、職場での職務又は仕事の内容、習得することが期待される職業能力、過去に実施した類似の職業訓練の成果等の情報を踏まえ、職業訓練サービスの目的又は目標を設定するとともに、以下の例を参考にしてカリキュラムを作成します。
(カリキュラムの記載項目の例)
① 訓練科の名称
② 想定する訓練成果(習得する能力、習得する資格等)を活用する職務や仕事等の仕上がり像
③ 訓練期間、訓練時間(学科総時間、実技総時間、訓練期間中の総訓練時間)
④ 訓練定員
⑤ 受講要件
⑥ 訓練目標(訓練コース修了時の目標、科目ごとの到達目標等)
⑦ 成績(受講効果等)の評価の方法及び基準
⑧ 学科及び実技の科目リスト並びに各々の訓練内容、訓練時間
⑨ 職場実習の有無
⑩ 訓練形態
⑪ 指導方法
⑫ 使用教材、設備及び機器等
⑬ カリキュラムに付随する各種訓練計画の作成
・訓練実施計画予定表(日別)
・直接訓練を担当する講師のリストと担当科目及び期間
・職業訓練を支援するスタッフのリスト等
2. カリキュラムに適した訓練方法の設定
カリキュラムを作成する際には、職業訓練の目的又は目標を達成できるよう、以下の例を参考にして訓練方法を設定します。
(訓練方法の設定の例)
① 受講者の様々なニーズと適性等を考慮して訓練方法(グループ学習、プロジェクト方式の課題研究発表等)を選択する。
② 訓練コースの内容に応じて、学科、実技、職場実習を組み合わせる。
③ 事業所等の実務に沿った訓練課題を設定する。
④ 受講者の習得度、訓練成果を確認するためのモニタリング方法を明確にする。
⑤ 受講者が利用する施設、設備及び機器等の環境を整える。
⑥ 職業訓練の実施に際しては、訓練効果を高めるため、必要に応じ、自習、受講者間のグループ演習や相互交流(集団での経験交流、意見交換等を通じた訓練手法)の場を設定する。
3.職業訓練の支援方法
訓練修了時に職業訓練の目的又目標が達成できるよう、モニタリングの結果を踏まえた追加指導等の支援方法を、以下の例を参考にして明確にします。
(職業訓練の支援方法の例)
① 訓練コースの科目ごとに設定した訓練目標に未到達の受講者に対して、安全衛生に十分配慮することを前提として、自習の環境を提供する。
② 必要に応じて、補習又は補講等を開催する仕組みを整備する。
③ 求職者に対する訓練コースの場合は、訓練期間中及び修了後 3 ヶ月間のキャリア形成支援、就職支援の方法を明確にする。
4.関係者の役割及び責任
カリキュラムの作成に伴い、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の提供を確実に行うため、以下の例を参考にして、民間教育訓練機関を含む関係者(受講者及び受講者が所属する事業所等)ごとの役割や責任を明確にします。
(役割と責任の例)
① 民間教育訓練機関の管理者(責任者)は、受講者が備えていることが望ましい知識や技能等、職業能力の習得状況、修了後の職場での訓練成果の活用状況を把握するため、民間教育訓練機関の講師(指導員)やスタッフの役割分担を定めて、確実にモニタリング等が実施できる体制を整える。
また、必要に応じて、受講者及び受講者が所属する事業者等に対して記録した情報を提供する。
② 受講者は、原則として、欠席、欠課、遅刻、早退をせずに、訓練コースの目的又は目標の達成を目指して受講し、必要に応じて実施されるアンケート調査に協力する。
③ 受講者が所属する事業所等は、職業訓練のニーズの把握、訓練成果の活用状況等について、ヒアリング及びアンケート調査に協力する。
④ 民間教育訓練機関の講師は、職業訓練の指導はもとより、訓練期間中の受講状況等についてモニタリング及び評価を行い、必要事項について記録する。
⑤ その他、キャリア形成支援及び就職支援スタッフの役割の明確化 等
5.カリキュラムを改善する手順
「3.2.2 モニタリング方法の明確化」で設定したモニタリング方法によって得られた結果や 「4.7.4 マネジメントシステムの点検」の結果を踏まえる等、訓練方法や評価方法等を含めてカリキュラムを改善する手順を明確にします。
【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
訓練期間、訓練時間、訓練方法、訓練内容(教科)、受講者数について、公的職業訓練の受託等のための基準に従い、作成されたものであること
(例)訓練期間(3 ヶ月以上 6 ヶ月以下)、訓練時間(月 100 時間以上)、訓練方法、受講者数(1 コース概ね 10 人~30 人)等訓練期間中及び訓練修了後の就職支援を行うこと
(例)職業相談、求人情報の提供、履歴書の作成の指導、公共職業安定所が行う就職面接会の周知、公共職業安定所への誘導、面接の指導、ジョブ・カードの作成支援及び交付(ジョブ・カードは 3.2.2 モニタリング方法の明確化」の【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】を参照) 等
(つづく)平林