今回はキャリアコンサルタント国家試験を受けた経験をN.A氏に語っていただきました。
【面接場面の再現】
クライエントの方と向き合いと、クライエントの方が首から下げていた名札をひっくり返して係員から氏名が書かれた表記になった。おそらく本名が書かれているのだろう。下の名前も書かれていた。
オープニングの挨拶はクライエントの方も主体的にしてくれる。こちらが話しかけないと何も言ってくれない、という感じではなくホッとした。
ようこそ相談にお越しくださいました、と私の方から始め、守秘義務のことも伝えた上で、さあお話お聞かせいただけませんか、と言ってスタート。
ここでちょっと間があった。えっ、始めていいんですか?という表情をされる。これは少々想定外。すごく応答の良い方であったために、この言い方でスッと相談事項を開示してくれるのかな、と思ったが、もうすこしここは丁寧に始めるべきだったということかな、と少々反省する。
さて、クライエントの役柄設定は、10年間仕事のブランクがある専業主婦。下の子供が小学校に入ったので、働き始めたいが、そもそもどうやって仕事を見つけていけばよいかよくわからないので相談に来ました。というものだった。このような形で冒頭に自らのことを整理して始めてくれたのは有難かった。この情報でかなりの状況は掴むことができたと感じるし、これらの情報はしっかり頭の中に叩き込んでこの先を進めていかなければと感じる。キャリアコンサルタントとは本当に集中力を要するものだ、と改めて感じていた。
まず全般的感想からすると、クライエント役の人がスラスラ答えてくれる、そして話をしてくれるため、こちらも質問もしやすいし、自分の感覚的には非常にスムースにやり取りを進めることができた。もっとゆったりとしたペースで進むであろうと思っていたこともあり、ここは意外感があった。そのためと言ってよいであろうか。1回の面談では、ほぼこれで終了してしまってよいのではないか、というくらいにまで相談が進んでしまったと感じるほどであった。
クライエント役の人の話すペースが自分にはちょうど良い感じだったわけだが、それはキャリアコンサルタント受験者に合わせてくれているのか、それとも、もともとこのような設定なのか。15分間の面接進行中に、今回の面接を終わりにしてしまってよいか、という気になる状況にもなり、時間前だが結論を言って終わりにしてしまいたい衝動に2度ほどかられた。しかしその場の自己判断として、さすがにそれでは早すぎるだろうと思って少し客観的、俯瞰的に考えて、別な流れを思い浮かべそこから切り込むという感じで会話を続け、最終的にはある話題についてのやり取りが行われている最中に15分経過を知らせるチャイムが鳴る、というかたちで面接実技試験を終えることとなった。
この段階で感じたことは、本当にこのような考え方、対応で良かったのかどうか。1回の相談が50分とか1時間というのが一般的対応であることから考えて、15分で終了まで行ってしまうのは問題ではなかろうか。一方でキャリアコンサルタント受験者に試験直前に渡された面接試験実施要領には一切相談時間の設定は書かれていなかったので、もしかすると終了まで行ってしまってよかったのかもしれない、という思いの中での葛藤である。
改めて事後冷静になって考えるに、この試験は2級技能士検定ではなく、その下のレベルとして設定されているのだから、もしかするとあまり深読みをする必要はなかったのかもしれない、と思えてきた。クライエントが深い悩みを抱えて相談に来ている、という想定を自分で勝手にしていたが、もしかするとせっかくこのようなチャンスがあるのだったら、気軽に聞いてみようかな、という軽い感じで相談に来たのかもしれない。それであれば、あまりこねくり回すのも問題になるはず、と考えたわけである。さあ果たして今回の答えはいずこに・・・、そして自分の評価結果はどのように出てくるのであろうか・・・。
さて、ではもう少し詳しく状況報告をしていきたい。
クライエント側の設定は、専業主婦であり概要は上述の通り。専業主婦になる前は、5年間ホテル(外資系と自ら言ってくれる)で勤務。学校を出て入社してからほどなくフロント業務につき、その業務が5年間のメイン業務だったとのこと。仕事は充実感を覚えていたことがクライエントの自己紹介からうかがわれた。
但し今後、再就職して働く上で、ホテルは早朝勤務等もあるため、今の自分が働ける条件としては無理。働くことが可能な時間は、朝の片づけを終えて8時くらいには家を出ることができるので、9時5時の勤務であれば問題なしとのこと。夕方は子どもを学童保育に預ける予定でいて、お姉ちゃん(小4)がいて、同じ学校に通っているから、下の子(小1)についてもそれほど心配していない。ということであった。そうなると、残業はない仕事をご希望なのですね、という確認だけはこの段階でしておいた。
この辺りのやり取りは、それほど時間をかけたわけではないが、クライエントのことを知ろう、理解しよう、と考えると非常に大事な基礎的情報であると判断した。実際の面接中も、過去にどのような経験をこの方(クライエント)はしてきているのだろう、ということをとにかく掴むように意識を集中させていた。具体的に挙げると、まずは外資系ホテル、という情報。国内のホテルであると、まずビジネスホテルなのか、シティホテルなのか、あるいは豪華なホテルなのか、そしてチェーン展開しているところなのか、あるいは単体経営をしているところなのか、東京等の都市圏なのかあるいは地方圏なのか、というところをそれなりに聞いていかないといけないとその場で思ったのだが、外資系となるとぐっと範囲が狭まるわけで、あまりその先は深く突っ込まないでもよいな、という判断をした。つまり外資系ホテルとなると普段の我々にはほとんど縁のない世界である高級ホテルがほとんどのはず、という判断をしたからである。ヒルトン、シェラトン、リッツカールトン、インターコンチネンタル、マリオットなどなど。キャリアコンサルタント受験者である自分には泊まったことがなくても、セミナー会場として訪れていたり、日ごろ新聞等でのビジネス情報を得ていることでこれらの名前やそのホテルの情景が頭に浮かぶので、その部分にはあまりこだわらずに話はどんどん先に進めた。
一方で、あとで振り返っていきたいが、このような形で連想、理解ができることが果たしてよいのかどうか、ここは考える必要があるかもしれない。
(つづく)N.A