今回はキャリアコンサルタント国家試験を受けた経験をN.A氏に語っていただきました。
【面接場面の再現】
(前回に続き、ロールプレイの回想が述べられます)
ここは反省。
オープンクエッションで通すべきところだったという反省である。こちらから決めつけるような質問をしてしまったということで、当然かもしれないが、この時のクライエントの反応は、「はい」でも「いいえ」でもなく、「ふーん」という感じだった。自分でもじれていたのを感じながらの続行だったわけである。
私の場合、どうしても抜け切れない癖というべきかこだわりというか、あるいは自分の価値観の押し付けというべきか。人に相談に来るのであれば、いつ頃までに決めたい、とか、面接突破の方法を聞きたいとか具体的な相談内容があってしかるべきだし、自分である程度やってみて壁にぶつかってそれで相談に来る、というものであって欲しい、という勝手な思いがあることで、今回もそれが出てきた、ということなのだろう。このあたりにはまだまだ研鑽の余地が大いに残っているということと考えている。
さて、続きである。
上記失敗はもう口から出てしまったので、こだわっても仕方ないので、話をもう一歩進めるべく、また前の話題に戻していった。
キャリアコンサルティングでなく、普段の業務上の面談であれば、こうすれば、ああすれば、と言ってしまうところだが、そこはじっと我慢して、「何をしたいのか」を探し出すために、そして短絡的結論を見出すことにならないように、話を搦め手から振ってみることにした。
「ご主人はお仕事を探されている件に関しては何かアドバイスをしてくださったりするのですか?」と聞いてみる。しかしこれもちょっと期待とは違う返答で、あまり奥さんの動静には関心がないようで「とくにアドバイスのような感じで言ってくれることはないですね」という返答。
そうなるとこちらの問いかけも手詰まりになってくる中で、またガラッと質問の趣旨を変えて、
「消費者の立場で色々お買い物をする時のことを少し考えていただけませんか。ご自身でお買い物をされている時に、この店員さんから買うことができてよかったな、あるいはこの品物を買うことができてよかったな。というご経験はありませんか」
と聞いてみる。
するとちょっとその情景を考えてくれているような表情になって肯定するような反応が出てくる。それを確認してもう少し私の方から
「そのような経験を時々はされているのではないかと思いますが、そのような接客を提供してみる、ということで考えてみませんか」という提案にここから入っていった。
「ご自分がお買い物をする立場で満足いく状況をご経験されている、そのお仕事を逆の立場でご自分でされてみる、と考えて行くと、やってみたいと思えるような仕事が見つかりそうでしょうか」
と続けてみる。
するとクライエント役の人の表情がかなり変わり、そうかそのような考え方があるのかというような表情をしてくれた。もう少し続けて
「ではどうでしょう。この仕事いいな、すごいな、と今思い浮かぶようなものがありますか」と聞いてみる。
残念ながらここは具体的な返事が返ってこなかった。従って
「この辺りから考えてみる、感じてみることをしばらくしてみたらどうでしょうか」
と話を展開してみた。
クライエント役の人の表情を見る限り、その作業というか検討に関しては抵抗感はない感じ。明快な記憶がこの辺りはないため、どのような会話をしたか詳細についての再現はできないが、クライエント役の人も決して聞いているだけでなく自分からも話はしてくれた。つまり一方通行の会話ではなく双方向でのコミュニケーションが成り立っていたと私自身には感じられる状況であった。
但し、どうしてもある点を踏み越えることができない、という感じはキャリアコンサルタント役の私の中でずっとくすぶっていた。
ひいき目に見るとクライエント役の人もすっきりとした表情をしている。その表情を見てしまったので、余計にどこまで引っ張れば良いのか悩み始める。
それまでのやり取りを今一度頭の中に思い浮かべて、ハローワークに行ったり、人材派遣会社を調べてみたり、ということも含めて、「自分はこのような仕事をしたいという気持ちが出てくるかをしばらくの間、探ってみるとよいのではないでしょうか」という話を、クライエントが言っていた「長く仕事をしたい」ということと絡ませてやり取りをしている段階でようやく15分のアラームが・・・・・・
ああっ、長かった、というのがやはり終了直後の感想である。
今まで1時間程度の社員面談は何度もやってきているし、採用面接などでも場合によっては2時間近くもやり取りをすることがある中で、15分はあっというまであろう、と思っていたがさすがにそれは試験という緊張感の中では同列に比較できるものではなかった。
事後の自分の感覚としてはしっかりとした応答はできていたと思うし、また一箇所を除いて押しつけもしないで自分で自分の道を考える、というメッセージも伝えることができたと思う。直後の感覚からすれば、問題ないだろうな、という自己認識であった。
さて、ここでクライエント役の人は部屋からスッと出ていく。そして向き直って、キャリアコンサルタント役の私は試験官二人と向き合うポジションに。
ここで主担当の方から、この後の口頭試問に関する簡単な説明が行われる。
5分間の時間で、今のやり取りに関して3つ質問します、と。
特段の休憩もなく、どんどん試験は流れるように進んでいく。
先ほどの面談試験の方は、相手が試験官とは思わないので、平常心で取り組んでいたつもりだが、今度は少々勝手が違う。久々に試験を受けている気にさせられた。
さて、ここでクライエント役の人は部屋からスッと出ていく。そして向き直って、私は試験官二人と向き合うポジションに。
(つづく)N.A